□21 修学旅行編収束まで[10p]
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「ワーーーーッ!!!」
「わあああっ?!」
「突然どうした」
「いや別に」
はい。帰りのお船です。
「ちょっとね゛っ……ッマイハニーがっ、ンネ゛ッ……ッ!」
「全然『別に』って感じじゃないですけど……」
「誰だマイハニーって」
ギギギ……と歯を噛み締める顔芸を披露しながら拳を握っていれば、当然の如くツッコミいただきました。やったぜ。
「もしかしてサラダさんと何かあったんですか?」
「違う……サラダちゃんはサラダちゃん……ハニーちがう……」
どぅはーっと息を吐き出し、甲板の手すりに伏せた私の頭を二人がつついてきた。やめろ。
そんなお茶目さんみたいなことするような奴らだったかお前ら。
「號さんて本当……たまによくわからないですよね」
「そうだな。面白いからいいが」
「え、面白いんですか?」
「面白くないか?」
面白がられていたらしいです。知らんかった。
……まぁそれはそれとして。
私はよっこらせと顔を上げ、手すりを弾くようにして数歩下がった。
「というか気が付いたら両脇に居やがって何しに来たお前ら?」
「え?いえ、特には……」
「むしろ暇だから来たんだが」
「へ?なんで?」
そう聞かれた二人は顔を見合わせ、揃って首を傾げた。
「なんでと言われましても……」
「そういうものだと思っていたのだが」
「いやごめん意味わからん。なんだ?私のこと大好きか?」
「普通に大好きだが」
「まあ、そうですね。友人として」
「ああ」
なにがそういうものなのだかサッパリなんだが。
そして冗談のつもりで言った言葉だったが二人とも真顔で何を言うとる。嘘やんこんなに好かれてたんですか私……。
「そもそも俺はお前が近くに居れば安心だからな」
「語弊やめろや」
「燈夜さんはそうですよね。物理的に」
「ああ。物を壊す前に止めてもらえるという安心感は大きい」
「私は疲れるけどな」
「すまないとは思っている。だから何か手伝えることがあれば何でも言ってくれ」
「何でもって言うな軽々しく」
「お前だから言うのだが」
「真正面からのストレートパンチやめろ。マギレ君たすけてこいつおかしい」
「知りませんよ……」
「俺は何か変なことを言ったか?」
「あざといんじゃ貴様はァ!!くそっ天然め!」
頭を抱えて叫ぶが、やはり理解出来ないと言うようにコテンと首を傾けられるだけだった。
その仕草かわいいんだよクソが。
愛着沸いちゃうだろうが!原作キャラじゃないイレギュラーの癖に!!
「まあいいや。とりあえず私ちょっと一人で行きたいところあるから、ついてくんなよ」
「何処行くんだ?」
「いや、一人になりたいつってんのに言うわけあるか」
「はあ。……それじゃあ、また後で」
「んー」
てなわけで離脱してきましたるは立ち入り禁止区域の通路です。
はい。
なんやミツキと水月が話し込んでるとこ突撃しに来たというわけですね。
甲板で瞳術使って水月探してたら見つけてさ。
「――ふうん。じゃあやっぱり、燈夜と重吾には血の繋がりがあるかもしれないんだね……」
「そー。まァ、お前が採取したっていう?この髪の毛を無事に持ち帰って、調べてみるまで?確証はないけどさ」
「ほんでなんか燈夜の話してるし」
「!?」
「!」
てこてこ近寄ってみれば、二人同時にバッと振り向いてみせた。
おう、いい反応するじゃないか。
「……號」
「やあ。ミツキ。そしてハニー」
にーっと笑いながら手を振ってみせれば、水月は「うげぇっ……」と嫌そうな声を出してみせた。
対照的にミツキはややあって見開いていた目をいつもの温度に戻すと、何を思ったか静かに歩み寄ってきた。
お、なになに。
と思ったら攻撃してきた。
「ッ!……っぶねーぇな」
「……ふうん」
唐突に足払いを掛けてきたので咄嵯に跳躍すれば、逃げ場のないほんの僅かな滞空時間を狙って、貫手が鳩尾を刺しに来た。ので、接触スレスレを狙ってガッチリ掴み止め着地した。
「どうしたよ急にやめてよなんだよ子蛇ちゃん」
そして手を離せば、ミツキは全く悪びれなく、ひっこめた手を振って不満げに言った。
「やっぱり手加減するんだね」
「いや急に何」
「ねえ、水月を倒したって本当?」
話聞かねえなぁ……。
かしかし頭をかいて水月に目を向ける。
「お口軽いねハニー。わざとなの?」
「……」
「またそんな露骨に目逸らしても可愛いだけなんだよなぁエッヘッヘッヘ……」
「うっうわっ、寄るな!」
「へえ、本当なんだ」
お手々ワキワキしながら水月にじりじりと迫れば、水月は顔を青ざめさせつつ距離を取る。これがまた可愛いんだよ。
そしてそんな私達を眺めるミスターマイペースことミツキである。
「ケーェッへっへっへ……水月悪い子でちゅねぇ……そんなにお仕置きが欲しいんでちゅかぁ……?」
「いやミツキはノーカンでしょ!?牛頭天王の一件で鉛の分身と戦ったって聞いたんだけどォ!?」
「昔の話だそれは」
「いやいやいや!!」
「ええいうるせえな人が来たらどうすんだよそんなにシタ入れてキスして欲しいんか」
「っ……!」
そんな大げさに口を両手で塞いでブンブンと首を横に振るから可愛いんだよお前は……。
「ねえ水月。そんな露骨に反応するから號が面白がるんじゃないかな」
あっおい何余計な事言ってんだこの子蛇ちゃん。
やめんか。
「……そうかなぁ」
「いや、マグロならそれはそれでスケベなお胸をペロリシャスするだけですけど」
「こんなこと言ってるんだけど」
「マグロ?」
「無反応」
「ふーん。残念だったね水月」
「そんで簡単に見放すんだもんな他人事だと思ってさ……!」
ハーッと水月が肩を落とす。ので、その隙に私は無言で助走をつけた。
「フンはっ」
「ぐェっ?!!」
そして彼の腹部にガッシーンとセミした。
あぁー水月のかほり……スリスリと頬を擦り付ければ、水月は無言で引っ張ったり殴ったりしてきた。
が、私はビクともせずだいしゅきホールドを継続し続けるものだから、やがてドクソドデカ溜め息とともに諦められた。
水化しようとしなかったのはえらいぞ。やはり電撃調教の賜物である。
一通り堪能できたので、私はプハッと水月に埋めていた顔を横にずらした。
「それで、水月に少し聞きたいことがあるんだけど」
「……何?」
「私の大好きな栗霰串丸のBMIて驚きの17.4なんだよね……しぬわ」
「はい?」
「それでも私は……私の大好きな栗霰串丸がっ……ッ好きだから……!!」
「ごめん、なんて?」
「栗霰串丸知ってるでしょ?縫い針の」
「はあ……随分懐かしい名前だね」
「好きなのよ。個人情報物質欲しいくらいには」
「……いや、待って。ちょっと嫌な予感してきた」
ダラッと冷や汗かき始めた水月、察しが良いな。かしこい。
愛い奴め、と私はスリスリ頬擦りをしながら言葉を続けた。
「なあン水月ゥ、」
「……ハイ」
背後のミツキきょとんとしてるが無視して私は本題に入ることにする。
「私の大好きな栗霰串丸の遺伝子って大蛇丸トコまだ残りあるう?血なら最高なんだけど?」
「…参考までに聞くけど、なんで?」
「いやぁ、いつかマッマに会えたら頼んで作ってもらおうと思って」
「何を」
「私との子供」
「イヤーーーーっ!!!言うと思った!その狂った倫理観どうにかして!!これだから対之は!!」
「失敬な。私は腹の中に赤ん坊入れるつもりはないぞ。外だ外」
「ツッコミどころあり過ぎて怖いんだけど!」
ゾワゾワと水月が鳥肌を立てる感覚が私にまで伝わってきておもしれぇの。
「どういうこと?」
そして首を傾げるミツキ。
「まあ『血を寄越せ』がプロポーズな一族ってことですね」
「そうじゃなくて、お腹の外ってどういうこと?その技術が対之にあるなんて聞いたこともないけど」
「あら律儀に拾いよった。まあ対之にはない技術だね。私のママ上の独自技術ゾ」
「あの人の技術とはまた別の……?」
「大蛇丸の技術とはまた別の。あ、私は違うよ?ごめんだけど」
まあ人造人間のミツキ君がそれに反応するのもおかしくはないか…。
彼は数秒ほど何か考える仕草をした後、再び口を開いた。
「…身体の外でってことは、もしその技術を使えば、今すぐボクと號の子供を作ることが出来るってこと?」
「ヘァ?!何聞いてんのォ!?」
「出来るけど。爆弾発言するなー」
水月びっくりしちゃってるじゃん。
このミスターマイペースはキョトンとして首を傾げる。
「何って。子供って、好き合う男女の間で作るものって聞いたからだけど」
「!?」
「いや草。わざとかお前?」
「?」
「まあいいか。
とにかく作ろうと思えば誰とでも作れるよ。血さえあれば性別も年齢も健康状態も関係ないし」
「そうなんだ」
「ウン。まあ。つっても失踪中の我がマミー捕まえて気に入られて全面協力してもらわないと無理だけど」
「ねえ待って、なんか話がおかしな方向に進んでない?」
「いやだなぁ、たとえ話じゃないかハニー」
「……まあ仮に君達がデキたとしても、ボクには関係ないしどうでもいいけどさぁ……」
「デキてないです」
なに言ってだコイツ。
お宅が作った天然記念物でしょうが。ミツキをちゃんと教育しなかったのはそちらやんけ。
「ままええわ。とにかく頼んだよ水月。私の大好きな栗霰串丸の遺伝子、残ってるか見てきてね。見つかれば良い感じに保存しておいて」
「……」
「あれ、嫌なの?私の言うことが聞けないのかいハニー?悲しいなぁ。ハニーにお仕置きしなきゃいけないなんて……」
水月を抱きしめる力をギリギリと強めて、パチパチと発電音を聞かせてやる。
「ッ、分かった!わかったってば!……調べてくるよ。これでいいんでしょ!?」
「ありがとハニー」
「もうヤダ……この暴君」
力を弱めてやれば、水月は疲れ切ったようにガックリと肩を落とした。
そんな私達をミツキは不思議そうに見つめて、首を傾げた。
「どうしてボクのことは追い払うのに、水月のことは追いかけるの?號」
「ん?そういう好きの種類だからだよ」
「ふーん?」
ミツキは納得したようなしないような声音で相槌を打った。
だが聞き返しては来なかったので、解説する必要もないだろう。
「よっと」
だいしゅきホールドの姿勢からピョイと飛び退いて水月を解放してやった。
「とりあえず伝えたいことはそれだけ。特に期限は設けないけど、よろしくね水月」
離れた瞬間全力で逃げ出そうとした水月の腕をガッチリ捕獲しつつ、私は笑顔で言った。
「……くっ……どうせ、拒否権はないんだろ?」
「あっ今のいい。くっ殺みたいで滾ってきた」
「くっ殺って何ぃ?!」
「アッハッハ!」
そんなわけで、私は無事に水月への用事を済ませることが出来たのだった。
え?正気かって?
そもそもナガレ姉さんに血を残すなって言われただろって?
ハハハ、御冗談を。