□21 修学旅行編収束まで[10p]
ドリーム設定
□登場人物名(25文字)□このブックはドリーム機能を使用しています。
名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝。
「おーい。號ー?」
「ッ!!」
「きゃっ!?」
「だから急に目ぇカッ開くなってば…」
「…っあぁ。ごめんごめん、おはよう」
「おはよ。全くもー、心臓に悪い…」
たんぽぽちゃんとあひるちゃんが起こしてくれた。
「起こしてくれてありがとう」
「そりゃまあ…私達のが後に寝たってのにずっと寝てるんだもん」
「アハハ。よっぽどはしゃいで疲れちゃったみたい」
「ていうか、起こさないと起きないくせに無茶苦茶寝覚め良いんだねー」
「不思議だねぇ。アレ…にとらちゃんは?」
「朝風呂。温泉の入り納めだってさ」
「ああ、気に入ってたもんねぇ」
目をこする拍子に瞳術で確認してみれば確かににとらちゃんは風呂場にいた。
ていうか温泉湯舟にちんまり浸かるにとらちゃん可愛いな。
「ってか外赤っ!?」
目を開けて、ふと視界に入った窓の外は、朝焼けに染まる朝霧で真っ赤っかだった。
「ねー。超すごいよね、イチゴみたい」
「あたしは一面の紅葉とか、満開のシャクナゲってイメージに見えるなー」
そんであひるちゃんとたんぽぽちゃんの例えが可愛いなおい。
ここは血霧ではなくお花と苺霧の里だった…?
まあおいといて。
三人に後れを取りつつ、私も身支度を済ませ、荷物をまとめにかかった。
朝食、集合、少しの自由時間のち、帰りの客船へとゾロゾロ向かう。
チョウチョウちゃんが荷物まとめるのに手間取っているらしく、なんとなく手伝いに行った。
「ふんんぬ!!よしっ!入り切ったし!」
「こっちも押し込んだよ。あとそれも持てそうだから私持つよ」
「サンキュー號!やっぱ持つべきものは友だわ!」
というわけでちょっと出遅れはしたものの、問題なく乗船できた。
港には、見送りのため、水影に霧のアカデミー生やその教員らしき忍などが集まっていた。
ふと見覚えある顔を見かけたので、目を合わせて手を振れば、気付いたように手を振り返してくれた。
いやほら、先日お話ししたアカデミー生のモブ君。
裏を返せば、彼以外の見知った顔は見当たらない。
かぐら君や、釣糸君のことぞ。
まあかぐら君はこの港から見える遠くの崖に居るし、釣糸君はそこの建物の裏に居るんだけど。
そしてホテルを出る時にはすでに出しておいた私の鉛分身が、すでに忍び寄っているところだ。
まず建物の裏で、一人涙ながらこぶしを握ってる釣糸君。
「ぐすっ……どの面下げてって感じっスけど……オレ、今回のこと、一生忘れねえっス……っ!!」
「そりゃ嬉しいっス」
「へ。……どわあああっ!?」
さりげなーく真横から声かければ、面白いほど反応してくれた100点満点。
「あっあっあっ姉御ぉ!?なんで……」
「あー、うん本体はちゃんと乗船してるよ。私は影分身」
建物に背を預けて腕組む私を震えながら指差す釣糸君かわいいなーコレ。
「そんでもって親愛なる弟分を無視して帰れるわけないじゃんよ。お見送り来てくれてありがとうね」
「いっいえそんな!!」
「ふふ」
「っあ!そうだ……、姉御っ聞いてくださいYO!オレ…オレ……なんと言っていいか……、本当にありがとうございましたっ…!!」
「うん?」
「っ屍澄真さんにやられたと思ってたオレの仲間達……実は皆、生きてたんス!後遺症もないって……!!オレ、嬉しくて……っ!しかも、あの時空間忍術の姐さんが言うには……姉御の分身があいつらを守ってくれてたんだって……!!!」
「おおう……なんでバラすかなぁあの人……」
「マジにマジなんすねぇええっ姉御ぉおおっ!!!??」
釣糸君は手を組んで、どばーーっとギャグみたいに涙を流しまくっていた。
お、おう、おちつけ。
「いいよ気にしなくて……感謝されるためにやったわけじゃないし……勝手にやったことだから」
「そんな、本当に何の見返りもなくっ……!どこまで忍者の鏡なんすかあぁぁっ!!オレ、オレ……今までの自分が恥ずかしいっス……!」
大げさだなあ…。悪い気はしないが。
「だからオレ……、これからは心を入れ替えて、イチから始めよう思うんス!!」
「あ、そっかぁ」
このテンプレくんも見納めかぁ。
どうせ彼も捨てキャラだろうし。ちょっとくらいちょっかい出しても、バチは当たらんよね。うん。
「ねえ、そういえば釣糸君」
「はい!なんスか?」
「君の名前、漢字でどう書くの?」
「?、えっと、虫の蜂に谷で蜂谷、釣り糸って書いて釣糸っスけど」
「なるほどね」
知ってるけど。
「?」
首を傾げる釣糸君に、私はニッコリ笑って影分身の印を結んだ。
ボボンと二体現れた影分身は即座に変化の印を結び、先端に鉤の付いたワイヤーと刺突特化の細身の剣へと姿を変えた。
「釣糸君の剣術なんだけど」
「!、はっはい!!」
言霊は結構重要だ。この世界においては。
「先日からずっと思ってたんだけど、君の身体さばき、『斬る』動作に向いてないよ」
「えっ」
「どちらかというと、『突き刺す』動作向きの動きをしていた気がするんだよね。使う武器も、こういう刺突特化のものに変えたほうがいいと思う。それこそ、長刀縫い針みたいな形のさ」
そう言って私は細身の剣を釣糸君に差し出した。
彼は戸惑いつつも受け取った。
「突き……でもオレ、アカデミーで習った基本剣術しかできねえんスけど……」
「そうなの?なら、かぐら君や水影様とか、もし上司がいるならそっちにあたってみたら?いい師匠見つかるかもよ」
「で、でもオレ……素行が悪かったし……」
「変わりたいんでしょ?なら多少の苦労はしなきゃ。変化に恥と苦はつきものだし」
「!」
「そりゃ、多少の勇気はいるかもしれないけど。もうアカデミー生じゃないんだから、先生は自分の力で探すんだよ」
「……はい。…っス、そうっスよね。オレ、姉御を信じるっス!!」
釣糸君は受け取った剣をシュッシュッと素人のように構えて突く動作をして見せながら笑った。
すげー素直。微笑ましくなりつつ、続けて私はワイヤーを持ち上げた。
「それからワイヤーについても」
「!」
それを聞くと釣糸君はすぐに姿勢を正してこちらを見た。
うん。やりやすい。
「釣糸君の性質変化は水だったね」
「っス」
「これは一例なんだけど」
私はワイヤーに水の性質を流した。するとワイヤーに水の膜が現れ始める。
「こう」
その水を操ることで、ワイヤーは自律的な動きをし始めた。また、地面に向けて水を噴出し、それはウォーターカッターのように地面を切り裂いた。
「!!?」
目を白黒させる釣糸君を後目に、私は水の性質変化をごく微量に減らした。水の膜が消える。
「もしくはこう」
そのワイヤーの鉤側を向こうに見える海の水面へと投げた。
ポチャンとその鉤が水中に入ったところで、そこからワイヤーを伝って海水をポンプのようにくみ上げた。ドボボッとワイヤーを伝って来た海水を見て釣糸君は驚愕の声を上げた。
「自在に動かしたり、水の刃を縦横無尽に発したり、陸地から遠方の水を手繰り寄せたり。ワイヤーに水の性質変化を合わせればこんなこともできるかもしれない」
私はワイヤーを引き寄せるついでに、海に浮かぶ空き缶ゴミを引っ掛け、それを道端のダストボックスに入れて見せた。
釣糸君は目を奪われたようにそれを凝視する。
やがて私の手の中に戻ったワイヤーを見つめ、バッと顔を上げた。
「あっあっあっ姉御!!今のどっどっどうやって……印もなく……!?」
「傀儡使いみたいに形態変化もちょっと使ってるだけだよ」
「……っ!!でっ弟子にしてください姉御!」
「ダメー」
「そんな……!!」
「あくまで一例って言ったでしょ。私が言いたいのは、こうやって武器に性質変化や形態変化とかの工夫を施すとより戦略の幅は広がるよってこと。術の開発とかしてもいいし」
「……ち、ちょっとオレ一人にはレベルが高すぎる気がするかなーって……」
「アハハ。脅かしすぎたね」
流石に尻込みするか。
「何も、これができるようになれなんて言わないよ」
剣とワイヤーを消しながら笑えば、釣糸君は「へっ?」と虚をつかれたような顔をした。
「あくまで参考にしてくれればそれでいいから」
「というと……」
「これと同等のことが出来るまで頑張ってもいいし、それが何年かかろうと構わない。もちろん他の道を見つけるなり、諦めてもいいってこと」
ポンッと釣糸君の肩に手を置く。
「これは私のただのお節介なんだから。目標がなければ参考にすればいいし、余計なお世話だったなら気にしないで」
ブンブンと釣糸君は首を横に振った。嬉しいねぇ。
「アハハ、ありがとう」
「いえそんな!そこまでお気遣いいただけて……オレ、何と言っていいか……ッそれに、姉御のその強さ……いったい、」
「んー。特別な存在とか、天才なんて言わないでね。厳しい師匠のもと、毎日血反吐を吐いて必死に積み上げてきただけなんだから」
「!!」
手袋を取って苦笑すれば、釣糸君はバッと頭を90度下げた。
「す、スミマセン!オレ…無神経でした!!」
いや正直者か。
「アハハいいのいいの。気楽に気楽に」
手袋を付け直し、包帯まみれの手を隠しながら笑えば、釣糸君は「うう……どこまでご立派なんスかぁ……」と顔を覆った。面白いなこいつ。
私はそんな彼を見ながら、手の中に術式を込めた鉛塊と、それを包む小さな巾着を生成した。
陰遁で生成し、陽遁でそれの存在を確定させ、切り離す。
「釣糸君」
たった今トワニの技術で生成したそれを差し出せば、釣糸君は涙をこすりながら首を傾げた。
「お守り。鉛製で身体に悪いからむやみやたらと取り出さないこと。どうしても困ったときはこの中の鉛玉に血を垂らして、私を呼んで。きっと力になるから」
釣糸君の手を取り、巾着を握らせる。
「……」
きょとんとしつつも、ちゃんと受け取ってくれた釣糸君の手を両手で包んで見上げた。
「かぐら君と仲良くね。彼、怒ってなんていないと思うから。……彼を支えてあげて。そうすれば、きっと彼も君を支えてくれるから」
釣糸君は、コクッと頷いてくれた。
「ありがとう。……いろいろ言ったけど、武器なんて無数にあるんだし、試行錯誤しながら自分に合う得物を見つけてくれればそれでいいからね。急ぎでもないし。迷ったときは、釣りでもして、のんびり考えればいいさ」
「…釣りでもして」
「そ。釣りでもして」
ニッコリと彼の手を放す。
「それじゃ。元気でね、釣糸君」
「! え、あ 待っ」
シュン、と、私の鉛分身はそこで瞬身を用いて離脱した。
さて、今後の彼に期待である。