倉庫
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なまえは、本当に可愛いねえ」
口癖のように父は囁く。
その台詞自体は、別段おかしいものではないだろう。実の父親が、実の娘を可愛いと褒め、慈しむ。恐らく、普通のことのはずだ。
まあ、20歳を超えた娘に対する褒め言葉としては、多少親馬鹿すぎるきらいもあるかもしれないが。
しかし──この状況はどう考えても異常だろう。
時刻は真夜中、場所は父の部屋。そのベッドの上でうつ伏せに横たわり、裸身を晒しているのは実の娘である私。
そんな私の髪を撫で、父は満足そうに笑っている。
──まるで愛人だ。
僅かな苛立ちを覚え、思わずその手を睨みつければ、わざとらしく父は眉根を寄せた。
「……何でね、そんなにご機嫌ななめなのかなー、とかね。父さん、折角なまえのために頑張ったのに…ホ、ホント泣けてくるよねー…まさに親の心子知らずって言うかさあ……」
「何が私のためよ。自分のため以外の何ものでもないくせに」
しかも今更父親面か。
言葉にしろ、態度にしろ、全てが白々しい父に嫌気がさす。
この男が、今までの人生において私や弓彦のためにやってくれたことなど何一つないだろう。弓彦の成績を改竄しているのだって、世間体を気にしてのことだ。あの子のためじゃない。
そして私はこの男に奪われてばかりだ。自分の人生も、己の純潔も。
『なまえはいい子だからね。父さんのために、母さんの代わりをしてくれるよねえ』
そう言って父に押し倒された日を私は生涯忘れない。
そしてその日から、私と父の歪んだ関係は続いている。
父の望む時に部屋に呼ばれ、こうして半ば無理矢理体を暴かれる。
改めて言葉にしてみると、本当にまるきり愛人のようだ。
この関係が異常なことは、嫌というほど分かっている。普通の父親は、自分の奥さんがいなくなったからと言って娘に手を出したりはしない。
──けれど、異常だと言うのなら
(きっと私が一番狂ってる)
「なまえ」
シーツに包まり横になった私の髪を──父譲りのふわふわの髪を、なおも父は撫で、手に取り、キスをする。
「なまえ、これでも父さんはね、お前のことが本当に好きなんだよ」
白々しいにも程がある。
けれども、そんな見え透いたおべっかに涙が出そうになる。
間違いなく私は狂っている。
──己の全てを奪われようとも、血の繋がったこの男が心の底から愛しくてたまらない、なんて。
「……父さん」
「んー?」
「…私、可愛い?」
「……だから、何度も言ってるじゃないの。なまえは本当に可愛いよねー、頭もいいし、いい子だし。父さんの自慢の娘だよ」
「……母さんよりも、可愛い?」
瞬間、父が真顔になった。
この世の全てが止まったかのような感覚が、部屋の中に満ちる。時間にしてみれば、ほんの数秒のこと。
しかし、私にとって永遠とも思えたそれを打ち破ったのは、「アッハハハ」という父の笑い声だった。
「そんなこと気にしてるなんてねえ。お前はホントに、勉強は出来るのに肝心なところで馬鹿というか何というか。これはアレかねえ、僕の教育が悪かったのかなあ」
「……ええそうね、間違いなく父さんのせいね!」
所詮愛人止まりの私。いなくなった母の代わりに過ぎない私。しかも、血が繋がっている限り、私は本物の愛人にもなれない半端ものなのだ。
だからこそ苛つくのだ。己のこの状況に。そこから抜け出せない自分に。
「お前のそういうところが、誰より一番可愛いよ」
──そんな私に、雁字搦めの鎖をかける父に。
ああ、もう、なんでこんな男なんだろう。
父としても人としても最低なやつだということは、身を持って知っているのに。
その口から吐き出される言葉が、全て心にもない妄言だということを知っているのに。
また、動けなくなってしまう。
「ほら、おいでなまえ。眠れないなら、父さんが子守唄を歌ってあげるから」
「……いらないわよ、そんなの」
シーツに包まれた私を、後ろから父が抱きすくめる。
布越しにそのぬくもりをじわりと感じながら、涙が出そうだと思った。
口癖のように父は囁く。
その台詞自体は、別段おかしいものではないだろう。実の父親が、実の娘を可愛いと褒め、慈しむ。恐らく、普通のことのはずだ。
まあ、20歳を超えた娘に対する褒め言葉としては、多少親馬鹿すぎるきらいもあるかもしれないが。
しかし──この状況はどう考えても異常だろう。
時刻は真夜中、場所は父の部屋。そのベッドの上でうつ伏せに横たわり、裸身を晒しているのは実の娘である私。
そんな私の髪を撫で、父は満足そうに笑っている。
──まるで愛人だ。
僅かな苛立ちを覚え、思わずその手を睨みつければ、わざとらしく父は眉根を寄せた。
「……何でね、そんなにご機嫌ななめなのかなー、とかね。父さん、折角なまえのために頑張ったのに…ホ、ホント泣けてくるよねー…まさに親の心子知らずって言うかさあ……」
「何が私のためよ。自分のため以外の何ものでもないくせに」
しかも今更父親面か。
言葉にしろ、態度にしろ、全てが白々しい父に嫌気がさす。
この男が、今までの人生において私や弓彦のためにやってくれたことなど何一つないだろう。弓彦の成績を改竄しているのだって、世間体を気にしてのことだ。あの子のためじゃない。
そして私はこの男に奪われてばかりだ。自分の人生も、己の純潔も。
『なまえはいい子だからね。父さんのために、母さんの代わりをしてくれるよねえ』
そう言って父に押し倒された日を私は生涯忘れない。
そしてその日から、私と父の歪んだ関係は続いている。
父の望む時に部屋に呼ばれ、こうして半ば無理矢理体を暴かれる。
改めて言葉にしてみると、本当にまるきり愛人のようだ。
この関係が異常なことは、嫌というほど分かっている。普通の父親は、自分の奥さんがいなくなったからと言って娘に手を出したりはしない。
──けれど、異常だと言うのなら
(きっと私が一番狂ってる)
「なまえ」
シーツに包まり横になった私の髪を──父譲りのふわふわの髪を、なおも父は撫で、手に取り、キスをする。
「なまえ、これでも父さんはね、お前のことが本当に好きなんだよ」
白々しいにも程がある。
けれども、そんな見え透いたおべっかに涙が出そうになる。
間違いなく私は狂っている。
──己の全てを奪われようとも、血の繋がったこの男が心の底から愛しくてたまらない、なんて。
「……父さん」
「んー?」
「…私、可愛い?」
「……だから、何度も言ってるじゃないの。なまえは本当に可愛いよねー、頭もいいし、いい子だし。父さんの自慢の娘だよ」
「……母さんよりも、可愛い?」
瞬間、父が真顔になった。
この世の全てが止まったかのような感覚が、部屋の中に満ちる。時間にしてみれば、ほんの数秒のこと。
しかし、私にとって永遠とも思えたそれを打ち破ったのは、「アッハハハ」という父の笑い声だった。
「そんなこと気にしてるなんてねえ。お前はホントに、勉強は出来るのに肝心なところで馬鹿というか何というか。これはアレかねえ、僕の教育が悪かったのかなあ」
「……ええそうね、間違いなく父さんのせいね!」
所詮愛人止まりの私。いなくなった母の代わりに過ぎない私。しかも、血が繋がっている限り、私は本物の愛人にもなれない半端ものなのだ。
だからこそ苛つくのだ。己のこの状況に。そこから抜け出せない自分に。
「お前のそういうところが、誰より一番可愛いよ」
──そんな私に、雁字搦めの鎖をかける父に。
ああ、もう、なんでこんな男なんだろう。
父としても人としても最低なやつだということは、身を持って知っているのに。
その口から吐き出される言葉が、全て心にもない妄言だということを知っているのに。
また、動けなくなってしまう。
「ほら、おいでなまえ。眠れないなら、父さんが子守唄を歌ってあげるから」
「……いらないわよ、そんなの」
シーツに包まれた私を、後ろから父が抱きすくめる。
布越しにそのぬくもりをじわりと感じながら、涙が出そうだと思った。