SS集め

「暑いな」
その一言で
「かき氷を準備しよう。ラクサスは今日は何味がいい?」
フットワークも軽く立ち上がり台所に向かいながら尋ねる。
「‥メロン」
「解った」
シャッシャッと氷を削る音を遠目に聞きながら不思議そうな顔をする。
『普通、暑いなら飲み物って思いそうなもんじゃねぇのか?』
以前、一度だけラクサスがかき氷を食べて美味かったと言った事がある。ただそれだけの出来事を覚えていて暑いならばとかき氷を勧めてくる事をラクサスは知らない。
『オレの家の事をオレよりも知ってるってのもなんだかだが』
黙ってメロン色の髪を思い出しながらソファに座るラクサスの後ろにもう一人。
「かき氷イイねぇ〜」
暇つぶしにフリードに着いて来て空気扱いされていた大男がラクサスの肩越しに顔を出す。
トレーに大盛りのかき氷(メロン味)と普通サイズのかき氷(レモン味)を載せてきたフリードに
「オレも頼むわ」
と言い終わるかどうか。
「氷は台所に残っている。自分でやれ」
氷よりも冷たく言い捨てられる。
「ハァーッ?可愛くねぇ」
「お前に可愛いと思われなくて結構だ」
『ラクサスがいなきゃもうちょっとマシな対応するくせに』
「あーっ、もうっ!ラクサス、台所借りるゼ」
「おう」
リビングから出ていったビックスローが台所から派手な音を立て始める。
それを聞きながら
「ラクサス、練乳もあるぞ。アイスも取ってこようか?」
甲斐甲斐しく世話を焼き続けるフリード。
「いい。溶ける前にお前もさっさと食え」
スプーンで自分の分の氷を一口押し込み黙らせるラクサス。
カァ~ッと上がった熱でかき氷が溶けてしまうのではないかと思う程赤くなったフリードの顔を見ながらフッと微笑う。
「偶には大人しくオレの横に座ってろ」
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