森の奥
夢小説設定
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コウが裏側から結界を解き、チャクラで滝を割った。
「どうぞ」
「どうも」
鬼鮫がそこをくぐれば、外はすっかり暗くなっていた。
しかし、洞窟内特有の威圧的にまとわりつく湿った闇とは段違いに開放的でもあった。
深く緩やかに息を吐いた鬼鮫の後ろでコウは結界を張り直した。
それを終えると、バッと振り返った。
「ああああやっと二人になれたね天使たゃあああっはあああ!!」
そして奇声を上げながら、コウは鬼鮫に駆け寄って飛び付くように地を蹴った。
ひょいと。
鬼鮫は背を向けたまま一歩横にずれてそれをかわし、コウは大きな音を立てて水面に突っ込んだ。
「ンバアアアゴボホマホ」
「それで、どこで捕まえてるんです?」
倒れ伏すコウの背に鬼鮫はため息混じりに投げ掛けた。
声を聞いたコウはガッと水面を掴み、半身沈んだ状態から腕立て伏せの要領で勢い良く這い上がった。
「ブハァッ!愛がちべたいあいしてる!」
「……。」
「……場所はさっき遊んだとこです」
「では参りますか」
鬼鮫はブンブン首を降って水を飛ばしているコウの横をスタスタ通り過ぎ、水面から陸地に降り立った。
そのまま振り返ることもなく走り出せば、
「置いてかないで!すき!」
コウは、身体にまとわりついた水滴を一瞬で吹き飛ばし、笑顔でその後を追った。
激しい風圧と共に真横に追いつかれた鬼鮫は予想通りとはいえ苦い顔をした。
気にせずコウは距離を詰めて鬼鮫の動きにべったり張り付いてきた。
触れるほどの至近距離だというのに、わざと緩急つけようが腕を振り上げようが鮫肌が突如針を突き出そうが、一瞬たりとも触れ合わなかった。
見切られている。
鬼鮫は、この計り知れない少女におちょくられているような気がしてならなかった。
このわざとらしい態度も含めて。
「お、あの辺りです」
「本当でしょうね」
ふとコウが足を速めて鬼鮫を追い越し、とある何もない木の根元に降り立った。
木に背を向けて、いつもの如く肉眼では認識できない早さで片手印を結び、その手で地面を叩いた。
するとコウの前方にある土が水のように波打った。
そこからゆっくりとせり上がって来たのは、滝隠れの額当てをした男5人と、コウの分身が一人。
滝隠れの男達は全員、奇襲に全く対応できなかったのか、間抜けにも走っている姿勢のまま金縛りの術で固められていた。
沈められていた状態から地上に戻った男達は地に伏せたまま動けず、喉の奥で呻きながら目を開けて、視線で状況を探り始めていた。
金縛りを同時に5人に仕掛けながらも、さらには自分もろとも地に沈め、酸素の供給などといったこともしていたのだろう。
鬼鮫は金縛りの術を行使しているコウの顔色を伺った。
十や二十ではきかないほどの影分身。その一体であるにも関わらず、チャクラを失って疲弊するどころか汗一つ無く、視線に気付いて微笑みを返すほどに平然としていた。
自分を案内してきた方のコウに目を向ければ、にこやかにしゃがんで男達の様子を伺っていた。
隙だらけに見えるが、彼女に不意打ちが成功したことは、無い。
分身であるというのに、底が知れない。
「……訪ねても?」
その声を耳に入れた滝隠れの男達は一瞬で誰がそこに居るのか察したのか、息を飲んで顔を青くした。
対照的に、話し掛けられたコウはといえば
「はいなんでしょう!」
すぐに立ち上がって、嬉しそうに首を傾げて見せてきた。
わざとらしいものだ、と、鬼鮫は一瞬眉間にシワを寄せた。
コウは勿論その心の動きと表情を見逃さなかったが、特に指摘はしなかった。
「アナタ、いままでチャクラを使いきったことは?」
「え?そりゃあ、分身ならわりと?」
「発動していないときは?」
「え~、あー……ないっすね」
「……そうですか」
「もしあったら?」
「別に?聞いただけです」
「あったっつったら、か弱くて守ってあげたいって惚れてくれます!?」
「笑止なことを言いますね」
その言葉が馬鹿々しく、鬼鮫は肩をすくめた。
嘘ばかり連ねるコウを好きになることは万に一つもない。
ましてやこのまま弱者となろうものならそれこそ不快の極み。すぐにでも殺してやるだろうと。
「ブファッ!ハッハッハ!」
返した言葉の何がおかしかったのか、数秒の間ののち弾けたように笑い出したコウの声に鬼鮫はハッと思考を止めた。