雨唄
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静かに呟いたゾロの言葉の意味を理解して名無しさんは俯く。
明日ゾロがこの島を出て行く。
そう思ったら体が勝手に動いていた。
「…っ…!」
ベッドから身を乗り出して目の前のゾロの腰に抱き付いて手を回す。
仄かに感じるゾロの香りが余計に名無しさんの胸を締め付ける。
「私…ゾロの事が好きなの。」
彼を困らせるつもりはなかった。
でも好きになってしまった気持ちは止められなかった。
ゾロの手が優しく名無しさんの髪を撫でて頬に添えられる。
「…名無しさん。」
掠れた声で名を呼ばれて顔を上げれば、身を屈めたゾロに塞がれる唇。
それはほんの一瞬の温もりで。
軽く触れただけで、すぐに離れる唇。
「俺も名無しさんが好きだ。」
「…!」
思いが通じ合って嬉しくもあり、悲しくもなる。
彼は海賊だ。
一つの場所に留まる事無く前へ進む。
「ゾロ…お願い。私を抱いて?」
ゾロに何と思われようが私の身体は彼に愛されたくて。
私の体に愛し合った証を刻み込んでほしくて。
更なる温もりを求めて必死だった。
「ッ…。本当は名無しさんを滅茶苦茶にしてやりてェと思ってる。」
彼の歯に衣着せぬ率直な物言いと真っ直ぐな瞳に名無しさんの頬が熱をもつ。
「…だか、これ以上手は出さねェ。」
「…どうして…?」
名無しさんの目から一筋の涙が流れて頬を伝う。
「名無しさんに辛い思いさせたくねェからだ。」
一度愛する人の温もりを知ってしまえば離れる事は出来ない。
「でも…好きなの。」
そんな名無しさんをあやす様に抱き締めるとゾロは深く息を吐いた。
「名無しさんには俺の幻影に縛られていてほしくねェ。俺は自由に歌うお前に惚れたんだ。」
ガシガシと頭を掻いて、ゾロは彼女の涙を拭う。
名無しさんは私も連れて行ってという言葉を飲み込んだ。
生半可な気持ちで海賊船に乗る事は出来ない。
「…俺は必ず自分の野望を叶えて戻ってくる。その時まで待ってろ。」
その言葉を信じられる根拠なんてどこにもないが今の名無しさんには頷く事しか出来ない。