□10 職場体験終了まで[10p]
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さてそんなガラスを操る術だが……私はともかく、マギレ君もこれをできるようにと言うか。
酷な。
開かれた道に、ハオリはひらりと躍り入った。
「なに?治療中、
!!」
「良い腕ね」
「出ていけェ!!」
ハオリの顔を認めるなり鋭く尖ったサクラちゃんの瞳と怒号、そして瞬発的に振られた拳が患者に近付くハオリを捉えた。
顔知ってたのか。
目にも止まらぬそれは、しかし、殴り付けられた人をよろめかせることすら叶わなかった。
その人は肩口に突き立てられた拳を一瞥することもなく、どこ吹く風と患者を見下ろしている。
「クク…循環させるべき水路が見えてるのね。
でも凍り付いた溝を箒で掻くよりは、勢い良く熱を流してしまった方が良いと思うわよ」
「!!そんな…… 込めたチャクラが…一瞬で吸われた…ッ?」
「ほら。折角肺があるんだもの。
それは使うためにあるのでしょう」
眼を見開く桜色を目にも止めず、ハオリは患者に繋がる呼吸器を掴んだ。
「私の患者に手ェ出したらただじゃ置かないわよ!!」
鋭い制止の声と腕は届かなかった。
透明なものに阻まれて。
その透明なものは、ハオリに集中治療室への入室を許した、ガラスが液状化したものだった。
荒く呼吸器を外すと同時に、ハオリは呼吸器を持つのと逆の手で患者の萎れた首を掴んだ。
差し込まれたサクラの叫びは無視される。他の職員と共にガラスを壊そうと奮闘するが、きっと破れないだろうと、この目につく瞼越しの瞳術が言う。
ガラスに確りと編み籠められ蠢くチャクラが、物理攻撃を通さず、忍術やチャクラによるメスや肉体強化は触れればチャクラのみが旨そうに吸い尽くされた。
はて意外な事に、ナルトは動かない。
一方のハオリは何事もなく、そのまま己のチャクラを患者のチャクラに似せ(この動作だけでも私はできない)それを濁流のように流し入れつつ、一巡りしてきたチャクラを回収するように吸い取っていた。
流れるチャクラは、残らず意思をもっているように強引かつ正確に身体の路を走り抜けていた。
なんだか、胃洗浄と輸血のような印象を受けた。
十数秒もしないうちに、患者の顔はみるみるうちに赤みを増して、肌は瑞々しさを得ていく。
流石に人の仙たるハオリは、人の身のつくりを知っているということか。
やがてハオリは、適度にチャクラを残して患者の首から手を離した。
サクラちゃんを含む周囲の人間は愕然として、嘘のように正常な呼吸を始めた患者を見ていた。
「悪いサクラちゃん、言ってなかったってばよ」
ナルト以外は。
「どういうこと?ナルト…こいつはあんたを殺しに来たやつじゃない…」
「あの後、また来たんだ。そんで……まあ、和解したっつーか、そうでもないっつーか……」
うーん、と腕を組んだナルトを見て、ハオリは己の存在を知らせ間を引き継ぐように喉で笑った。
サクラや職員らを阻んでいたガラスを然り気無く窓枠のすみに控え戻して。
「この事件でこうなった被害者は私が治してあげる。ついでに、これから私はこの里に居る、手の施しようもない患者をひどい順に5人看る。
その代わりに、私を許してくれる。そういう約束よ。
和解したと思ってもいいわよ。まあ、私の想いは健在だけれど」
弱体化してれば首も取りたくなる、と言う目でナルトを流し見るハオリは、しかし笑っていた。
その視線に憎しみではない想いもまた潜まっている事を、きっとナルトは、アシュラすらも、わかっていないのだろうなあ。
まして今ハオリを睨み付けてズイと視界に入ったサクラちゃんなら、なおのこと。
「私が治せなかった患者が、あなたには治せると言うの?」
「プライドを傷付けるようで悪いけど、
いまこの患者の延命にすら手こずっていた貴方が、この私に問うの?」
「……っ!」
「おい、ハオリ。それは侮辱の言葉か?」
カァ、と悔しさに顔を赤らめたサクラちゃん可愛いのう。
見かねたナルトがハオリを嗜めるように呼べば、彼女は肩をすくめて「いいえ?」と言ってあからさまに口元を吊り上げた。
そしてサクラと職員をクルリと見渡してから、集中治療室の窓枠をつかんだ。
通路にヒョイとハオリが躍れば、ガラスはもとあったようにその姿を戻した。
サクラちゃんがとっさにガラスを叩き、話は終わってないなどと口を動かして喚いたが、
声が届かないと思い出したのか、
ハオリをひと睨みする。
しかしハオリといえばそれに気付かぬふりをして、ナルトへ新しく言葉を吐くものだから、
踵を返し患者を病室に戻す準備を始めたようだった
「やっぱりこの世代のインドラは嫌いだ。
その妻といえばただ可愛らしいばかりではないか。
強き弱きに拘らず、愛するから妻帯とするなんてアシュラのように肌臭い真似をする」
サスケのこと知ってたんけ。
つまりサクラは弱いと言い、サスケがサクラを愛したことを否定した。
そんなハオリの言葉を理解したらしいナルトは、眉を強く吊り上げた。
「ハオリ。それ以上言ってみろ、」
「悪かったわよ、アシュラ」
「オレはナルトだ」
「そうね。七代目火影殿」
「……オレの名前の何が気に入らないんだってばよ」
「良い名だと思うわよ。ただ、その背に居るものの存在の方が私の中で大きいだけ
久し振りに会った馴染みをその名で呼んで何が悪い」
「オレはナルトだ。思考も発言も、このうずまきナルトのものだ」
「己を認められず否定されるのがそんなに嫌か」
「ああ。嫌だってばよ
お前が連れてきたそこの二人を取り返してでもやめさせたいくらいな」
さっきから私とマギレ君の背後に居るナルトの影分身。
ここでマギレ君はようやくそれに気付いたようで目を見開いて私の肩をつつくものだから、瞼を上げるため瞳術を解除した。
笑顔で溜め息を吐いて、振り返らぬまま話しかけてでもみようか。
「今度、初代と二代の顔を見に火影室を訪ねてもよろしいでしょうか?」
「!」
「執務の邪魔はいたしませんよ。父上と叔父上の仇を前に涙はするかもしれませんが」
「お前、火影岩や教科書を見る度に泣いてんのか?」
「キッヒヒ……いいや。胸が締め付けられるだけだね」
とか雑談おっぱじめようとしてたら、ハオリが急にこちらに歩いて、前触れもなく私の胸に手をついた。
なんだと思うまでもなくその手は、持てる全て以上のチャクラを与える動作をした。
「おい!」
と、どちらか片方のナルトが発したとっさの声を尻目に
カチリ、
と胸元で音が鳴った。
この身に流れるままの状態から、受け取り手に馴染むよう自動変換されたチャクラが、ハオリの身体に渡った。
先程の患者を50人は余裕で治療できるほどの量がこの身からすこんと抜き取られたのがわかる。
驚くべきは、それをものともしない自分のチャクラ量か。
スミレちゃんが私に鵺憑けてたら私一人だけのチャクラで事足りたんじゃないかな。
顔を上げれば、
「分けた五つの血の中で下から上にかけてチャクラが少なくてね」と微笑んで呟く姉の顔。
第一子目の兄様が一番少なく、末子の私が一番多いと。
確かにテン兄様のチャクラ量は人並みだ。
テン兄様以外の兄姉はチャクラ調整術式が刻まれているため知るよしもなかった事だ。どうやって調べたのだろうか。
「ハオリ……今何をした?一瞬だが、尋常じゃない量のチャクラが動いた気がしたが……」
「無くなったチャクラを補給しただけよ」
「それは……子供からチャクラを奪ったのか!!」
「この子は最高の肉体と実年齢にそぐわぬ精神をもって、凄まじい量のチャクラを宿してる。
多少の量くらい訳無いわ」
「そう言うことを言ってんじゃねえ……!」
「私にとってこの子は稚児でも宝でもない、一人よ。
私に出来なくて彼女にできることがあるのなら、力を借りるのは当然だわ
現に嫌がってないし苦しげでもないじゃない」
「嫌がる素振りがなければ何やって良いのか?それは違うだろ」
「違うの?」
ハオリは、ふっと息を吐いた。
さて話はいつになった終わるのか。このあと修行つけてくれないのなら退散させておくれ。
元々今日は火龍炎弾と水龍弾を練習する予定だったのだ。時間が惜しい。
そして、
あの後数分もめたが、なんとか解散となった。
ハオリはしばらく木ノ葉付近に滞在し、この数日は修行を見て貰えることとなった。
ただし今日は、患者看るとかでそのままハオリと別れた。
それで聞いたところ、「これくらいできるように」っていうのは、玻璃遁ではなく、医療忍術の事だった。
いやどっちにしろ難易度すげーで。
なんて話ながら、取り残されたようにぽかんとしていたマギレ君をいつもの裏山に引っ張ったのだった。