ホワイトクリスマス
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バイトから帰る道。
とっくに日は落ちて暗い住宅街を歩く。
「はぁ~、寒っ。」
首に巻いたマフラーに身を縮めて小さくなる。
さっきサンジ店長に言われた言葉が頭の中で繰返し響いていた。
「クリスマス出てくれるなんて本当に助かるよ。余計なお世話だけど名無しさんちゃんはいい人いないのかい?」
「え~、いないですよ。毎年友達同士で過ごすか、家族でパーティーです。」
別に、クリスマスは恋人同士の日って決まってるわけじゃないし…。
友達と過ごすのも楽しいもん。
ま、バイト三昧のクリスマスもいいっしょ。
…いい人なんて。
頭に浮かんだ人物を追い払おうと頭を振り、叶わない恋を想像して盛大に白い息を吐く。
「はぁー…。」
「おい、名無しさん今帰りか?」
「ヒッ…?!」
物思いに耽る私の背後から急に声を掛けられ一気に背筋が凍る。
「びっくりしたぁ…なんだ、ゾロか。」
後ろを振り返り、取り合えず知ってる顔の人物だって事に一安心だけど。
さっき思い浮かべていた人物が現実に目の前に来て、ドキドキと心臓がうるさい。
「お前こんな遅くまでどうした?帰宅部だろ。それとも補習か?」
「失礼な。」
これでも成績は…中くらいなんだからね!
それにこんなに帰りが遅くなる補習ってなによ。
「じゃあ何だよ。この不良娘。」
わしゃわしゃと強く頭を撫でられてボサボサになる髪の毛。
「ちょっと、止めてよ。私、バイト始めたの。」
「はぁ?バイトだぁ?」
手が止まった一瞬の隙をつき、身を翻し逃げてゾロを振り返った。
「そ、バラティエってお店。バイト帰りなの。」
「ふーん…。急にバイトなんか始めて名無しさんは欲しいモンでもあんのかよ?」
「別に。ナミに誘われたからやってみようって思っただけ。」
「…。」
何よ。
ゾロが聞いてきたから答えたのに無言って。
気不味いじゃん。
あれ、いつも一緒に帰った時って何の話をしてたっけ。
いつも他愛ない話でくだらない冗談言い合いながら帰ってたよね。
意識すればする程、喉の奥が締め付けられて出てこなくなる言葉。
「いつもこんなに帰り遅いのか?」
ゾロがぼそっと呟く。
「え、うん。バイトある日は大体ね。」
「そうか。名無しさん、送ってやれなくて悪ィ。」
あの時は聞けなかった謝罪の言葉がゾロの口から発せられる。
止めてよ…。
謝ってほしい訳じゃない。
「いいよ、気にしないで。あ、じゃあ私コッチだからバイバイねー!ゾロも特訓頑張って!」
ただの幼馴染を送ってくれる優しいゾロにいつまでも甘えていてはいけない。
私はまた走って逃げた。
「あ、雪…。」
寒い、寒いと思っていたらチラチラと降り始めた暗い空を見上げる。
私の心の中もこの空みたいに真っ黒な色をしている…と思う。