まだまだ寒い真冬の1月に私は、この業界に入って
すぐﾏﾈｰｼﾞｬｰになった人と、事務所近くのカフェテラスで
話をしている。

聞き間違いか、私がどこかのグループとして、
加入しデビューするらしい。

ﾏﾈ「お前の事は社長から聞いてる
　　　　　…昔何があったのかも」

無意識に左手首を握る右手に、グッと力が入る。
ﾏﾈｰｼﾞｬｰ曰く加入し、仕事に没頭すれば嫌なことも
忘れれるくらい良いメンバーだという。

ﾏﾈｰ「それでだ。デビューするのに､
　　 １つ条件がある。」

　「…条件?」

ﾏﾈ「…男になる事だ」

突然のことで頭がクラクラと混乱する。
デビューも信じられないのに、”男になれ”だなんて。
...どうかしてる。

ﾏﾈｰｼﾞｬｰは固まっている私を見て、ため息を漏らした。

ﾏﾈ「お前、デビューしたくないのか?」

　「それは、」

したいに決まってる。そもそも私が、事務所に
入るきっかけになったのは＿＿＿＿。


私の親は物心がついた頃にはもう、毎日毎晩
お互いを罵りあっていた。
そして離婚する直前に母親から、大好きだった父親は
本当の父親ではない事を聞かされた。

混乱でいっぱいだったが、離婚後は
一人になる母親を、守ってあげようと母方についていった。
が、結局私を捨てて他の男とどこかへ消えた。

あの頃の私は彼氏から､親友からも裏切られ､
気づけば、自分で自分を傷つけないと
自我を保って居られなくなってしまっていた。

ストレスが溜まる度に、自分の左手首に深々と
刃物を当てつけ傷を増やしていった。

そんなことを続けていたある日、
私は夜に1人で住んでいる家を飛びだし
夜の公園で自傷行為をしようとしていた。

「なにしてるのかな､
　こんな危ない物をもって」

声と同時に持っていた刃物を取り上げられる。
見上げると知らないおじさんが立っていた。