180度
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「なァ、お互い強がるのは止めねェか?名無しさん。」
そう言ってゾロは口の端を上げる。
「ッ…強がってなんていない。」
ダメだ。直視できない。
目を反らすと顎を掴まれて感じた温かい感触。
それが唇だと気付くのに時間がかかった。
「んー!っ、何すんのよ!」
思いっきり胸を押し返して抵抗すると離れた唇と、ゾロの体温。
目の前の彼は悪怯れる様子もなく口角を上げたまま名無しさんを見下ろす。
「お前俺のこと気になってんだろ。チラチラ見てんのバレてないとでも思ったか?」
「え…。」
直接的に本人から突き付けられる言葉ほど破壊力があるものはない。
ただ気になっているというのは語弊がある。
「そういうの自意識過剰って言うの。私はゾロのことなんて…。」
そう…前は嫌いだった。
ぐうたらしてるだけの筋肉バカだと思っていたらナミの言っていた通り、本当に刀を持つと変わるんだもん。
あの時見せたゾロの表情が頭の隅に残っていて離れない。
「ハッ、まァいい。難しい相手ほど落とし甲斐があるってモンだ。」
黙っている名無しさんを気にする事なく鍛練を再開しようとするゾロに呆気に取られて、思わず制止した。
「は?待ってよ。意味わかんないんだけど。さっきの…ちゃんと説明してよね!?」
「好きだからに決まってんだろ。お前は絶対俺のモンにするから覚悟してろ。」
野暮なこと聞くんじゃねェと、私の頭をぐじゃぐじゃと撫でるゾロの大きな掌。
嫌いだったハズなのに…。
じゃあどうしてこんなに胸がドキドキするんだろう。
「そんな勝手な!俺様。自己中。それに、お前って呼ばないでよね。」
心拍数が上がる胸の中心ををぎゅっと抑えて緊張しながらも声を絞り出した。
「同じ夢を持った船の仲間でしょ?私も強がるの止めるから…名前で呼んで。仲良くやっていこうよ。」
「…へェ。名無しさんの言う仲良くってのはどの程度だ?」
あっ、と思った一瞬の間にゾロは名無しさんの手首を掴み引き寄せる。
ゾロの腕の中に抱かれて、あたたかい彼の体温を感じて、悔しいけど心地好さを憶えてしまった。
耳朶にゾロが唇を寄せたのが分かって背中にゾクゾクとした緊張が走る。
「名無しさん…。」
耳元で囁かれた彼の低音が紡ぎだす私の名前は甘い吐息と一緒に脳に響く。
「ゾロ…やめ…っ。」
「仲良くすんだろ。なァ名無しさん…認めちまった方が楽だぜ?」
私の心はとっくにゾロに支配されてしたけれど、それを口にするのは何だか恥ずかしい。
「ゾロの事なんて好きじゃない!ただ仲間として仲良くって意味だからね勘違いしないでよね。」
素直になれない頑固な私を優しい顔をしたゾロがフッ、と笑う。
何だか心の塊が解されて力が抜けた気がした。
「そんな顔で言っても逆効果だろ。」
ゾロにそう指摘された名無しさんの顔は自分でも分かるくらい熱を持っていて。
反論しようと開いた唇は再び重ねられ。
私は簡単に心を奪われた。
fin.