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ゆっくりと目を開けたゾロは言った。
「バレンタインデーってのは確か、好きな奴にチョコ渡すんだったよな?」
「うん、そうだけど…?」
ゾロが一つ残ったウイスキーボンボンを摘まんで口に含む。
そして、名無しさんの後頭部に手を回すと自分に引き寄せた。
「んっ…!」
そして、重ねられた唇。
厚い胸板を押し返そうとしてもびくともしない体と、更に深くなる口付け。
「は…ゾ、…っ。」
苦しくなって薄い唇を開ければ、ドロリと甘い塊がゾロの舌で押し込まれる。
二人の熱でとろとろと、溶けるチョコレート。
パキッと静かに割れると中から溢れる液体は名無しさんの熱を上げる。
喉が、身体が焼けるように熱い。
甘い舌を絡ませて夢中で熱を分けあった。
チョコレートが溶けてなくなってもゾロは啄む様なキスを繰り返して彼女の唇に付いたチョコを舐めとる。
チョコレートに入れたお酒よりも、ゾロのキスに酔いしれた名無しさんは広い背中に手を回した。
「名無しさん…。」
耳元で感じる彼の低音は心を焦がす。
「俺もお前が好きだ。」
「ゾロ…。」
想いが伝わった事が嬉しくて。
名無しさんはゾロに抱き付いた。
「お前の作ったチョコ、旨ェだろ?もっと自信持て。」
正直、味なんて全然分からなかった。
覚えているのはコーヒーの苦味に混ざった蕩けそうに甘いキスの味だけ。
「失敗したモンでも、もう他の野郎にあげんじゃねェぞ。」
「え…。」
「名無しさんちゃんおはよー。チョコ出来た…って、藻?!」
ガチャリと開いた扉にビクリと肩を跳ねて音の方を見れば立ち尽くしているサンジの姿。
今の絶対見られた…!
名無しさんはゾロから身体を離すと慌てて手を振った。
「サンジ!ち、違うの。これはね…。」
「何が違ェんだよ。お前も欲しがって舌、絡めてただろ。」
ニヤリと意地悪な笑みを浮かべるゾロに名無しさんの顔は赤くなる。
「ゾロ…!」
「マリモてめェ…チョコだけじゃなく名無しさんちゃんまで!」
「あ?俺が貰ったんだ。喰ってなにが悪い。」
ゾロは名無しさんの肩を抱くと開けっ放しになっている扉へ進む。
「邪魔が入ったから続きは後で、な。」
サンジに見せ付ける様に耳朶に唇を寄せると、ククッと喉を鳴らした。
この人はどこまで私の熱を上げるのだろう。
くらくらとする視界はお酒のせいだけじゃないはずだ。
甲板の芝生の上に来ると腕に名無しさんを抱いたままゾロは寝転がる。
「不寝番明けで眠ィんだ。お前も付き合えよ。」
ゾロの大きな手が彼女の頭を包む。
「昨日遅くまで起きてただろ。少し寝とけ。」
不寝番をしていたゾロはいつまででも明かりが消えないキッチンを気にかけていたのだ。
心臓がドキドキ煩いのに眠れるわけなんてない。
でも…何故だろう。
感じるゾロの温もりと。
優しく大きい手は安心感を与えてくれる。
目が合うとゾロは名無しさんの唇に自分のそれを軽く合わせた。
「おやすみ、名無しさん。」
微睡む意識の中、私が見たゾロの顔はいつもの口角を少し上げた彼の表情だった。
fin.