□12 牛頭天王破壊まで[7p]
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「やあスミレちゃん。どう、彼の心持ち。面白かった?」
「!…………怖い。
……怖いくらい、高いところにあったわ」
「スミレさん……」
マギレ君おまえさっきからなんなん。
いつから『スミレさん…』が鳴き声になったんや。
それはそれでかわいいけど。
「で、スミレちゃん自身はどうしたい?」
「……どうしてそんなこと聞くの……?」
「ん?」
「號ちゃんは応援してくれるって、言ってたじゃない!私が父の悲願を叶えることを……!
私と同じあなたが、応援してくれるって言うから私は…!!」
「同じ?全然違うよ。
自分の意思でそれを望むならたしかにお揃いだったけども」
「違う…?!私は自分の意志で復讐を望んでるわ!!」
「な、なにがどういうことだってばさ、號?!」
「ああボルト、いやーハハハ。私もう人を応援するのやめようかな」
「答えになってねえってば!」
「知っていたんだよ、彼女も。委員長の事」
「は…?」
「號ちゃん!答えて!違うってどういうこと!?」
「いやスミレちゃん、父様を愛してないじゃない。 」
「!?、」
「無理矢理言わされてるような言葉ばかり吐いて、やることなすことやりたくなんかないって叫びそうな顔して。
それを勝手に父様のせいにして、逆らえないと苦しんで」
「違う!私は兵器!心なんて存在しないの!決めつけないで!!」
「や、父の兵器と言うけど、兵器たらしめていた父が死んだのにまだ息してるじゃん。
一人で生きることができた時点で、キミの世界はキミのものだし、キミは紛れもなく自由な人間だよ。やりたくないならやめていいさ」
「そんなことできない!父の死を無駄死に…根の無念を白紙にしろと言うの?!」
「だーっからそれ父様の亡霊に言わされてるだけでしょ。
スミレちゃんはイヤなんでしょ?
苦しんでまで、肉親を愛し受け継ぐ、託された想いを紡ぐ、正義を行う、筋を通す…というのは多数決上では美徳とされるけど、結局は他人の戯れ言だよ。
そんなんに翻弄されて今を壊しても、どうせ誰も責任は取っちゃくれないよ。
やめなよ。
その先に光が見えないなら、そんな場所に君を想う人はいないだろ。だったら足を止めて、向きを変える勇気も必要だと思う。
スミレちゃんは今自分で自分を追い詰めてるけど、
自分として生まれたからには、自分で自分を幸せにしてやろうぜ。
なんたってキミの世界はキミのもんだ。」
「…………」
難しかった?
「……あのね。
私はね、父様の為ではあるけど、私が私の為に私の意志で動いてるの。」
「それは私だって!」
「スミレちゃんは違うでしょ。
自分が兵器であることを誇ってないし、木ノ葉を恨んでもいない。父様が、もういいと言えばやめるでしょ」
「そんなこと…っ!」
「木ノ葉崩しはスミレちゃんの意志ではない。強請する者もこの世に居ない。ならやらなくていいじゃない。
私はスミレちゃんが後悔も迷いもなく、本当にやりたいと思った事が達成出来ますようにって。そう思ってる。
そう言う意味で応援してるよ。大事な友達が苦しんでる姿は見たくないからね」
「そんな……今更そんな……ッ!」
ん。
折れたな。
『最初から私とお前は全然違うから好きに降りろよ、私はちゃんと友達だぜ』って言ってやれば、いよいよ逃げ場のなくなったスミレちゃん。
もう彼女に木ノ葉を壊す覚悟はない。友達を殺す覚悟もない。
それでも人は感情の生き物だ。
いくら言葉を尽くそうと、それだけじゃその場で簡単に考えを改めるなんてできやしない。
意地になってりゃ猶更だな。
だからもう……
っと。
ボルトの方から感じるこのチャクラの気配は。
「……やっとわかったぜ。
なぜ悩みを抱えた人にだけ、ゴーストが憑りつくのか。」
浄眼。
また勝手に発動したらしいそれが、スミレちゃんの纏っていた鵺と、鵺が供給していた負のチャクラの霧散を捉えたようだ。
そうだね、それはスミレちゃんがこの苦しみから解放されたがっていた証だね。
「それは、委員長自身がずっと悩みを抱えていたからだろ?」
「!」
さっきまですげえ蚊帳の外だったし私について思うところありまくりなようだが…ひとまず置いといてくれるようだ。
いっそそのまま忘れてくれ。
「同じような精神状態の人には、憑りつかせやすかったんだ。
そして…心に大きな影響を受けると、ゴーストは消えちまう。
ごまかされねえぜ、委員長…!」
「ち、違う……!私は父の恨みを晴らす兵器!!」
さて。
だからもう……、
やましい心の奥底をさらけ出すことに耐えられないと。
この場からただ消えてしまいたいと。
そんな衝動に喰らい付かれて自棄になってしまうのだ。
暴走などしてしまうのだ。
感情のまま。
「鵺!」
「!」
「やっぱり復活しちゃったか」
スミレの叫びに応え、地響きを上げて躍り出た鵺を見上げる。
鵺は雷獣ともされるらしいが、雷は使わなかったな。……なんてぼんやり思った。
「命令よ!
私のチャクラを全て!吸い取りなさい!!そして…」
苦しみから解放されることを望んでいても、
自分から苦しみを捨て振り払い抜け出すことは恐ろしいことだ。
不幸が当たり前となった最中、急に表れた幸せへの道へ足を向けることは、怖い事だ。
優しい人や臆病な人ほど、そういうもんだ。
ヘドロでしかないのに、寄り添ってくれたからって、捨てるのをためらってしまう。
「自爆しなさい…ッ!!」
それが何の意味もない行為であることは、この場の全員にわかることだ。
無論、鵺にも。
「……!? どうした、鵺ッ!早く吸いなさい!!」
命令を聞くという事は、ある程度の言葉を理解するんだ。
知能がある。
知能があるのならば、それなりの意思がある。
いくら命じても鵺は聞かないだろう。
むしろ、そんな早まったことはしてくれるなと言い聞かせるように、優しく喉を鳴らして身を寄せている。
「やっぱり、鵺はスミレさんの事が大切なんだ…好きなんだよ…!」
マギレ君はちょっと黙ってろ。
さあボルト。
いけ!畳みかけろ!!
鵺はスミレちゃんを親だと思ってんだってな!
親にされて嫌だったことを、自分を親だと思ってる鵺にすんのかってな!!
無性に尽くしてくれた心ある存在を、
善悪も知らない無垢な存在を、
兵器扱いして、無意味な自殺に巻き込むのかってな!!
「道は自分で選べるんだ!
オレ達も、鵺も、お前も…!」
「わた、し…っ」
「スミレ!!」
蒼穹の瞳がスミレちゃんを射抜き、そして叫んだ。
とげの無い、存在を肯定し、勇気づけるような声が轟いた。
スミレちゃんの心が完全に定まるのと同時に、その背中から衝撃波が起きた。
紫色の髪がぶわりと広がり、その背が光る。
ビシビシと固いものがひび割れる音を立て、そしてガラスのように弾けた。
砕けたのは、牛頭天王の紋。
「牛頭天王が!」
「多分感情や決意に結び付けて留める呪いだったんだろうねえミッキー」
「ミツキだよ」
「ハハハ」
「おい!笑ってる場合か!!」
牛頭天王は凝り固まった復讐の精神に絡みつけることで定着させているシステムだ、とハオリが言っていたな。
形がないから物理的に破壊は出来ないだろうが、不安定極まりないな。
そして自壊を始めたこの世界も、不安定極まりないな。
全空間大地震アッハッハ。