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「なぁ、名無しさん。コックとチョコだの言って俺の話してたみてェだが一体何の事だ?」
「え、えっと。それは…ね。」
やっぱりゾロに聞かれてたんだ。
サンジったら爆弾落としたままゾロと二人きりにしないでよー!
もう…どうしよう。
極度の緊張と焦りから背中に変な汗が伝う。
視線をウロウロさせて返事に困っていると、ゾロの大きな手が頭にポンッと置かれた。
「言いたくなきゃいい。」
ゾロはそれだけ言うと冷蔵庫から勝手に飲み物を拝借して出て行った。
触れられた頭が熱い。
「ゾロ…。」
だけど。
去り際の彼の背中と、静かに閉まった扉が拒絶されたみたいで名無しさんは何だか寂しい気持ちになった。
ダイニングから出たゾロは甲板のいつもの場所に寝転がると昼寝の体勢になる。
彼の側ではお子様トリオが何やら騒いでいた。
「また名無しさんからチョコ貰ったんだー。」
「いいなぁルフィ。」
「俺にもチョコ寄越せよ。」
「もう食っちまったから無ぇ!」
ッチ…こいつらもチョコかよ。
あいつ、俺には話さねェクセに…面白くねェ。
何時もなら気にならない喧騒だが会話の中に名無しさんの名が出てくればそれは別だ。
昼寝を諦めたゾロは、のっそりと起き上がると騒いでいるルフィ達の元へ歩を進めた。
「おい、お前ら。ちょっと聞きてェ事がある。」
そして迎えたバレンタインデー当日。
まだ日も昇りきる前の早朝。
昨夜も遅くまで試作のため起きていた名無しさんは転寝していたキッチンで目を覚ます。
この前、島に寄ったときに買い込んだ筈の材料も底をついた。
「…結局二つしか出来なかったし。」
名無しさんの手元にはお世辞にも上手とは言えない歪なウイスキーボンボンが二つ転がる。
割れたり、中身が出てしまった失敗作の残骸はきっと船長たちのお腹に収まる事になるだろう。
不器用な自分が心底嫌になる。
「こんな不格好で小さいチョコ渡して、好きだなんて言ってもゾロだって困るよね。」
一応箱に積めてリボンをかけてキレイにラッピングしてみたが。
こんなもの…渡す勇気が出ない。
告白するの、やめちゃおうか。
次の島に着いたときにチョコレート買って渡せばいい。
バレンタインデーってきっかけがなきゃ告白なんて出来ないのに…。
名無しさんはキッチンの片付けを済ませて部屋に戻ろうと、扉に手を掛ける。
「!?わっ、と。」
名無しさんが扉を開けるより早く、外側から開けられた向こうには眠そうに立つ想い人の姿。
「ゾロ!」
思わず手に持っていた箱を後ろ手に隠した。
「おぅ、 名無しさんか。ちょうどいい。不寝番明けにコーヒーもらえるか?」
ちらりと時計を見ればサンジが起きてくるまでまだ時間がある。
「うん…分かった。」