□10 職場体験終了まで[10p]
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「……そして。貴方は隣に立つ覚悟を決めたのね。簡単には戻れないって、失望したから辞めますは通らないって言ったのに」
「はい。辞める気持ちはありません。誰でもないボクのために」
「クククッいい子を見つけたじゃない」
「それはどうも……」
書面に書いてたことが本当なら、精神干渉して細工を施した張本人の癖によく言うわ。
確かに自画自賛は楽しいけども。
「ところでどうしてまた病院まで来たんですか
ほっとけば外出たのに」
「ああ、今は貴方のためじゃないわ」
彼女がぴっと親指を背後に差した瞬間。
「――てっていでででっ もっと優しく、いやいいかげん放せってばさ!」
というボルトの声が僅かに聞こえてきた。
その声は、ハオリが来た方角で、同じフロアではあるがそれなりに遠方を移動中と思われた。
「貴方達がついで。せっかくだし、一緒に来ると良いわ」
合流すんの?
ハオリの背に続いていけば、声はどこかの扉に入室したようだった。
そちらに意識を向けていると、目の前の背が逆方向へと進んだ。
「あれ……?声の方に行かないんですか?」
マギレ君も疑問に思ったらしく、小声で訪ねていた。
これに彼女は「行くからこっちでいいのよ。真っ直ぐ行かないだけ」と返していた。
遠回り道は、閉め忘れたらしき関係者入り口に始まり、常に身を隠せるものが多い通路を選んでいるようだった。
指摘したら、
「追手がついているのよ?近くにいないとわかっていても、常日頃から道を選ぶクセ付けてるの。不意をつかれてドジるのは嫌だもの」
と言う。
到着したのか、彼女は通用口然とした戸の前で足を止めた。
一度笑うと、彼女は躊躇い無くそれを開け放ち、ずかずかと敷居を跨いだ。
「ご機嫌麗しゅう!今日もにっくき出で立ちであらせられる!」
「!!」
戸の先には、薄暗い通路と、そのすぐ先にガラス張りの集中治療室。
大人になったサクラちゃんが、ミイラのように乾いて痩せこけた男に治療を施しているのが見えた。
「!」
「うわっ!?なんだってばさ!」
「あ?……木ノ葉じゃ見掛けない装束だな」
「七代目を、にっくき、とか言ってたよね?」
「やあー其れなるは、貴方のお子と、友か。
粒のように稚く頑是無い玉体でおわすところには、簡単に転がるそれを溢さぬよう大事にせねばなるまい?」
「いとけ……?……が、がん……?」
「お前たちは下がってろ」
ナルトから贈られた声は、警戒たっぷりに低められた音だった。
それを耳障り良さそうに、ハオリは眼を細めた。アシュラの焦りを楽しんでいるように。
「その粒は芽吹くか食われるか弾けるか無くすか埃を被って黒ずむのか、それは楽しみだねェ?クククッ」
「その目に入れるな……!お前とこの子供たちは関係ない」
「確かに関係ないな。ああ、全く以て。
お前の大切なものを壊せばさぞ胸はすくことだろうが、このお前が何を大切にしようが私には関係ない」
「なら…手を、出すなよ」
「クッ。先日そのようにお約束仕り申し上げたのをお忘れか?否知ったうえでか。だとしても愚かだ」
「何の用だ」
「…うつけの器であるならばそれもまた無理も無き事ではあるか」
「な、なんだあ…?なあ父ちゃん、何言ってんだよあの女の人…」
「シノ、ボルト達を連れていけ」
「……ああ」
「はあ!?ちょっ…シノ先生ッ放せって」
「おいおいどういうことだ…?」
「あの人は誰なんですか?」
「お前たちには関係のないことだ、行くぞ」
黙ったまま通用口前で足を止めている私とマギレ君の存在は、まだ気付かれていなさそうだった。
そわそわと身の振り方に困っているマギレ君の頭を撫で寄せる。
そうしながら瞳術を発動し、死角となっている壁の向こうへ眼を向けた。
郵便局の職場体験組。
それを守るように二歩前に進み出たナルト。
今しがた指示を受けて三人組を連れようとするシノの姿があった。
「……子を守れ、子は宝。宝は箱へ。お前もそう言うのか」
「オレは、何しに来たって聞いているんだってばよ
会話が出来ないところは対之一族の特徴ではないと思っていんだが……コウみたいなやつだな」
「はて。その名を気軽に口にするなとトワニの長に念押しされたはずでは?里を守る火影がそれではいけない」
三人組とシノが退室していった大扉に視線を移しながら、ハオリは歌うように紡ぐ。
せやな。
トワニの長こと私の義父は、里に隠してる母を、二度と発見させまいとしている。
だから隠している。だから名を残すなと言う。だから、記録するなと言う。
もし母を暴く者が出たならば。
その者を産んだ里は、一刻もせずにして消えるだろう。
眉ひとつ動かさず、根絶やすだろう。それくらい当然のようにする。義父は母に狂っている。
「……、」
「お気を付けなされ火影殿。この目はどこまででも届く。あれを覚えていられることそのものが慈悲なのだ。
記録に残すだけではなく、実は口にする度に、木ノ葉は少しだけ危機へと近づいていることを教えて差し上げよう」
「お前が来なけりゃ言わなかったってばよ」
「ならいいが」
ハオリはふいにナルトから目線と身体をそらし、
躍るように軽やかな足取りで集中治療室のガラス面に足を進めた。
よく見ておいで、と
ハオリは私達の方に振り返りながらガラスに手をついた。
それに対し、
誰かいるのか、とナルトが呟いたが、全く聞こえないように。
あるいはその言葉を肯定するようにハオリは続けた。
「いずれは二人ともこれくらい出来るようになってもらわねばな?」
言い終わるか否か。
ハオリに触れていたガラスが、まるで勢い良く引かれたカーテンのように裂けて脇に寄った。
駮のところで見た書物によれば、これはその身体……姉様特有の遁術、玻璃遁。
兄さんが菌をそうするように、姉様はガラスを意のままにする術を使うというのだ。
既存の材料を使った装飾を売る対之一族らしい術でもある。
ちなみにトワニは、陰遁チャクラで形成し陽遁でうまいこと個として独立させ術者との繋がりを断つことで、全くの無から装飾を作るのだが。