森の奥②
夢小説設定
この小説の夢小説設定□このブックはドリーム機能を使用しています。
名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「成り立ち?
そんなものをどうしろと?」
コウは水面から跳び、水飛沫の及ばない土の上に着地した。
そしてクルンと振り返る姿はやけに幼く見えた。
「人格は一つだけど、心が二つあるんだ。私の一族で心が一つだけの人はそうそう居ない」
「アナタはいちいち言わないと会話もできないのですか?」
「好きだから、知ってもらいたい。被ってもらいたい。受け止めてもらいたい。撫でてもらいたい。
好きだから、負担になりたくない。背負わせたくない。私のせいで時間を浪費させたくない。見ないで欲しい。
殴り合って睨み合って、罵倒し合って、後者が負けた」
「先ほどから、まるで自分と殺し合いをしてきたかのような物言いですね」
「……うん。してるよ。
遠いところで、そうして死んだ私が新しい術を思いついていた」
「別の場所で分身を殺し合わせている、ということですか」
「そう。影分身で、今回の決着は、86時間と少しでした。」
「大した修行法だ。莫大なチャクラ、分身であろうと長期戦に耐えうる元々の強さ、戦いざま術を生み出す程必死かつ本気で自分と殺し合う精神力、どれも欠かすことは出来ないでしょう」
「あなたもできると思いますよ」
「私の元々のチャクラはアナタほど大きくはないのでね、お互い喰い合わせたところでそう長続きはしませんよ
なにより悪趣味だ」
「ああ、自分を見失うリスクもありますからね。組織に属し仕事を積まれてる人にはおすすめできない方法ですね」
「だからアナタは暁に入りたがらないと?」
「イヤ、私は違うけど」
「現に今、自分を見失ってるようですが?」
「私は、自分を見失って壊れることはない。むしろ自分が定まると揺れる。
自分が何者でいたいか、何者なのか、自分なりの答えを出されてしまったから動揺してるんだ」
「変わっていますね」
「そうして死んだタイミングが、昨晩ここで結界を解こうとした時ですね」
「ああ……なるほど」
「あの時は驚かせてごめんなさい」
「その時から今まで調子がおかしかったのは、その死んだ分身の影響というわけですか」
「それでも、ここまで刺さるのは初めてなんだ
戦って、水だけ補給して、戦って戦って。最後はあなたの顔を思い浮かべて死んだよ」
「……そういう嘘はつまらないですよ」
「そうだね」
コウは読めない笑みを貼り付けた。
「いらいらしてきているね。いい加減にするとしよう」
「ええ。そうしてください」
言い終わった途端、コウの気配が消えた。
しかし、彼女は目の前に居る。
「?……これは…」
「気配とチャクラを遮断する術です。印は…あったんですけど、戦ううちになくてもできるようになりました」
「ほう…で、私は何をしたら?」
「チャクラ吸引です。この術、チャクラ吸引耐性を持たせているのですが、自分以外にやられたことがないので」
「いいでしょう」
鬼鮫は水を蹴って、コウの頭を鷲掴みにした。
落下の勢いと全体重をかけたが、コウの態勢は崩れず、鬼鮫はその目前に着地した。
「……やっかいな術ですね」
チャクラは、少しも吸い取れなかった。
まるで無機物に向かっているようだった。
「ありがとうございます」
コウは礼を述べながら、頭を掴む鬼鮫の手を、両の手とチャクラで拘束した。
「! 何のつもりですか」
「……約束の反故…裏切り、仲間殺し…。最低な行為を自分の正義にしなければならなかった、しろと命じられた、しなければ生きられなかった」
「今度はなんですか……!」
「私は納得できなかった。でも生きたかった。逆らえなかった。
だから遂行したのに。教えられたまま!
その結果……あんな眼で見るなら、なんで産んだの?なんでこんなふうに、なんで育てたの…」
ポロポロと地面に落ちた水滴が、湿った土に吸いこまれた。
コウの頬に伝う一線とその言葉に、鬼鮫は戸惑った。
そして先ほどの言葉を思い出した。
「放してくれますか?
私はアナタを慰める気も、撫でる気もない」
そうして拒絶の言葉が口をついて出た。
コウはヒクと嗚咽混じりに笑った。
「絆されては、くれないん、ですね」
「アナタは仲間ではありませんからね」
「そういうと、ところ、が、好きで、す」
「それはどうも」
ぐっと目元を腕で拭い、大きく息を吐く。感情を薄め、蓋をするのは対之一族の得意分野。
コウは鬼鮫を解放し後方の木の上へと着地した。
「戦いましょうか。ハハ、こうして触れ合う方がお好きでしょう?
とびきり強い水分身を出してください。同チャクラ量のものを私も出します」
「…分身同士で戦わせるということですか」
「イエス。」
「私は己の身体で戦いたかったんですがねェ」
「あなたと戦いたくなった。でも傷付けたくはない」
「お気遣いどうも。屈辱ですが…仕方ありませんか。
こんなところで殺されるわけにもいきませんからね」
印が結ばれた。