□21 修学旅行編収束まで[10p]
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視界が高温の白に染まる。
熱水を浴びせられたような、火傷しそうな熱風が吹き付ける。
「……」
面積の広いうちは装束と、マダラ譲りの豊かな髪が私の肌を高熱から守る。
顔面の露出部も、咄嗟に袖口で顔を覆っていたので無事だ。広い袖口のおかげで全て覆えた。
ナガレ姉さんは、全身余すことなく形態変化を纏うことで熱から身を守っている。
そして向かってくる。
私は身体を動かすではなく、新たな炎塊で彼女を迎え撃った。
彼女は形態変化を纏う拳でそれを迎え撃つ。数瞬の力比べ後、それらは叩き潰された。
数瞬もあれば私は体勢を整えて次の一手へ移行できた。
まずは両手の武器を身体に封印し直す。
水蒸気による目隠し(ブラインド)の中、私は真鍮液となり、地面を穿った。
細長いドリルの要領で地面を掘り進み――海に面する崖の中腹あたりまで退却した。
ボコ、と貫通した岩場から飛び出た真鍮液が再び人型に戻る頃には。
すでに崖から飛び降り追ってきていた姉さんが私の目前で、縄状となった水塊を発射していた。
捕らわれる前に、炎塊の鞭で迎え撃つ。
再び蒸気が上がる。
着地した水面からナガレ姉さんを見上げる。
その肌に纏ったチャクラ形態変化もまた自在、ゆえに彼女は自適なる空中浮遊と肉体強化を成していた。おそらく海中も同じ要領なのだろう。
あれだけ全身ピッタリ覆っておいて、よくも勢い余って自分を潰さないものだ。
忍術というセミオート操作ではない、全手動マニュアル操作で、よくそんな器用なことが出来るな。防護だけでもかなり大変なのに。
という感想が脳裏を掠めている間にも、水塊と炎塊は様々な形をとって数を増やす。
彼女を上回るべく量と規模を広げ続け、彼女もそれに追従する。
先ほどと比べ物にならない規模の水蒸気と蒸発音が鼓膜と肌を灼く。
服と髪では限界を感じ、私は形態変化を卵の殻のように展開することで、灼熱から身を守った。
地上の様子が気に掛かるが、それどころではない。
攻防は、一分ほど続いた。
「……なんというチャクラ量だ。化け物め」
「お互いさまでは?」
ぜ、とようやく疲労を見せ始めた姉さんと久しぶりに言葉を交わす。
チャクラ残量の底が見えたのか、やっと心を探る程度の余裕が消えたようだ。
「私は心を読まれるのが嫌いなんです。分かってくださいますか、姉さん」
「……流石に、気付いてましたか」
姉であることを。と、ナガレ姉さんが煩わしげに眼を細める。
「あなたが私を妹として認識したんじゃないですか。最初に」
「ちゃんと読めていたのですね。…魔性の子は、心を読む才が欠落するものと聞いていたもので」
「ああ…」
たしかにマダラの子である義父の母は、夫に先立たれてから数年は義父を育てていたはずなのに、義父がどうなるか考えずに死んだわけだが。
「それに、おおかた…判断材料はそれだけじゃないのでしょう?」
「そうですね、ナガレ姉さん」
名乗ってない彼女の名を口にすることで肯定する。
まあ、トキ姉様かハオリさんどちらであろうとも交友がある以上予備知識あろうとなんの不思議でもない。
「…もちろん、私達を繋ぐ血は、姉さんにとって忌まわしきものであるのでしょうけども」
「…ええ。忌まわしい血です」
「見逃してくださいますか?」
「何故?」
ああ、嬉しいなぁ。何故?とは。心を読んでいない証拠だ
瞳は未だ黄を宿してはいるが。
「言ったはずです。私は読まれるのが嫌いなのだと。それから、あなたの存在は目立ちます。私の平穏のためにも、今後不用意に関わらないでいただきたい」
「……」
「それに、私もあの人に確固として近しいかと言われればそうでもない。あの人が切ろうと思えば簡単に切り捨て離せるトカゲのしっぽだ」
「ならば、知る情報を頂いても問題ないのでは?」
「逆に言えば、知っても意味がないのでは?」
「それはこちらで判断します」
「困りましたねぇ。私とて今くだらないことであの便利な人を手放すわけにはいかないのですよ」
「あの亡霊はあなたごときに使われるタマではありませんよ」
「フッ…、警告ですか。お優しい姉さんだ」
なんて会話に興じていたところ――。
「時間切れよ、長いわ。あなた達」
不意に、たった今ウワサしていた彼女が現れた。
これは、駮を介さない時空間移動か。マーキングは…今しがたの会話に気取られた隙に飛んできた、無色透明の勾玉。
「!」
「うお」
人仙術を極めた者が携える資格証のようなものであり、六道で言うところの求道玉。
かつ、彼女がその身に施しているのと同じ、実際の視界圏内に入らない限りあらゆる瞳術に写らないという――彼女がこの瞳術から逃れ続けていられる所以でもある――仙術がかけられている。
「亡霊…ッ!!」
トキ姉様の身体――ハオリの姿にナガレ姉さんは今日一番の、明確な敵意を顕わにした。
揺らぐ。
空間と、水。
「姉さんを、返せッ!」
貴様が現れるまではすべて順調、穏やかな生活は続いていたんだ!と、叫ぶ声が、気付けば遠くから聞こえていた。
「…! おあっ!?」
というより、私が動かされたのだ。
ハオリの時空間忍術によって。
「號さん!!」
「號!」
視界にはマギレ君と、私に駆け寄るサラダちゃん。
そして私の肩に手を置くのは、ハオリ…の仙法影分身だろう。崖下からはいまだ戦闘音が聞こえる。
ハオリの手が離れるのと入れ替わるようにして、駆け寄ってきたサラダちゃんがガッと私の両二の腕を掴んできた。
「っ……よかった…!」
私の存在を確かめて、ハーッと息を吐いてそのまま俯くサラダちゃんに、おお、と空返事を送る。
場を見渡せば、どこもかしこも心配そうな顔。
傍らのハオリを見上げれば、彼女は私を掴むサラダちゃんの肩をポンポンと叩いて、遠回しに 無問題だから放せ の意を伝えていた。
気付いたサラダちゃんは大人しく私を解放した。
「話はあとでも明日でも。とにかく、あなた達が宿泊しているホテルの屋上に送るわ」
ハオリがそう言って指を鳴らせば、空間にズズズと穴が開く。
直系1mほどの穴から見える先は、彼女の言う通りホテルの屋上で間違いなさそうに見えた。
「このレベルの時空間忍術を、こうも易々と…」
長十郎が呟く。
様子を見るにハオリはまずこちらの面子に話しを通し、助力了承済みのようだ。
「人払いはしておいてあるから、安心して飛び込みなさい」
そういったハオリの言葉に従い、まずは燈夜が頷いて飛び込んだ。
向こうに着地した様子が見え、そしてこちらに振り返り大丈夫だと頷き、後続を手招いた。
「お世話になりました」
マギレ君が続く。
「……」
イワベエ君も会釈だけして、続く。
「行こう、ボルト」
「お、おう。…またな、かぐら!」
「…!」
ミツキに促されてボルトも向こうへ。ミツキもすぐに続いた。
かぐら君がその背中を見送る。
「ほら、號。ボケッとしてないで、あんたも」
「ん、ああ。…ラストお騒がせしました水影様」
「…いえ。とんでもありません。鮫肌も取り返していただけましたし」
「あー」
手放させただけなのに、取り返したことになってんの?
「號!」
「あっはいはいわかったってサラダちゃーん!」
サラダちゃんに袖を引かれ急かされたので切り上げる。
「まぁ、色々とお世話になりましたってことで」
ヒラと私は手を振る。
「あの、ありがとうございました。お姉さん、それに、水影様も」
サラダちゃんもまた、最後に協力者たちへの感謝を口にする。
「いいのよ」
「とんでもありません」
帰ってきた言葉を会釈で受け取り、そしてサラダちゃんも時空間忍術へ続いた。
そんで向こうに着地するなり振り返ってすぐ、私を呼んでいる。
――戦闘音は遠い。
本体のハオリが、ナガレ姉さんを海の向こうまで引き取ってくれたのだろう。
「釣糸君も、色々ありがとな」
最後、後ろの方で大人しくしてた釣糸君に声をかける。
「へっ!?いっいえ!オレなんてそんな…」
「フフッ…、またね」
「! ウッス!!お勤めご苦労様でしたっ!」
「ふはっ…! おう」
突然声をかけられた戸惑いと期待を裏切らない時代錯誤っぷりに笑いを誘われつつ…。
私も、ハオリの時空間忍術へと飛び込んだのだった。