Kiss
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(1)
その夜はそよりとも風が吹かなくて、ジメジメした熱気が体に纏わりつく日だった。
喉の渇きを覚えた私は寝ている二人を起こさないよう部屋を抜け出し、デッキに出ると彼と目が合う。
薄い雲が月明かりを遮り闇が二人を包む。
先程まで暑かったのに何だかひんやりとした空気に肌寒さを感じ、無意識ながら自分の体を抱き締めた。
「おぅ…名無しさんか。」
雲が流れ、隙間から覗く月光に照らされたゾロは片手を上げて酒瓶を見せ付ける。
この船のコックから断りなく食糧庫から盗ってきた物かは見れば分かる。
「見付かったらまたサンジに怒られるよ?」
「分かりゃしねェよ。名無しさんが黙ってればな。」
ゾロは既に封が切られている其れを傾けて口に流し込む。
ゴクリ…と喉が鳴って、口の端を手の甲で拭った。
「で。お前はこんな夜中に起きてきてどうした?」
「何だか寝付けなくて…水、取りに行くところ。」
そう答えた私の前に差し出された酒瓶に目を丸くする。
「ん…ゾロ?」
「喉渇いてんだろ。名無しさんも飲めよ。」
あの、ゾロが自分の酒を人に分けてくれるなんて。
珍しい出来事に驚きと戸惑いを隠せない。
でも…これって。
もし、これを飲んだら…。
「いるのか、いらねェのかハッキリしろ。」
答えに困った私に痺れを切らしたのか、ゾロは催促する様に酒瓶を振った。
「でも、お酒飲むと余計に喉渇くし…。」
「じゃあいらねェんだな。」
間髪入れずにゾロは酒瓶に口を付けると美味しそうに喉を鳴らす。
「わー!やっぱり待って!いる!いります。」
「遅ェよ。あと少ししかねェぜ。」
ニヤリと薄笑いを浮かべたゾロの表情から真意は読み取れない。
ホントにただの善意なのかしら?