文豪とアルケミスト
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司書の部屋に、新たな縫いぐるみが一体増えた。外出した北原からの土産だそうで、室生は「白さん、あいつも子供じゃないんですから」と渋い顔をしていたが、当の司書は気にせず嬉しそうにしている。
「もう名前はつけたのですか?」
シルクハットを被った、真っ白な猫。可愛らしくはあるが、縫いぐるみにしては気取った格好をしていると思う。談話室のソファでそれを膝の上に乗せて、撫でながら愛でていた司書は、乱歩からの問いにふと視線を泳がせた。
「……乱歩さんには、内緒です」
仄かに頬を染め、彼女はそんなことを言う。はて、一体どういうことかと乱歩が首を傾げていると、小さな手がくいと外套を引いた。
「おや、南吉くん?」
「乱歩さん。ぼく、知ってるよ。司書さんの猫さんのお名前。ごんのお友達になってって頼みに行った時に、司書さんに教えてもらったの」
ね、お耳貸して。
南吉にそう言われるままに、乱歩は腰を低くする。小さな少年はくすりと笑い声を上げて、秘密をそっと囁いた。
「あのね、あの猫さんは『太郎さん』って言うんだって」
まるで、誰かのお名前にそっくりだね。
目を丸くした乱歩に、悪戯が成功した時のような顔で南吉は笑う。
二人の様子を見ていた司書は、「南吉くん!」と声を上げた。その顔は、耳まで桜の色に染まっている。
――いやはや、参った。まさかこんな不意打ちを仕掛けられるとは。自分の悪戯と違い、何の計算もないのだから余計にたちが悪い。あまりに可愛らしすぎるのではないか、それは。
「南吉くん。司さんは、『太郎さん』と随分仲良しの様子ですねえ」
「うん、司書さんは『太郎さん』のこと大好きだと思うよ!」
両脇を二人にがっちり挟まれ、司書は「もう許して下さい…」と身を縮こまらせた。
そんな顔をするから、もっと困らせて、可愛がりたくなるのですよ、司さん。
向かいの南吉からは見えない位置。少女の髪に密やかに口付けて、乱歩は心底楽しそうに笑った。
「もう名前はつけたのですか?」
シルクハットを被った、真っ白な猫。可愛らしくはあるが、縫いぐるみにしては気取った格好をしていると思う。談話室のソファでそれを膝の上に乗せて、撫でながら愛でていた司書は、乱歩からの問いにふと視線を泳がせた。
「……乱歩さんには、内緒です」
仄かに頬を染め、彼女はそんなことを言う。はて、一体どういうことかと乱歩が首を傾げていると、小さな手がくいと外套を引いた。
「おや、南吉くん?」
「乱歩さん。ぼく、知ってるよ。司書さんの猫さんのお名前。ごんのお友達になってって頼みに行った時に、司書さんに教えてもらったの」
ね、お耳貸して。
南吉にそう言われるままに、乱歩は腰を低くする。小さな少年はくすりと笑い声を上げて、秘密をそっと囁いた。
「あのね、あの猫さんは『太郎さん』って言うんだって」
まるで、誰かのお名前にそっくりだね。
目を丸くした乱歩に、悪戯が成功した時のような顔で南吉は笑う。
二人の様子を見ていた司書は、「南吉くん!」と声を上げた。その顔は、耳まで桜の色に染まっている。
――いやはや、参った。まさかこんな不意打ちを仕掛けられるとは。自分の悪戯と違い、何の計算もないのだから余計にたちが悪い。あまりに可愛らしすぎるのではないか、それは。
「南吉くん。司さんは、『太郎さん』と随分仲良しの様子ですねえ」
「うん、司書さんは『太郎さん』のこと大好きだと思うよ!」
両脇を二人にがっちり挟まれ、司書は「もう許して下さい…」と身を縮こまらせた。
そんな顔をするから、もっと困らせて、可愛がりたくなるのですよ、司さん。
向かいの南吉からは見えない位置。少女の髪に密やかに口付けて、乱歩は心底楽しそうに笑った。