森の奥
夢小説設定
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湯に浸かっても取れなかった疲れが、まるで吸い取られていくように消えていく。
使い古した機械のように、重く錆ついていた身体が少し軽くなったイタチはまた、彼女の才を実感した。
「お前は、……いや、邪魔をした。続けてくれ。」
口を開きかけたところで、まだ治療中であるためとコウの顔を見上げたがすぐに口を閉じた。
「専門外つっても、そんな不器用でもありませんよ。
どうしました?また命の話でもします?」
会話を欲したイタチの心の動きに気付いたコウは、視線はイタチの身体に向けたまま微笑みを浮かべた。
イタチはしばらく黙っていたが、受容の姿勢を保ち続けるコウから視線を反らした。
「……お前は、サスケと同期だったな」
「そうですね」
「サスケとは仲が良かったのか?」
「弟の話ですね。
彼とは…班も違ったし、そこまで。
けどほんの少し縁があって、覚えられてはいたかな」
「縁?」
「下忍の班分けで、私が振り分けられた12班の担当上忍がしょっぱな急用入って。
最後に上忍が迎えが来た7班…、自己紹介はサスケたちの班と合同だったんです」
「……」
「その時サスケが語ったんですよ。
夢はうちはの復興と、とある男を必ず殺すことだ、なんて」
「俺のことだろうな」
「それ以外に居たら驚きですよ」
「そうか」
「翌日のレクでは7班と同じ場所で、7班が使った直後にやったからこっそり見られたりして。
解散って時に木陰からサスケに手裏剣投げられちゃいましたね。12班は皆強かったから、嫉妬と焦りと、信じられないって感情がたくさん籠ってましたね」
「その手裏剣はどうなった?」
「たまたま私を狙って飛んできてたから、ひとつをチョキで挟み取って、残りの手裏剣を適当に撃ち落としました。びっくりしてましたよ。ルーキーの下忍らしい年相応の反応でした」
「……そうか。普通の忍としての道を、歩めていたんだな」
「そうですね。アカデミーでも下忍になっても優秀で女子に人気で目立ってましたが、それでも規格内の実力でしたからね」
「お前は?」
「えっ俺?じゃねえや。私。
私は一族柄目立つことの恐ろしさを教え込まれてましたから」
「あえてレベルを下げてやり過ごしたという訳か」
「ええ、適度に失敗適度に不正解、目立たずを貫きましたよ」
「俺もそうすればよかったな。今ではそう思う」
「子供だったならしょうがないですよ。
後悔というなら私も。下忍に上がってから周囲のレベルが一気に上がったので漫然とそれに合わせてたら上で少し話題になっちまったという失態犯しちゃってますよ。プレッシャーが無いと、気は緩んで失敗するものですね」
「……同期も強かったのか?」
「私と同じように、その二人も外の国から転校してきたんですけど、あちらも重要なお家出身だったらしく。両方英才教育を受けてのを隠してたって言うから驚きですよね」
「小説よりも奇なりだな」
「ですねえ。
そのせいか私達を見かける度に睨んで来てたんですよサスケ。
だから一応目にとまっていたんですが、まあ様子を見る限り酷使されたり暗部に勧誘されたりとかはなかったと思いますよ」
「…そうか」
「そういえば中忍試験中にサスケ拐われたからまだ下忍ですやん」
「大蛇丸か…」
「心中穏やかではなさそうですね。
普通の子にとって大蛇丸の懐が危険なのはわかるけど。」
「……サスケの身体の調子はどうだった?」
「まあ、その写真の時の印象としては、当分大丈夫そうだったよ。
今も昔も健康にのびのびと。
誰かみたいに、幼い身に鞭打って無理やり酷使してきたわけでもないから、身体も健康。毒や術の効果以外で病気してるところを見たことが無いね」
「そうか」
イタチは安堵したように息を吐いて瞳を閉じた。
「……とっくの昔に、自分の中で答えを出したはずの事を、最近また考える」
「なんでしょ」
「正しい、とは。正義、とは、何なのだろうかと」
「正義の話?」
「ああ。お前はどう思う」
「んー、小さい頃は単純に、白か黒か、正義か悪かしかないって思ってた。けど、そうでもあるし、そうでもない。
ただ対であるだけ、ただ片側であるだけ、正義か悪かなんて区別をつけるためだけの言葉に過ぎない。
どっちも変わらないんだなって思うよ。ただの、感情を解放する言い訳でしかない」
「言い訳?」
「そう。迷わず省みない言い訳。
人が罪悪感なく残虐で最も暴力的になれる瞬間は、正義を行使しているときだ。
正義でいたいと願う奴は暴力的な奴になりたいのか?と判断する気はないけどさ」
「オレが過去に出した答えに少し似ているな」
「それは嬉しいな」
「オレの行いは……オレの正義は、成されると思うか?」
「無責任な同意で得た安心に意味を見出すタイプでしたっけ?
残念ながら私の答えは、知らない、ですね。
それを判断するのは私ではなく、最終的な結果ですから」
「……少し弱気になっていたようだ」
「気にしませんのでいくらでも。
体調悪けりゃ心がそれに引っ張られて弱まるのは自然なことですよ」
「そうだったな」
「眠りますか?」
「ああ」
「では、おやすみなさい」
「……正直、恐ろしいがな」
「ははは」
閉じた視界の中、
身体の中に他人のチャクラが流れる感覚と、軽くなった呼吸の心地よさを感じながら、イタチは静かに身を委ねた。
イタチはコウに不思議な安心感を感じていた。
こんな小娘が、まるで身を委ねるに値する大木の様に見えることすらあった。
それが少し、恐ろしくもあったが、身を離す理由にはならなかった。