□8 ストーカー事件終了まで。[6p]
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後ろでざわついてるが、気にせず再度楽な体制に導く。
マギレ君はもうジタバタしなかった。手首どころか脇の下も痛いだろうしなあ。
だがその分、恨みがましく私を睨みつけた。
首を限界までひねって、やっと届いた片眼は、これ以上ないほどつり上がっている。
「……よくも、よくもボクを騙したな……ッ、応援するって言ったのに…ボクの気持ちは正しいって言ったじゃないかッ!」
「はき違えてたから、解説しに来たんだよ。隠蓑君」
正しいとは言ってないし。
「解説……?」
「人を愛することは素晴らしい、自分の気持ちに自信を持てと私は言った。応援するとも言った」
「そうだッ!だからボクは、……君が応援するって言うから!ボクは自分を信じられた!!ボクは強くなったッ!
スミレのためならボクは殺しだってなんだってできるッ!! たとえそれが、ボクを応援してくれた人であろうとも!」
「うん。隠蓑君は、自分の存在を認めてくれるスミレちゃんに、見て欲しかったんだよね。
見て欲しかったから、褒めて欲しかったから、見守りながら褒めることを愛だと悟った。
自分の欲しいものをプレゼントする理論。自分が尊ぶものを相手にも与えようと思う気持ちは、とっても素敵なことだよ」
「だったら…!」
飽きたので、今度は威圧するための体制に変えようかな。
バッと私の腰とマギレ君を浮かし、マギレ君の身体をその場でぐるり回転させて両腕を掴んで床に押し付けた。
「え?! あわ、わ、」
つまり、手首抑えつけて押し倒した姿勢。
突然の体勢に赤面していらっしゃるけど、それでも油断はしない。
バンザイされて逃げられないように、あとキックに対応できるよう気を配るの忘れない。
それから目を合わすときは片眼を凝視してやることで目力を増した視線を与える。ガン見してますよーって。
けれども怒ってるわけではないので、口角の上がった優しい声と表情を出す。
「人ってさ、食べ物の好き嫌いがあるように、愛され方にも好き嫌いがあるものだよ。
自分が好きと思ったことを差し上げるのは確かにいいことだよ。でもね、相手の気持ちを考えてみることを忘れちゃだめだよ」
「かっ考えるだけ無駄じゃないか……人の気持ちなんて、そんなの!」
「わからないからこそだよ。
違う人間なんだから、好きなことや嬉しい事は変わってくる。
それを探って、試行錯誤して、相手の求める愛はどんなものか考えて、実践する。
で、最初は空回りして当たり前。いきなり成功するほうが異常だよ。
人の心は難しい。それでも愛が欲しいのなら、自分の愛をただ押し付けるんじゃなくて、愛を向けてもらう努力をしないとさ。
相手と自分は違う。どうしても共感できないことがあったとしても、人間なら必ずそんなこともあるんだから、せめて理解してあげるっていう心構えも持つこと。
そうしていって、相手にとっての、強くて頼れる素敵な人になっていけばいい。少しずつね。
……たくさんフられないとつかめないかもしれない。相手が、そもそも愛を知らないからどうしたらいいかもわからないかもしれない。
それでも、隠蓑君には、まだたくさん時間があるんだから。諦めないで自分を磨いて、勝負し続ければいい」
「………」
「難しい?例えばチョウチョウちゃんのあのポテチ。甘くて変な味だってさ。
でもだからって王道の味だけ作ってたら、その味が苦手な人からの愛はずっと得られないまま。だから、愛を貰う為、振り向いてもらう為、改良したり挑戦したり、何度だって勝負するんだよ。
ただ、ポテチは不特定多数の人を相手しているから、万人に愛されるまで…まあ、人に好き嫌いがある限り勝負も挑戦も永遠に終わりは見えないけどね。
でも、隠蓑君は違う。スミレ委員長に振り向いて欲しいんでしょ?
買ってほしいと思う人はたった一人だけで、それが誰だかわかってるんだから幸運なことだよ。
だったら、どんな味が好きとかってインタビューなり、自分で色んな味に挑戦して玉砕覚悟で勝負してみるなり…、そうして感想を聞いて、改良を重ねて、スミレ委員長好みの、たった一つの味になればいい。
ゴール、見えてるでしょ?」
「……!」
「それを頑張れって、応援してるって私は言ったんだ。分かり辛くてごめんだけど、
ね。思い出してみて。
今日の隠蓑君は、確かに人が変わったように強くて、覚悟もあって、凄いよ。
……でも、今日の隠蓑君に、スミレ委員長は一度でも笑顔を向けてくれた?ありがとうって、口に出して言ったりした?」
「な……、ない。言ってない…」
「じゃあ、今日の隠蓑君じゃないね。
隠蓑君の目指す方向は、こっちじゃないね」
「…はい、」
「何よりも大事なことは、思いやりだよ。自分と相手を、ちゃんと客観的に見てあげて。迷惑そうなら、すぐに謝って、中止する事。
自分は、あっちが頼んでもいない事をやっているんだってこと、忘れちゃだめだよ。
例えば、頼んでもいないし呼んでもいない人に、突然好きでもない味のポテチ押し付けられて、お前のためにやったんだから感謝しろとか言って無理矢理食べさせておいて、見返り寄越せとか、嬉しいだろって勝手に自分の気持ち決められて詰め寄られたとして。
もし隠蓑君がそれを嬉しく思ったとしても――」
「あの、」
「ん?」
「ボクもそれは、迷惑だと…怖くて…気持ち、悪い…と、…思う」
「うん」
「そして、そ、…それは……今日の、……ボクだ」
「そうだよ。凄いね。ちゃんと自分の過ちを、認められたね」
「……ッ ぼ、ボク、は……なんて…ことを、」
「大丈夫。今日も勝負だったんだから。で、今、失敗を認めて、今と次、やるべきことを考える余地ができた。
偉いね。これでまた、前進できるね。」
「う…うぅ……ッ」
ああ、やっと鵺の気配が溶けた。
スミレちゃんに謝らないとなー。
マギレ君の上から退いて、その手を取って上半身だけ起こしてやれば、マギレ君の瞳から大粒の涙が次々とあふれ出てきた。
まあ、とりあえず泣くことはわかってたから用意してたハンドタオルを「あげる」つって渡した。
したらマギレ君は、かすれた震え声で礼を言おうとしてるのは伝わったが、言い終わらないうちについに堰がブチ切れたのか、大声をあげて泣き出した。
おーおー、子供だもんな、泣いてて恥ずかしくない歳のうちに泣いとけ泣いとけ。
いやあ、まっさか応援の一言がこんなふうに作用するとは誤算だったな。
まあいいか。厚待遇だって記憶は植え付けた。あともう少し好感度上げてから身を引けば、過去の待遇を取り戻したくて追いかけてくるし言いなりになってくれるだろう。
そしたらゲット完了だ。
さあて。
「チョウチョウちゃーん、怪我無いー?」
「……なーんか良いトコ取りされちゃった気がすっけどぉ……ま、ありがとね。あちしの言いたいこと、代わりに言ってくれて」
「號って……」
「ん?なんだいサラダちゃん あ、惚れ直してくれた!?いいよ!飛び込んでおいで!!」
「違うわよ!バカ!」