マダラおじいさまといっしょ!※本編割り込み
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六道仙人にチャクラ量とその質の平凡さに目を見張られつつも、コウは口寄せに協力した。
「義孫は……オレの義孫娘は……どこだ」
術式のすみに、まるで偶然巻き込まれたようにずれた座標に口寄せされてきた男が呟いた。
空気を認識してすぐの言葉だった。
すぐに気付き走り出していたコウの耳に、その声は真っ直ぐ届いた。
「居ります!私はここに居ります!!ここに……!」
反射的に返事を返し、飛び付くようにマダラの鳩尾に手を押し付け、医療忍術による延命を開始していた。
「無駄なことを、」
そう呟いたが、
流れてくるチャクラが、湯のような心地よさをもたらし、呼吸が楽になり痛みが和らぐ感覚を覚えたマダラは言葉を止めた。
得意ではないと言っていた癖に、その手腕というか才能というか、それにマダラはふっと一息吹き出した。
「まあ、心の済むままやれば良い……」
「……」
「名は確か、コウと言ったか……」
「はい」
「やはり、貴様を義孫とは認められんな」
「そうですか」
「勘違いするな……己の力に喰われるような男に貴様は惜しいと言うことだ。
認めてやろう、お前はこの世で最も強い女だ。惚れ惚れするほどにな」
「……」
「生まれる時代が合えば、きっと違った未来が見えたんだろうさ……。
そう、オレにとってお前は、義孫ではなく……優れた女だ」
「それは…どういう意図で」
「お前に、オレの血をやる。好きに使え」
「え」
「お前の一族にではない。お前に、オレの生き血をやると言ったんだ。取れ。
強き血を見たいと言うなら、使えばいい。今この世にある生き物において、オレとお前以上の素材はなかろう」
さあ、とマダラは震える手を動かし、コウの頬を撫でた。
「……」
コウは添えられた手に頬を摺り寄せた。
乾いていて、今にもボロボロと崩れてしまいそうなほどに弱った手。
動かせるはずもなかったのに、コウから流れてくる生命がその無茶を可能にしていた。
だがなかなか血を取らない。
こうして延命されているにせよ、死は一歩また一歩と確実に近づいているのも確かであり、マダラは息を吐いた。
「正直に言うと、惜しい。戦って気付いていたが、お前は、オレや柱間よりも優れている」
「……」
「お前となら、縁を結びたいと。そう思う」
マダラに施されていた延命処置が、そこで急に途切れた。
「へ」
コウは面食らったと、息を詰めて眼ばかりパチパチさせていた。
止まった処置に、持ち上げていた腕が耐えきれずだらりと落ちたが、マダラは気にもせず続けた。
「同じ時に生まれ、出会えればよかった。肩を並べて、共にうちはの子らを守れたらよかったんだ。
お前はオレを木ノ葉に縛り付けてくれただろうさ、里をもっと愛せた」
「どうしてそう思うのですか」
「うちはの外から迎えたお前を手始めにして、他者にもっと歩み寄れたと思う。
そもそもオレは、うちはは、うちは以外と関わりを持たな過ぎた。数多に腹の中を見せなんだから不審で、だから目障りとなり、つまらん言掛りを囁かれちまったんだろうさ。
認めさせるには、認めるしかなかったんだ。長であるオレがまず手本を示さなければいけなかったんだ。
政略として他の一族の女を娶るべきだった事は承知してた。しかしどの女も、うちはの女とて、掴むだけで砕けてしまうほどに脆く、とてもじゃないが安心して触れられなかった…」
「全部知ってます。長としての役目を果たすために抱えた妾ならばそれで良かったけれど、妻ばかりは、恐々と手加減せず接せる人…愛せる人を据えたかったのですね。
しかしそんな人はいなかった。過失であろうと、うちはの長が妻殺しなどあってはならない。だから弱いのは妻に出来ない、弱いものを愛してはいけない、愛しては壊すだけだから、醜いと見ることにしたと」
「フン あの女はずっと見てたってわけか。
まあ……過ぎた事を悔いても、どうしようもない。うちはは滅びた」
「数は減りましたが……既に赤子はひとつあります。うちはの血は、滅びません」
マダラは、さきほど落ちた腕が掴まれるのを感じた。
そして、掴まれた腕の擦り傷から血が抜けていく感覚に、目を細めた。
「ありがとよ」
「……私も、あなたのことは好きだった。
でもそれは、あなたのことを聞かされていたからこそ、あなたの生き様を知っていたからこそ…、
だから戦うのは楽しかったし、術を暴かれるのも嬉しかった」
「そうか…ままならんな。だが、このオレが、やっと心置きなく女を愛せた事に変わりはない。
文句ついでに礼を言わねばならんな。あの世で、あの女に…」
「ついでに、その女が抱いた子の頭も撫でてあげてください」
「ああ。そう…させてもらう…
…足音を殺しても無駄だ。柱間、そこに居るんだろう」
「む」
「コウ。もう…命はいらねえ
…逝かせてくれ…」
「……はい」
コウは腰を上げて柱間とすれ違う。
すれ違いざま、柱間に頭を撫でられた。その手には、言葉にするにはあまりに時間が足りなさ過ぎるほどに複雑で強く様々な想いが凝縮されていた。
だからあえて、目は合わさず、言葉も交わさないまま通り過ぎた。
柱間が腰を折り、横たわる友を見下ろした。
もはや延命処置すらが打ち切られ、風に揺れる命の灯火だけがそこにあった。
その身体には既に、確かな死が巻き付いていた。
「よお、柱間。居るか」
「うむ」
マダラと柱間は、語らい、逝った。