花街
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宿屋の女に媚薬を盛られた。
迂闊にも気が付かなかった自分と、盛った女に不快感が募る。
容姿が端麗であると、自覚がある。
傲りではない、たまにこういうことがあるのだから、そう認識せざるを得ないのだ。
病の色が濃くなり、また、こう言うことは久しく無かったために失念していた。
イタチと鬼鮫は煩わしい熱に蓋をするように装束を纏った。
黄昏時で日は暮れてかけているが、こういう事をするような宿で身体を休めたいとは思えなかった。
汚い、と。
既に宿賃は払ったし、騒ぎにはならないだろうと、二人は窓から跳んだ。
幸いにも、この程度の媚薬ならば耐えられないことはない。
不幸は完全なる巻き添えをくらった鬼鮫であろう。
元来の強面の眉間を寄せて虫一匹寄り付かないだろう程に恐ろしい形相をしているが、物腰は極めて涼しげに見える。
対するイタチはといえば、いつも通りのポーカーフェイスでいはしたが、その足取りは重かった。年齢や体調のこともあり、鬼鮫はそんなイタチに嫌な顔ひとつしなかった。
こんなことがあれば今日はもう宿をとる気にもなれず、いっそ野宿でも構わないと二人は手頃な路地に着地すると、目立たないように町の出口に向かって歩いた。
足取り重く、近道を探しながら外に向かう。
何故わざわざ街道を歩くような真似をするかといえば、この町は高い塀にに丸々囲われ、塀の上には監視がある。
今の体調で見張りの目をかいくぐり目立たず出ることは難しかった。
歯がゆさを感じながら宿で目にした町の地図の記憶を頼りに最寄りの出入り口を目指した。
順調に進めてはいた。しかし道の角を曲がったそのとき、二人は頭を抱えたくなった。
色町だった。
この一本道は間違いなく近道であり、引き返すのなら大きく遠回りとなるだろう。
一度発散させるのも手ではあるが、こう示し会わせたように遭遇すると、何かしらかの他意を感じるものだから躊躇ってしまう。
などと思い至りかけたところで、イタチと鬼鮫の視界に見覚えのある姿が映った。
二人は顔を見合わせ、見間違えではないことを確認した。
「見間違えではないようですね」
「チャクラを見た。……コウだ」
廓の前で足を止め、そこから一本突き出た骨張った手を眺めているコウの姿だった。
どう見ても男娼を物色しているようにしか見えなかった。
「……彼女は、こういうのとは無縁と思っていたのですがね」
殺気を送れば、コウは早々に気が付き顔を向けてきた。
彼女が振り返ったことに、何故だか酷くホッとした。が、認めたくなかったので自分の気持ちに気付かない振りをした。
イタチが手招く素振りをしたところで、コウが立っていた遊廓の暖簾から背の高く美しい男がぬうと一人出てきて、なにやらコウに話しかけた。
手招きをよそにコウは廓の中へと顔を向けたことに、イタチは顔をしかめた。
何故だかその事に酷く腹が立った。
ただしコウは二言か発言したのち、こちらに足を向けて来たのだから、恐らく別れの言葉なのであろうが。
声を潜め口許を隠すように男娼に向けて言葉を告げるその横顔を、殴り飛ばしたいと思った
「随分と飢えているんですねェ?」
鬼鮫は、近寄ってきたコウを刺々しく睨み付けた。
対するコウはニコニコして、その問いには答えなかった。
「どうかしているね?二人とも」
ぼんやりと光る金と赤が交わった。
珍しくイタチの方から視線はそらされた。
「一服盛られた」
「そう」
「町を出るところでお前を見つけた」
「そう」
「頼れるか?」
「どっちの意味で?」
「まどろっこしいですね。治せるか町の外まで時空間移動できるか聞いているんですよ」
「ははは」
しびれを切らした鬼鮫にコウは笑い、両手をそれぞれに伸ばした。
3人の姿はそして消えた。