森の奥②
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一方、洞窟の奥。
暗闇からイタチの意識は浮上した。
眼を開ければ閉じていたのとさほど変わらない闇だった。
「起きました?」
「……」
急に掛けられた言葉に、しかし寝起きてすぐ声は出なかった。
返事はなくとも、イタチが起きていることに気付くとコウは動いた。
暗闇のなか、ポッと行灯がともった。
完全に見張られている。
しかし、いつものことだった。
行灯に照されて現れたコウの姿は、最後に見たままの外着姿だった。
「お前は寝てないのか?」
「どっちがいいですか?」
「……両方か」
「正解です」
いったい、いくつもの分身を持っているのか皆目検討もつかない。
寝ていたのは分身か本体か、気になったが聞くほど興味があるわけでもなかった。
「……今は何時だ?」
「九時半と十時の間ですね」
「そんなにも眠っていたのか」
「こんなもんですよ。内臓が疲弊してれば睡眠時間は延びて当然。普段どれだけ短い睡眠なのかは聞きませんけど」
からりと笑いながら差し出された水筒を受け取り、栓を開ける。
ここで眠ったときばかりは、朝からあの麻酔のような劇薬を服用せずとも呼吸が楽だった。
証拠に、難なく水を飲み込めた。
来る度、これに甘えてしまいそうになる自分が嫌だった。
コウが何を言っても受け入れることはもう分かっていた。
ここに居座り療養するかと誘われたときなど、まるで甘露をひけらかす悪魔の誘いのようだと思った。
しかし、屈しはしない。
己で定めた正しい死に向かって痛みながら生きると、そう決めたのだから。