「何だってまた、あんな若い子をねえ」
「若いって言うか、子供って言うか。まだ高校生でしょう?
奈瀬さんのところのお嬢さん」
「でも、ほら、最近の高校生は進んでるって言うから」
「ねえ、真面目そうな顔してるけど分からないもんよ。学校から帰ってくるのだって、毎日かなり遅いでしょう。どこかで遊び歩いてるんじゃない」
「求導師様もねえ、まだお若いから。それに、生まれてからずっと教会で暮らしていらっしゃるわけでしょう。世間知らずって言っちゃいけないんでしょうけど。若い子に言い寄られたら、ころっといっちゃうんじゃないの」
「そうねえ、純粋で、人を疑ったりしない方だから。それにしたって、十も歳の離れた子はちょっとどうかねえ」
――本当に、この村の年寄り共は口さがない。せめて他人に聞こえない場所でやってほしいものだが。
ただ、こうなることは多少予想は出来ていた。閉鎖的、前時代的を絵に描いたような村だ。ろくに娯楽もない。だから、兄さんと
夕夏の関係が明るみに出たら、一斉に批判と好奇の目の的になるだろうと。
だからと言って、暇つぶしのネタに甘んじろとは微塵も思わないが。それに、いい加減このかしましい声も不快極まりない。
重い腰を上げ、診療室のドアを開ける。俺の姿が見えた途端、待合室に屯するババ……女性陣はぴたりと話すのをやめた。
後ろめたいなら、最初からそんな話題口に出すな。
「皆さん、ここは病院です。会合所じゃあない。診察の邪魔になりますので、そろそろお帰り願えませんか」
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