inarticulate
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暫くしてキッチンの扉が開いたが、出てきたのはチョッパーのみ。
「おい、名無しさんはどうした?」
鋭い目付きで見下ろされてチョッパーはビクビクしながら、こう言った。
「手が離せないから後にして、だって。」
「あァ?!」
「きゃー!」
ドスの利いた声で脅されたチョッパーは何処かへ逃げて行ってしまう。
「ゾロ、そんな怒んなって。そんなに心配なら俺が見張っといてやるから!な?」
だからキッチンには入らないでくれと必死に頼み込むウソップ。
本当は今すぐにでも名無しさんを連れ戻したいが、ギャーギャー騒いで聞き分けないガキみてェな真似はしたくねェ。
コックと二人きりにさせるよりはマシか…。
「…ッチ。何かあったらすぐ俺を呼べよ。」
ウソップの肩に手を置いて、念を押すと扉に背を向けた。
…こういう時は鍛練するのが一番だ。
目線だけはしっかりキッチンの扉を捕らえる事の出来る甲板の上に座ると、鍛練を開始した。
* * * *
「…9999…10000…フーッ…。」
一通り鍛練をこなしたゾロは長く息を吐く。
「おい、名無しさんタオルー…。」
言った後で気付く。
名無しさんはまだキッチンの中だ。
いつも俺の鍛練中も隣に居て、タオルや水を差し出してくれる彼女は今居ない。
虚しく響いた声と、空を切った行き場の無い掌で頭をガシガシ掻く。
「クソッ…。」
アイツらまだやってんのか。
そろそろ入ってもいいだろ。
そう思って歩を進めようとすると、床から生えてきた手が足首を掴む。
「おい、テメェ…これは何の真似だ?」
手の主は悪怯れる様子もなくクスッと笑った。
「あら、私の間違いじゃなければあなたはキッチン立ち入り禁止じゃなかったかしら。」
「ンな事分かってる。ただ水が飲みてェだけだ。」
鍛練で汗だくになった身体は水分を欲していた。
「水ならここにあるわ。どうぞ。」
器用に何本もの手が水の入ったボトルをロビンの元から運んでくる。
パシッと奪うように水を受けとると一気に飲み干し、口の端を拭う。
「…どうして邪魔をする。」
「フフ、頑張ってる彼女の力になりたいからよ。」
ロビンの優しい目はキッチンへ向いている。
いつの間にか足首を掴んでいた手は解かれていて。
「今日の主役が汗だくはいけないわ。お風呂にでも入って邪な考えも流してきたらどうかしら。」