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「名無しさん…!ダメだ一人で行くなんて危険すぎる!」
医務室の扉の外の騒ぎにゾロはベッドから起き上がった。
「あー、クソ。」
眩暈を感じる視界に眉間の皺を更に深くさせると扉を開ける。
見張りでいる筈のチョッパーは居なく、甲板の上が騒がしい。
「名無しさん…?」
姿こそ見えないがチョッパーと言い合っている彼女の声も確実に聞こえた。
間違うハズがない。
「敵襲か?いや、無人島のはずだか…。」
壁に立て掛けてある刀を杖にしてゾロは甲板へと上がって行った。
「ゾロ!寝てなきゃだめじゃない。」
熱い息を吐きながら現れた彼を見たナミが目を見張る。
「何の騒ぎだ。やけに人数が少ねェが…島にでも出掛けたか?」
彼の問い掛けに一瞬目を游がせたナミの表情をゾロは見逃すハズもない。
口を噤んだナミの代わりにロビンが口を開いた。
「薬が切れてしまったみたいで、この島に自生している風邪に効く薬草をあなたの彼女が採りに行ったのよ。」
「名無しさんが?」
ロビンは静かに頷いて言葉を続ける。
「でも、その薬草が生えている場所には食人動物が沢山いるわ。危険すぎて一人で立ち向かえるようなものではないの。」
「なッ!?」
考えるより先に身体が動いていた。
気付けば船から飛び降りてジャングルの中へと向かっていて。
「ゾロ!あんた、そんな身体で無理よ!」
後でナミが叫んでいても気にならなかった。
彼の頭の中にあるのは名無しさんの事だけ。
…あンのバカ…!
俺は寝てりゃあ治るのに態々危険な目に会いに行く事ねェだろ!
彼女の身を案じて勢いよく飛び出したのは良いが、行き先など皆目見当も付かない。
只でさえ風邪で熱がある時に闇雲に探し回ってもそれこそ命取りになりかねない。
「はぁ…アイツ、何処行きやがった…。」
大木の幹に凭れてゾロは額に浮かんだ汗を拭う。
心臓がバクバクと鼓動して破裂しそうだ。
確実に先程より上がった体温と、視界が歪むのを感じてその場に膝をついた。
「ッ、風邪如きにやられるなんざ情けねェ。」
ゾロの意識はそこで途切れたー…。
* *
「チョッパー、ルフィ、サンジ…無理言っちゃってゴメンね。」
申し訳なさそうに眉を下げた名無しさんの手には三人の力によって採る事が出来た草が握られている。
「マリモの為ってのは気にいらねェが、名無しさんちゃん一人を危険な目に合わせる訳にいかないからね。」
話を聞いて飛び出して行った名無しさんが危ないと、チョッパーはサンジとルフィと共に後を追っていたのだった。