フェスティバル
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「おい、名無しさんどこ行くんだよ。」
人混みの中からした声の主は私の手を掴んだ。
「ゾロ…!」
やっと知っている顔に出会えてホッとしたのか涙腺が緩む。
「ったく。急にいなくなるから心配するだろうが。」
「ごめん…なさい。」
ゾロは項垂れた名無しさんの頭にポンっと手を置いた。
「謝んな。怒ってんじゃねェから。」
それはとても優しい仕草で、その掌の温かさに思わず視界が歪む。
「あー、泣くなって。…行くぞ。」
ゾロに手を引かれるがまま、人混みの間を縫って歩く。
「ッチ。しっかし…すげぇ人の数だな。」
イラついた様子で舌打ちをするゾロ。
繋いでいる手が、熱をもっている。
「ゾロ、手離して…もう大丈夫だから。」
「信用ならねえ。また迷子になるだろ。」
「…ゾロに言われたくないけど。」
「あ?」
2人でそんな話をしているうちに、ようやく人の波が途切れた。
「あー、その辺適当に座るか。」
「そうだね。なんか疲れちゃった。」
2人は喧騒から離れた川沿いの土手に腰を下ろした。
その時ー…。
ひゅるるるる~…ドォオン!!
夜空に大輪の花が咲いた。
「わぁ!ゾロ見て!」
「あぁ、すげぇな…。」
一発上がった花火を合図に次々と色とりどりの花火が夜空を染める。
チラッと隣に座るゾロを見れば、食い入るように花火を見ている顔が赤や青の光に一瞬照らされる。
“花火綺麗だね”と言おうとして言葉を飲み込んだ。
花火よりも隣にいるゾロに見とれてしまう私がいる。
陳腐な言葉で着飾るよりも、2人で同じものを見て感動を分かち合う。
小さな事かもしれないけど、今はそれが幸せ。
「なぁ… 名無しさん、俺じゃなくて花火見ねェんか?」
ニヤッとしたゾロと目が合った。
「ッ…。」
見てたのバレてる…!
一瞬の光に照らされたゾロの色気に思わず息を飲む。
「ククッ。名無しさん顔真っ赤だぜ。おもしれぇヤツ。」
「もぉ~。茶化さないでよ。」
「わりぃ、わりぃ。名無しさんの反応が可愛くて…つい、な。」
「…。」
今ゾロが私のこと可愛いって言った?!
ゾロの顔も赤く見えるのはきっと花火の光のせいじゃないハズ。
「そ…そう言えば皆はどこに行っちゃったのかな。私探してこようか?!」
恥ずかしくなってその場に居た堪れなくなった私は少し腰を浮かす。
「待てって。あいつらなら大丈夫だろ。大人しく花火見てろ。」
ゾロに肩を引き寄せられて無理矢理隣に座らされる。
「きゃっ…。」
「ったく、おめェは。フラフラと…どっちなんだかハッキリしろ。」
何の事を言われているのか分からない私は頭の中がハテナマークでいっぱいになる。
「…ハッキリって?」
ゾロは動揺を隠すかのように頭を掻くと言葉を続けた。
「いや、ハッキリするのは俺も同じか。さっきの…馬子にも衣装ってのは冗談だ。」
「え?」
「名無しさん…浴衣似合ってる。」