□10 職場体験終了まで[10p]
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翌日。
今日も今日とて金属工場。
そしてレポートを考える影分身の私と、
スミレちゃんのお見舞いに行く影分身の私だ。
影分身を出していられる時間はまだ短いが、少しずつ伸びている。
誰もいない病室内。
空になっているベッドに接続されている機器をつついていれば、足音ひとつ。
このベッドに横たわっているべき患者が白々しく帰還なされた。
「おかえりなさい、スミレちゃん」
「!! なんで…」
「回診の時間はまだ先で、今は学校の時間。確かにちょっとくらい席を外しててもばれへんか」
「別に絶対安静じゃないから……散歩やトイレで誤魔化せるわ」
「あ、そうなの」
「號ちゃん、職業体験はいいの……?」
「いいのよ。ここに居る私はただの分身だから」
「そう……」
言葉を交わしながら、
スミレちゃんは軽く見繕いをしてベッドの中へと戻った。
「それで、何の用なの?」
「ん?私からのご用事というより…、隠蓑が転科してきた日の放課後。私に相談事したげな目をしていたけど、あれ結局何だったの?あれっきり寄ってこなくなったし」
「! 気付いてたんだ…」
嬉しい、と。心のつぶやきが聞えたが、それを別の心が押さえつけたみたいだ。
スミレちゃんはフイと私から顔を逸らした。
「もう自己解決したわ」
「あらそう。それは悪いね。それじゃ失礼しました」
「えっ…」
「え?」
ぱしっと。手首を掴まれた。
その行いにスミレちゃん自身も驚いているような様子だった。
ええ?
「あっ…はわ…えっと…これは……」
「うん」
「そ、そう、…マギレくん。…マギレくんに、毎日放課後…何をさせているの?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「それは……」
寂しいか。
話したいのなら乗ってやるか。
「アレにはなにも強いてなんかいないけど、やると言うから、私が行うには酷なことをやって貰ってる。
…ああ。鵺が吸ってる途中なのに奪って悪かったね。
やっぱり、欲しい気持ちが勝ってしまったよ」
「……チャクラのことはもういいわ。心に闇を抱え持つ人間なんてそこら中に居るもの」
「それもそうか」
「ねえ」
「うん?」
「マギレくんが言ってたよ。
號ちゃんには好きな人が居て……、だから、同じように片思いをしていたから……自分のことのように親身になってくれたんだって」
「そう」
「でも、本当は違うでしょ?……計画のため……懐柔して利用するために近付いただけなんでしょ?」
「ははは、アレに共感できるところがあるってのは本当だけど、まあ、そうだね」
「號ちゃんは……自分で吐いた嘘に酷く縛りつけられるような…そんな気持ちにはならないの?」
「なるさ」
「……そうは見えないけど」
「そう?常にそんな心地だよ。
生産性のない恐怖と焦燥は友達さ?」
「それを苦しく思わないのなら、縛られてるとは言わないわ」
「ん?そう」
友達という存在が苦しくないなんて驚きだね?という言葉を飲み込んだ。
スミレちゃんにとって、友達は苦しくないものということか。
たまに役立ちはするだろうが、わりにあわず面倒で息苦しく煩わしい、でもそれが無くては生きていけない、忌まわしいそれが。
「マギレくんは……私が声を掛けて気に掛けてくれたから、私のことを好きと言ってくれた」
「そうだねえ」
「……私も、號ちゃんと同じ、嘘つきなのに……計画のために近付いただけなのに……」
「ん?同情してんの」
「まっ……まさか。してないわ」
「どっちでもいいけど、する必要はないよ
なんなら、言いたきゃ言えばいい。
私もスミレちゃんも、悪意を持って近づいたんだって」
「何を言っているの?……そんなこと言ったら、」
「傷付けてしまう?」
「ちっ、違う!ふ、不都合なことになるに決まってるじゃない!」
「この私だよ?
数日、長時間一緒に居たんだ。」
「……?」
「アレがどういう心持ちで私の裾を掴み、どういう気持ちでスミレちゃんの横顔を追っているのか。……なんて、とっくに理解できている。
きっと驚く答えが返ってくるかもね、フフ……彼は本当に面白くて可愛いよ」
スミレちゃんは怪訝そうに眉を寄せていた。
その眉間をトンと小突くと「きゃ」と可愛らしい声が返ってきた。
「自分と仲良くね」
「え」
ボンッと。
そこで解けた分身の記憶が、全ての私に流れ込んできた。
意味はないがクソデカ溜め息。
あっ職員さん何でもないですすみませんそれじゃあ鉛の抽出について質問いいですかっと。
スミレちゃんの不安感が日に日に募ってはいるが、しばらく放置で良いか。
彼女を救うのはボルトの役目であるからして。
ところで、鉛工場での見学の経験を経て、少しひらめいたことがある。
前の世界では鉛と錫……はんだと縁があった私だから気付いたのかと何となく浸りながらハオリに相談することにしようか。
業務後。
私は影分身と入れ替わりひと足先に裏山へ。
分身の私含めた三人は業後その足でスミレちゃんのお見舞いに行った。
他の班の子達とはち会わせたりしたりして数分言葉を交わしてそれぞれ帰路につく。
私の分身は路地裏で密かに消え、かぐや君は合図用の蟻を口寄せし秘境へ逆口寄せされていき、マギレ君は私の待つ裏山へと走るのだった。
今日からの職業体験期間中は毎日そんな感じのようだ。
駮の世界で待ち受けていたハオリに修行の指揮を任せれば、マギレ君と別々にされた。
なんでも、マギレ君には迷彩隠れと医療忍術を教え込むということらしかった。
私は火遁よりも幻術と封印術を学べとそちらの指導を受けた。
そして、ハオリが会う度に幻術かけてくる理由もわかった。
彼女は私に兄さんの菌がついてるときだけ、目眩ましでかけていたらしかった。
兄さんぇ……。
まあ、ハオリの目的が義父の耳に届いたら洒落にならない事態となってるだろうしなあ。
駮の存在についてどう思われてんのか、マギレ君の言葉についてどう思ってんのか気になったが、兄さんを下手につつく気はない。
私のやりたいことを止めたくないと言うなら、きっと見ぬふりをしてくれているのだろうと思うことにした。
数日後、いのじん君がわざわざ工場まで訪ねてきて、なんかレポート手伝うから悪者を捕まえるだなんだ協力を要請してきた。
私は何の特別な事態もなく職業体験を終えたかったので(鉛について何か掴めそうだったこともあり)お断りした。
最初の一人が断ったのだから、そのまま二人とも従って断るとたかをくくっていれば、かぐや君が渋った。
「困っているなら……」
「いやお前郵便局やぞ。いつも鉛筆折っちゃうノリでお手紙破ったら洒落にならないだろ」
「うっ…」
「ああ、相変わらず不器用極めてるんだ。
號はなんで嫌なの?」
「ここにかぐや君を残らせて、お目付けで私が一緒に残るから。こいつさっきもやらかしそうになったし」
「ふーん、そう。まあ強制じゃないし構わないけどね…
マギレはいいの?委員長に怪我させた原因を捕まえるんだよ?」
「……スミレさんに怪我をさせた……原因」
「私はおすすめしないよマギレ君。転科したばかりなのに変なことはできんでしょ」
「……ごめん號さん。ボク、郵便局に行くよ……そいつがいなきゃスミレさんは怪我をせずに済んだんだ」
「や、まあ決めたんなら止めはせんけど」
「お、一人ゲット。そうこなくちゃ」
その翌日。マギレ君を一人欠いたまま工場での体験を終えた。
郵便局のほうでボヤがあったとか聞いたが、まあ、ストーリーが進んだんだろうなと。
マギレ君にこっそりつけていた影分身の記憶を見れば、ボルト達と郵便局内でてんやわんやしてた。
外で犯人追いかける側に配属されてた。水の上を走っていかれ見失ったようで。
マギレ君は落ち込んで帰ってきた。
犯人のしぐさについてなにも気付かなかった様子で、少し見損なう。元ストーカーなら犯人は愛しの人であると気付くと思っていたのに。
「全くの無力だった。笑っちゃうよなぁ……
ボク……、水の上も歩けないんだ……」
そうだっけ。
水の上で逆立ち腕立てをしてるところにその懺悔をしてきたのは、わざとなのだろうか。
傍らで腕立ての数を数えていたハオリは目を丸めていた。いや嘘でしょじゃねーよ把握しとけよ。