不器用な恋
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ゾロの誕生日を明日に控えたサニー号では皆少し浮き足たっていた。
…当の本人を一人を除いて。
敵船を倒しただとか、大物が釣れただとか、ただ理由を付けて盛り上がり宴を開きたいクルーにとって誰かの誕生日は絶好の理由になる。
ゾロは自分の誕生日も何処吹く風。
今頃だって鍛練に勤しみ汗を流しているであろう彼を思い浮かべてため息を一つ。
「ほら名無しさん!手が止まってるわよ。そこが終わったら次はそこの飾り付けお願いね。」
いけない、いけない。
つい考え事しててナミに指摘されてしまった。
「はーい。分かりましたよー。」
「何よその気のない返事は。」
ニヤリと一瞬笑ったナミがコソッと私に耳打ちをしてくる。
「好きな人の誕生日でしょ。精一杯頑張りなさいよ。」
ぎょっとして慌てて周りを見渡すが各々準備に忙しくて二人の様子を気にしている者はいなかった。
「ナ、ナミったら!シー!」
「あら、いいでしょ。アイツには周りから攻めてくのもアリだと思うけど。バレちゃった方が気が楽よ。」
ウィンクをして簡単に言ってのけるナミと私は違う。
だって私は自分に自信を持てない。
夢に向かって強くなろうと、
世界一の大剣豪になろうとしている男に釣り合うはずもないちっぽけな私。
ゾロの事を好きだって事がバレて今の関係がギクシャクするくらいなら…。
「一生黙ってるつもり?」
「う、それは…。」
「あんたも麦わら海賊団のクルーでしょ。海賊なら力ずくで奪うのみ!勿論私はお宝だけどね。」
去り際のナミに背中を叩かれて自然と背筋が伸びる。
ナミはディナーの為の食材を釣り上げようと意気込んでいるチョッパーとウソップにも発破を掛けてまわっていた。
…力ずく、か。
初めてゾロの戦闘シーンを見た時、私の目は釘付けになった。
こんなに楽しそうに剣を振って闘う人は見た事が無かったから。
彼の背負っているものの大きさ、重さに体が痺れたのを覚えている。
なんて、カッコいいんだろう。
私の心はその日からずっとゾロに奪われたまま。
奪う、じゃなくて私にも出来る事を考えよう。
「よし!私も頑張ろ。」
独り言で気合いを入れ直すと飾り付けの手を再び動かした。