森の奥
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残されたイタチは徐に部屋を出て、洞穴のさらに奥へと足を向けた。
道中のコウはイタチが通ったのを一瞥するだけで、引き留めることも笑いかけることもせず自分の役目を続行していた。
ある程度進めば、正面は行き止まり。
側面に顔を向ければ地下へ続く階段がそこにあった。
階段の先は、墨のような闇に浸されている。
イタチは臆することなくその闇に沈んでいった。
寝具や家具などを置く居住スペースと言われる場所は、どこに続いているのか換気口があり湿気も空気も思うよりは重くない。
だがそんな居住スペースとはうって変わってここは一段、また一段と降りる度に湿気は増す。
着地する感触や反響音から、階段や壁が湿っていることが分かる。
視界は塗りつぶされている。
足を滑らせるのも踏み外すのも非常に容易だ。
火遁で視界を照らすこともできたが、そういう気は起きなかった。
一歩、一歩と、イタチは濃い闇に身を落とした。
骨まで濡れるように重苦しい空気。
空気そのものが澱んで死んでいる。
逃げ道はない。
まるでイザナギノミコトが黄泉の国へ向かう為に通ったという地下洞窟のようだ、と。
イタチはここへ来る度にそんな錯覚を受け、この長い階段を全て掘り作ったコウに感心する。
暗闇と静寂の中、時間の感覚も狂うほどに進み続けた先で、イタチはようやく平地に降り立った。
手を伸ばし、更に歩みを勧めれば、濡れた岩にぶつかった。
たどり着いた行き止まりにチャクラを流せば、次の瞬間イタチの瞳が光を拾った。
「探険ですか?」
目の前の壁から生えてきたのは、冗談めかして笑うコウだった。
写輪眼の赤のように、金色にぼんやりと光る瞳。
そしてその身体に流れる、使えども吸いとられようとも気味が悪いほど均一に流れるチャクラ。
「入れてくれ」
「全遁使えそうなもんなのに」
コウはクスクス笑い、イタチの写輪眼にも見切れないほどのスピードで土遁の印を片手で結び、土遁の使えない彼の腕を引っ張った。
もし使えようとも結界に阻害されるだけであるのだが。
手を引かれるまま壁を抜けた先には、大きな空間があった。
先ほどの空気が嘘のように、湿度と温度共に快適で、気が付いたら深呼吸をしていた。
その空間の一角の壁にコウがチャクラを流せば一部の壁が消え、通路が姿を現した。
その通路を進み、六畳の空間に到着したところで二人の手は離れた。
コウが行燈に火を灯し部屋の内装が見えたところで二人は揃って靴を脱いだ。
「今日もお疲れですねえ。滝隠れの里で何帰りですか?」
「…………。」
互いに腰を降ろしてようやく口を開いたコウの言葉にイタチは特に声を発さなかった。
が、コウはそのチャクラの動きを見るだけで気持ちを察せるため、イタチの心が自分の言葉で動いたさまは、返事をされたのと同じだった。
「いい思いはしなかったようだ。全く心配になる
だからこそ頼られるのは光栄だ。君たち兄弟ともにね」
「サスケに頼られたことがあるのか?」
「大蛇丸の呪印を見掛けたとき声をかけたんだ」
「……そうか」
チャクラを揺らしたイタチを見てコウは目を細めた。
そして懐から写真を一枚取り出して手渡した。
「これは」
「この前大蛇丸とカブトと共に移動しているところを見かけてね。隠し撮ってきた」
写真には、大蛇丸に与えられた装束を身に纏う、直近のサスケが写っていた。
「大蛇丸とカブトの写真もあるよ。これが割とコツさえ掴めば気付かれないもんでね」
「……お前の技量を見せつけられる度に、リーダーが諦めたがらないわけだと感心する」
「照れてしまうね。
それより調子だけど……少しずつ血圧が下がり続けて、血液の循環に難が出そうになってるね。
仰向けになってくれ。臓を触る」
「頼んだ」
「医学は専門外なんだけどね。
まあ、宝を腐らせて笑う趣味はないさ」
写真を見つめて横になったイタチの胸に、コウのチャクラが染み込んだ。