□7 ストーカー事件途中まで[6p] ※隣のクラス=普通科というのは考察推測です
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ガコンッと、自販機の取出し口に飲み物が落ちた音が場に響いた。
チョウチョウちゃんが壁に打ち付けた自販機の動作確認もかねてか、一本買ったようだ。
「しかし、誰が好きにしたってよ……お前、マジでやりすぎだぞ」
「うう……」
カシュッと、ステイオンタブを引きながら発せられたシカダイ君の言葉に、
マギレ君はモジモジと人差し指先をこすり合わせた。
「だ、だって、仕方ないじゃないか……。ぼ、ボクは……
どうしてもスミレさんと同じ空気を吸っていたかったんだぁ……!」
あっ好き。
って、思ったなあ。三次元で初見の時。
そんなこと言って愛らしく両拳を小さく振る姿とかもう。
好みのクレイジーサイコにはまだまだ届かないが、この歳でその思考に目覚めた有望さ。
それで君のこと覚えててた訳ですが。
「は、はわっ…!?」
とうのスミレちゃん。
キモかったらしく、鳥肌を立てて、近くに居たボルトの後ろに隠れてしまった。
「げぇ…マジかよ…」
そしてボルト筆頭にマギレ君の物言いに引く皆々様方。
私は心奪われてるけども。
「じ、じゃあもういいよね…理由も話したし…ボクはこれで…」
「だから良い訳ねえだろ!!」
めげずにすすすっと私とすれ違うように歩き出したマギレ君に、今度はボルトが飛び付き組み付いた。
うーん。
ボルトの全体重乗って上半身全体的に捻りあげられてんのにびくともしないマギレ君わりと根性あるよな。
てか力の入り辛い内股でチャクラも使ってないのにこの体幹の良さはわりと逸材なのでは。
とか考えてる間にも
「ねえ……アンタ……これはチャンスかもよ」
「え? え?」
「思いを伝える舞台が巡ってきたとも言えるってワケ。こうなったら今、告っちゃいな」
「えええっ!?」
と、話は進んでいく。
スミレちゃんも単純に、生まれて初めての告白に胸が高鳴ったか、脈ありな顔するし。
あんな顔されたらそらいけるかもしれないと思うわな。
結局乗せられてしまったマギレ君。
誠実にもスミレちゃんの正面へと真っ直ぐ立ち、そしてバッと手を差し出し、強く頭を下げた。
「ず……ず……ずっと、す……好きでした! つ、つ……付き合ってくださいっっっ!!」
「ごめんなさい!!」
そして速攻で振られるという。
彼女に伸べた手は握られることなく、失望に虚しく震え出した。
ここで取り込んで傀儡にするとかとっさに浮かばない時点で、自主的な復讐者とはあまりにも言い難いなぁスミレちゃん。
闇が深まって結果オーライとも言えるが、しかしこれが闇を深める意図ではなく、『その純粋な気持ちに応えるわけにはいかない。自分に恋愛など許されない。彼は自分を誤解している。自分には、彼に好かれる資格などない。それに號の手前…』という意図でもって頭を下げているからダメなんだ。
告白を真面目に受け止めて思案しなくていいし、なんで私を気にした。友くらい踏みつけろと。
やるべきことを成就させるためなら、心を閉じて笑いながらなんだってすればいいのに、しないんだなぁって。
つうかそんなことより
振られたショックにそのままゆらりと地べたに頽れるマギレ君くそかわいい。
「な……なんだよ、やれって言うからやったのに!
これなら、ずっと隠れていたままの方がよかった!」
わかる。
共感に頷きたいが、見られて変な注目食らいたくないので腕を組むだけに留めた。
見ているだけで、好きでいられるだけで満ち足りていたから、次の想像をするという発想すらなかった。
下手にハッキリ言われるより今のままでいい…って、子供の頃告白を見送ったことがある。
まあ。マギレ君はそういう意図で言ったんじゃなくて、ストレスを振り切るため、行動させたチョウチョウを攻撃したくて言っただけみたいだけど。
「一度勝負してみなきゃ先には進まないのよぉ?そして肝心なのはその後……あちしの言ってること、わかる?」
諭す口調。
悲劇の張本人かつ攻撃対象としてつっけんどんになっている状態で、その攻撃対象から悲絶への同調も謝罪もなく示された言葉を受け入れるなんて芸当、どんな素晴らしい説教であろうと普通は無理だろう。
マギレ君は、ハンマーでも打ち下したような怒鳴り声と共にチョウチョウちゃんの手を叩き払った。
「なんだよ、バカにして!」
そしてその勢いのまま、怒り交じりに泣き乱れた様な声を上げて走り去っていった。
足の遅い人は走行時に変な力み方して胸を張り過ぎたり、顎が上を向いてしまう傾向があるっつーけど、まさにそんな走り方。
いやもうそのどんくさいパタパタ走りがホント天使のようにかわいいから正しい走り方教えたくなくなるわ。
っとスミレちゃんこっち見てどうした。
と思ったのでこのまま帰路につき、スミレちゃんが一人別れる道に差し掛かったところで「私もこっちの方角に用事があるから」とスミレちゃんについていった。
二人きりになり周りの気配がなくなったところで、切り出してきたのはスミレちゃんの方だった。
「あの…マギレくんのことだけど…その…私、」
「今のマギレ君はキミの物だよ。私のことなんて気にせず、好きにやりなよ。折角闇を広げたんだから」
「……うん。 それから、あの、」
「ん?」
「接触しない方がいいって、警告してくれてありがとう。遅かったけど…私の代わりにつけ回されてくれるって…そういう申し出だったんだね」
「まあそうだねえ。気付くなんて鋭いねぇ。どういたしまして」
そういう解釈するとは思わなかったな
「それじゃあ私……彼のこと探してくるから、このあたりで!」
「うん、また明日」
引き返していくスミレちゃんを見送り、私も進路を大きく変え、裏山へと足を向けた。
チャクラ吸引はもう問題ない。
しかし問題は注入だ。
書物の手順通り出来ているはずなのだが……捕まえた虫や川魚で試して何匹ドロドロズタズタにしたことか。
負担が無いようチャクラをうまいこと渡すのが難しい。
たとえば、
ふにゃふにゃで持ち手用の窪みもなくキャップの固い2リットルペットボトルの中身を溢さず開封し、床に置かれた200ミリリットルペットボトルに溢さず注ぎ入れきるくらい。
首飾り使えば自動で相手になじむよう変換してくれるから、吸引ができた時点で、注入は首飾り使えばいいだけなので、注入できるようになる必要なんてないのだが。
でも練習する。
マダラの血を引いてるこの私が本気で取り組んでおいて、道具を使わないとチャクラ注入もできないだなんて。この事実は、消したい。消さないと。
手袋を外し、逆立ちで山道を登る。
石の欠片が包帯越しにかさぶたへ食い込んだ。また血が滲んだ。