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我ながら必死だと思う。明日も朝から仕事なのに、そして相手も朝から学校なのに、こんな夜更けに家に向かうなんて迷惑以外の何物でもない。
でも、電話口で「おめでとうございます。私も嬉しいです」と我が事のように喜ぶ涙声を聞いてしまったら、居ても立ってもいられなくなった。今すぐその顔が見たい。直に声が聞きたい。抱き締めたくて仕方がない。だから、気がついた時には「今から行く」と宣言して、俺は電車に飛び乗っていた。
『ちょっと家空ける。終電までには帰る』一応同居人にメッセージを送っておく。あいつは今仕事の真っ最中だろう。「既読」の文字はまだつかない。
そうこうしているうちに、電車のアナウンスがシブヤへの到着を告げた。鬱陶しい程の人の流れ。改札まで走り抜けられないのがもどかしい。一刻も早く彼女に会いたい。ICカードを叩きつけるようにタッチして、ようやく駅の外に出た。
来るのは初めてじゃない。自宅の場所は知っている。足早に街を通り過ぎ、ようやくお目当てのドアの前でインターホンを鳴らした。少しの間の後、おずおずとドアが開かれる。
「独歩さ、」
彼女が俺の名前を呼ぶよりも早く、そのドアの隙間から中に滑り込むと、細い体を強く抱き締めた。わわ、と小さく狼狽える声すら愛しい。俺の背後で、ゆっくりとドアが閉まる音がした。
ふわり立ち上る花のような香りが心地良い。髪に鼻を埋めて「いい匂い」と吐き出せば、「電話の前に、お風呂に入ったばかりだから」とはにかまれた。
「バトル勝利、おめでとうございます。独歩さん」
胸の中で彼女が笑む。電話で言われたのと同じ台詞なのに、改めて顔を合わせて言われると新鮮な感慨と喜びが胸に溢れた。そのせいで、というより元から俺は気の利いたことなんて言えないから、ただ「うん、うん、有難う」と頷く。
玄関じゃなんだから、上がって下さい。その彼女の言葉を食らい尽くすように、唇を塞いだ。舌を伸ばして歯列ををなぞれば、おずおずと愛らしい口は俺を受け入れる。
――ああ、やっぱこうなるんだよなあ。
ごめん、と心の中で謝罪しつつも、思考とは裏腹に俺の手は彼女のキャミソールの中に入り込む。顔が見て声を聞いて抱き締めたあとは、新たな欲望が顔を出すことなんて目に見えてたのにな。
彼女が身を固くする。首筋に吸い付こうとした瞬間、「独歩さん、あの」と胸を押し返された。
やばい、さすがにいきなりすぎたか?けれど、返ってきたのは俺の予想とは違った答え。
「明日、体育があるから……着替えの時とかに見えちゃう場所は、ダメ、です」
つまりそれは、見えない場所ならOKというGOサイン。こんなこと言われて平常心でいられる男がいたらお目にかかりたい。ああ、くそ、何だこの可愛すぎる生き物は!
本当は、寝室まで連れて行ってあげたい。でも、俺の何やかんやはもう限界で、そのままもつれ込むように、玄関に細い肢体を押し倒す。
こんな時だってのに、明日の予定のことが脳裏をよぎる。骨の髄まで染み込んだ社畜根性が煩わしい。
いや、終電までに帰ればいいんだって。彼女だって明日学校があるんだから、無理はさせられないし。自分に言い聞かせながら彼女のキャミソールを剥いだのと、床に落ちた俺のスマホが着信を告げ震えたのはほぼ同時。
一二三からの「なまえちゃんのとこ?ラブラブでなにより♡ 別に帰ってこなくてもいいよ~」というメッセージが視界の端に映った気がした。
結局そのメッセージどおりになって、翌朝焦る羽目に陥ることを、今の俺はまだ知らない。
でも、電話口で「おめでとうございます。私も嬉しいです」と我が事のように喜ぶ涙声を聞いてしまったら、居ても立ってもいられなくなった。今すぐその顔が見たい。直に声が聞きたい。抱き締めたくて仕方がない。だから、気がついた時には「今から行く」と宣言して、俺は電車に飛び乗っていた。
『ちょっと家空ける。終電までには帰る』一応同居人にメッセージを送っておく。あいつは今仕事の真っ最中だろう。「既読」の文字はまだつかない。
そうこうしているうちに、電車のアナウンスがシブヤへの到着を告げた。鬱陶しい程の人の流れ。改札まで走り抜けられないのがもどかしい。一刻も早く彼女に会いたい。ICカードを叩きつけるようにタッチして、ようやく駅の外に出た。
来るのは初めてじゃない。自宅の場所は知っている。足早に街を通り過ぎ、ようやくお目当てのドアの前でインターホンを鳴らした。少しの間の後、おずおずとドアが開かれる。
「独歩さ、」
彼女が俺の名前を呼ぶよりも早く、そのドアの隙間から中に滑り込むと、細い体を強く抱き締めた。わわ、と小さく狼狽える声すら愛しい。俺の背後で、ゆっくりとドアが閉まる音がした。
ふわり立ち上る花のような香りが心地良い。髪に鼻を埋めて「いい匂い」と吐き出せば、「電話の前に、お風呂に入ったばかりだから」とはにかまれた。
「バトル勝利、おめでとうございます。独歩さん」
胸の中で彼女が笑む。電話で言われたのと同じ台詞なのに、改めて顔を合わせて言われると新鮮な感慨と喜びが胸に溢れた。そのせいで、というより元から俺は気の利いたことなんて言えないから、ただ「うん、うん、有難う」と頷く。
玄関じゃなんだから、上がって下さい。その彼女の言葉を食らい尽くすように、唇を塞いだ。舌を伸ばして歯列ををなぞれば、おずおずと愛らしい口は俺を受け入れる。
――ああ、やっぱこうなるんだよなあ。
ごめん、と心の中で謝罪しつつも、思考とは裏腹に俺の手は彼女のキャミソールの中に入り込む。顔が見て声を聞いて抱き締めたあとは、新たな欲望が顔を出すことなんて目に見えてたのにな。
彼女が身を固くする。首筋に吸い付こうとした瞬間、「独歩さん、あの」と胸を押し返された。
やばい、さすがにいきなりすぎたか?けれど、返ってきたのは俺の予想とは違った答え。
「明日、体育があるから……着替えの時とかに見えちゃう場所は、ダメ、です」
つまりそれは、見えない場所ならOKというGOサイン。こんなこと言われて平常心でいられる男がいたらお目にかかりたい。ああ、くそ、何だこの可愛すぎる生き物は!
本当は、寝室まで連れて行ってあげたい。でも、俺の何やかんやはもう限界で、そのままもつれ込むように、玄関に細い肢体を押し倒す。
こんな時だってのに、明日の予定のことが脳裏をよぎる。骨の髄まで染み込んだ社畜根性が煩わしい。
いや、終電までに帰ればいいんだって。彼女だって明日学校があるんだから、無理はさせられないし。自分に言い聞かせながら彼女のキャミソールを剥いだのと、床に落ちた俺のスマホが着信を告げ震えたのはほぼ同時。
一二三からの「なまえちゃんのとこ?ラブラブでなにより♡ 別に帰ってこなくてもいいよ~」というメッセージが視界の端に映った気がした。
結局そのメッセージどおりになって、翌朝焦る羽目に陥ることを、今の俺はまだ知らない。