『…､それ返して』

そう言っておじさんを睨むが何も言わず、
ただただ私をじっとみる。

夜公園にいる女の子に、声をかけるなんて
援助交際の相手か何かを探しているのだろうか。

　『…残念ですけど､援交はしてませんから』

そう言うと面を食らったように、目を丸くして
お腹を抱えて笑い始めた。

　『なんだそれっ、違うから安心しなさい(笑)
　　…君､顔もいいし､声もいいね。』

見るからに怪しいおじさん。
変態なのか。なんにせよ深く
関わらない方が良いのは確かだ。

　『…なんなんですか､』

まさかこの時あの言葉が出てくるとは
思ってもいなかった。

　“俺の事務所に入らない?”

ｰｰｰｰｰｰは？事務所？

　『YG事務所､知ってる？』

　『…知らない』

おじさんは私と同じ目線に
合わせようとしゃがみこんだ。

　『君が自分自身を傷つけるようになった何かしらの
　　理由があるはず。だからわざわざ傷を残して､
　　気を紛らわせてるんだろう？
　　だったら別の事に集中して紛らわせればいいじゃないか。
　　スタイルもいいし、顔もいいし綺麗な体に傷を付けるなんて
　　もったいないだろう。
　　これ以上大切な身体を、自分を傷つけるのはやめなさい』

最後は少し怒りがこもった口調。
大人にきちんと怒られたのは、いつぶりだろうか。

押し寄せてくる、なんとも言えない感情を
塞き止めることができずにとめどなく涙が溢れた。