□8 ストーカー事件終了まで。[6p]
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ミツキ君~あまり委員長にそういう視線送ってると気付かれちゃうよ。
とか言わずに放課後。
保健室の先生に話を聞いて、病院へ向かった。
道中、火影室で爆破騒ぎがあったとかで里が若干バタついていた。
なんかあったっけ。
まあ関係ないやと病院到着。
部屋番号を聞いて、面会に向かった。
入室すれば、4人部屋で、うち3つのベッドが埋まっていた。
ついたてが使われていたので誰がどこにいるかは一目でわからなかったが、室内側と聞いていたので迷わず特定できた。
気配を探れば、窓際の二人は、起きているが横になっていて、片や一人は読書だろうか。
マギレ君は静かだが穏やかではない寝息を立てている。
スペースを覗けば、やはり眠っていた。
まああまり安らかそうではないね。
サイドにあった簡易な丸椅子を引き、腰かけた。
指の背でそのやつれた寝顔を撫でる。
苦しそうなツラ可愛い……だめ押ししたい……もっと痛がってる顔が見たい……しないけども。
手袋越しで手触りはわからないが、見ればごく一般的な少年の肌。
それなりに柔らかいのだろうな。ここに一線引いて血が滲んで垂れるところが見たい……しないけど。
チャクラの流れを確認すると、なるほど、
まるで枯れた水路にちょろちょろと流れる僅かな湧き水のような感じか。
途中で切り離したからだろう、命に別状はない。少ないが流れに滞りはない。
これならチャクラをぶち込むだけで治療完了できるが、患者は彼だけではない。
そんな治療をしたらチャクラの注ぎ手が疲弊して他の業務に支障が出る。
そういう建前での、自然回復待ちというところか。
理由は恐らく、事情聴取のための拘束だろう。
それでいい。
いいどころか、これだけチャクラが残っているなら運が良かった。
私だけの力で恩を売ることができる。
襟から服の下に手を突っ込み、首飾りを外して手裏剣ホルスターに仕舞う。
自分の後ろ髪を一束掴み、ぶちりと引きちぎった。
髪に多量のチャクラを溜めている。
兄に『自分の持ち物を認めそれをどう使うかのが重要』と。器量が悪いなりに工夫しろと言われた時からやっていることだ。
チャクラを練るという動作は人並みにできるが、気が散ったり点穴を壊されたりすれば人並みにできなくなる。
そういう時に手っ取り早く吸い上げて使えるよう、練った後のチャクラをこうして貯蔵しているというわけだ。
チャクラを貯蔵し維持する、という動作は幸運なことに苦手でも嫌いでもなく、人並みに慣れることができた。
何故わざわざ切り離したか?
私が手順通りにチャクラを注ごうとすると、何故だか、毒のようになる。
炎の針でできた川を、流し入れるみたいな。
流し入れた個所はよくて火傷、悪くてズタズタに裂かれ、そのまま熱を与えたプラスチックのように溶ける。
完全に無意識だ。
だから、負担なく注ぎ入れるには工夫が必要。
その工夫に集中するため、いったんチャクラタンクはチャクラタンクとして独立させるために切り離した。
料理するとき、あらかじめ分量を量っておいた材料を小分けして置いておくような感じだ。
そんな毛束をマギレ君の上に置く。注ぎ口である点穴の上に。
さていざ注ぎ入れ――――ようとしたところで。
私は解の印を結んだ。
本が、ばさりと床に落ちた音。
瞳術を発動し、ついたてなどを透視し状況を確認する。
幻術返しをできなかった窓際の患者二人が意識を失っている。
落ちたのは、その一人が今まさに読んでいた本か。
元々眠っていたマギレ君にも一応解を施したところで、変化が起きた。
窓のガラスが音もなく流動し、窓枠の四隅に寄った。
このチャクラは初めて感知する。
だが、知っている。
母の記憶にある、このチャクラは。
「良かったわ。この程度の幻術に易々と掛かるほど無才でははなかったみたいで」
窓枠に着地し、室内にトンと降り立った女性と、ついたて越しに、目が合った。
頬と首に、鮫の鰓を思わせる二本の線。
同じ瞳術。
「でも、印を結ばすに解も出来ないのね」
母にも父にも似ない顔の造形と髪の色。
母のものと同型の四角い眼鏡。
間違いない。
「トキ姉さん」
「あら」
この私を知ってるの、と歩みを進めた彼女が言う。
窓ガラスは、彼女が室内に降り立ってすぐにまた蠢き、元通りになっていた。
室内側ベッドの元へと到着し、迷いなくこちらを向いた。
直接目が合う。
黄色い瞳がゆるりと細まった。
「目は封じられてるのね。インドラの愛を」
「……写輪眼のことですか?」
「ええ。つらいと涙を流して苦しむ子らを憐れみ、元気付けるように背を撫でて力の一部を分け与える。そんな開眼条件のそれは、涼しい顔して愛情深いインドラらしいわ。
知り合いが泣いている時、危ない目に遭った時、真っ先に身を挺して守るのはいつも彼だった。照れ隠しの悪態が誤解を生むのだけれど、ククク」
「この目の封印解けませんか」
「今は無理ね。あなたの一番上の兄さんがされていた緩い封よりもずっと未知で硬すぎる。それを自力で振りほどくのはまず無理よ。誰にやられたの?」
「義父と母です」
「そう。あの二人がかりでやったとなるとかなり厄介ね。どういう仕組みになってるのかわかったもんじゃない」
「解明からですか…」
「ていうか随分な落ち着きようね。知られていたとはいえ一応初対面で私は未知の力を持つ不審者のつもりなのに」
「動揺して怖がってほしかったんですか?」
「ククッ…ここ数日しばらく見ていたけど…あなた、才は一番遠いけど、人格は母親に一番近いのね」
ストーカーをストーキングする私をストーキングしていたとな?
こちらが口をはさむ前に、彼女は続けてクックックッと笑った。
相手の返事を必要としない話し方。別にこちらの意見は求めていないということか。
そういう話し方の人は、返事を考えなくていいから好きだ。
「その髪、目眩ましもかけてないなんて。チャクラを目視したり感じたりする人にとってかなり目立つわよ」
「お恥ずかしい」
「その子にそのチャクラを注ぎ入れるのね?昨日鳥を捕まえて試した時みたいに」
「はい」
「練りながらもしくは髪から吸出しながらの注入もできないなんて不器用ね
心配だから見ててあげる」
「見られてると怖いんでいいです」
「あら駄目よ、見られながら行使できるだけの自信を持たないと」
「……」
腕を組み始めた彼女の前で仕方なくチャクラを注ぎ入れる操作を開始した。
緩く湯解いて、漏斗を手で押さえつつ、うんと細い…でも循環の要である点穴に流し入れる。