車の中には男物の洋服があった。

　「別に今日会うわけじゃないのに、何急いでんだか。
　　…ていうかこの服かっこよすぎない？
　　絶対似合わないよ」

独り言を呟きながらも着々と、着替えを終え車からでた。

ﾏﾈｰｼﾞｬｰは着替えた私をじっと見る。

　「やっぱ似合いませんよね」

ﾏﾈｰ「まぁまぁだな」

そうだとしてもお世辞ぐらい言ってくれても
いいんじゃないのかい、ﾏﾈｰｼﾞｬｰさんよぉ。

ぐっと言葉を飲み込み､再び車に乗り込んだ。

　「....次は何処に向かってるんですか」

ﾏﾈｰ「お前ん家」

……いやあの、私の家は真反対ですけども。

ﾏﾈｰ「着いたぞ」

　「えっ」

車から出ると見たこともない
高層マンションが目の前にそびえ立っている。

嘘でしょ､まさか……。

　「あの､まさか」

ﾏﾈ「そのまさかだ､ホラ」

そういって小さなトランクを
私に向かって投げてきた。　
　　　
　　「ちょっ危なっ...！」

ﾏﾈｰ「その中男モンの洋服､靴が
　　 入ってるから好きに使え」

あんたも準備万端じゃないですか。

　「最初からその気だったんですね」

ﾏﾈｰ「ほら行くぞ」

急かされ言われるがままﾏﾈｰｼﾞｬｰと一緒に
エレベーターに乗り込み、ﾏﾈｰｼﾞｬｰは
最上階のボタンを押した。

ﾏﾈｰ「いいか､お前が女だって
　　 メンバーに言ってないからな？
　　 お前の本名はちゃんだが
　　 男のお前の名前はくんだ。
　　 女が好きな男だぞ？
　　　………聞いてんのか？」

そう言いながら私の肩を掴み揺らした。

　「聞いてますよ、」　

いくら、後で女だってことが
バレないようにするため練習生の時から
マンツーでレッスンしてたからって、さすがに
メンバーにまで話してないのは、まずいんじゃなかろうか。
....色々面倒じゃんか！！

心の中で叫び、呆れながらも
ずるずると気づかずに流されていた
自分に悲しくなる。

アホすぎ、、、

これだけやってて、再三言われてるん
だからばれたらヤバイんだろうなぁ。