180度
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有無を言わさず名無しさんを抱き上げたゾロは歩き出した。
「やッ…恥ずかしいから下ろして!」
さっきまで男に絡まれていて騒ぎを起こしていたのでギャラリーは大勢居る。
緑頭の男に抱き抱えられている名無しさんに対する人々の視線が痛い。
「お前っ、暴れんな!落とすぞ。」
ゾロが言うと冗談に聞こえない分、素直に従う他ない。
「それは嫌!それより帰り道はそっちじゃないからね?」
なるべく平静を装って指摘したが、男を感じさせる逞しい腕と。
時々ふわっと鼻を掠める汗に交じったゾロの香りが胸を締め付けて。
熱を持った顔は悟られたくなくて反らしていても心臓は今にも破裂しそうなくらいドキドキとしていた。
*
「名無しさんと一緒じゃない事に気付いた彼に状況を説明したら血相変えて飛び出して言ったわよ。」
あんなゾロの表情初めてだったから良いもの見れたわ。
と、サニー号に無事に着いた後ロビンが教えてくれた。
靴擦れの傷もチョッパーにしっかりと治療して貰ったので一安心だ。
「それより名無しさん、ちゃんとゾロにお礼言ったの?」
ゾロに抱き抱えられている真っ赤な顔の名無しさんの姿を思い出しているのだろう。
笑いを堪えたナミが言った。
「…それはまだ…。」
男達から助けて貰ったお礼も船まで抱っこしてくれたお礼も言えずじまいでバツが悪く、名無しさんは俯くと小声になる。
早く行って来なさい、と二人に背中を押されてゾロが鍛練している展望台に顔を出す。
「ゾロ…。」
「なんだ、お前か。」
名無しさんの姿に気付くと鍛練していた手を休めて正面に向き合う。
また名前で呼ばない事に少しの苛立ちを覚えたが、グッと我慢して目の前の彼を見つめて言った。
「あの、さっきは助けてくれてありがとう。…感謝してるわ。」
「気にすんな。助けに行ったワケじゃねェよ。ただ通り掛かっただけだ。」
え、でもさっき…。
「ロビンはゾロが血相変えて出ていったって言ってたような…。」
すると、ゾロはバツが悪そうに苦い表情をして力任せに頭を掻く。
「あの女…ベラベラと言わなくていい事を。」
なんて、ぶつぶつ小声で呟いているのが聞こえてくる。
マズイこと言っちゃったのかな、と少し不安に思って。
「じゃあちゃんとお礼は言ったからね。鍛練の邪魔して悪かったわ。」
踵を返した私の背後に投げ掛けられたゾロの声。
「待てよ名無しさん。まだ話は終わっちゃいねェぜ。」
「え…。」
不意に名前を呼ばれて振り向いた私の目には真剣な顔のゾロが映る。
ドキっとまた心臓が跳ねた。
近付く彼に合わせて後退りをすると背中にひんやりとした壁が付く。
顔の横に手を付かれて逃げ場がない。
「な、なによ…。」
強がって見せても息の掛かりそうな距離に心臓は早鐘を打つだけだ。