□21 修学旅行編収束まで[10p]
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つかナガレ姉さんなんだあの姿あれ!?
鬼鮫にソックリだってばよ!!
いやほら私の記憶って私を産んだ時点の母の記憶だから…赤子の姿しか知らなかったわけで…。
だから知ってるのはチャクラくらいで、青肌の女の子くらいの認識だったのに…それがこんな…あっあまりにも、あまりにも……
トキ姉様が似ていないのに対してこっちは似すぎだろッ!!?
違うところといえば髪が長めなところと目が吊っていることくらいか?あと黒目。だがそれも瞳術の黄に染まれば遠巻きには鬼鮫と同じ色になるし。
そんな姉さんは、こっちの反応など丸無視な様子だ。
鮫肌を見降ろしておそらくこう、心中で呟いているのだろう。
『父の刀か…』などと。
てか何しに来たんだろうあの人。
「ん?」
後ろに居た長十郎の水分身が私の肩を掴んだ。
分身だからかばう必要もないのに、紳士な長十郎は私を下がらせるように引き寄せた。
「やはり…、大人しすぎる」
その傍ら、本体の長十郎はといえば独り言のようにそう述べていた。
…うん。わかるよ。
鮫肌の様子があまりにも大人しいのだ。
着地と共に踏み止められた際、咄嗟に伸ばした棘も、既に仕舞われている。
もし、今もなお彼女の周りに浮遊する水塊を警戒しているにしても…、一度として追撃していないのは流石に妙だった。
鮫肌は、そこまで慎重な性格ではないはずだ。
「ギ……ギギィ」
「……なるほど。器用なことですね」
やがて姉さんは、鮫肌に向けてそのように言ちた。
「私と父のチャクラのみを選り分けて喰うとは…」
まさにそれは、鮫肌が大人しくしている理由だった。
「今の声…!?」
「あいつ、女か!?」
かぐらとボルトが声を上げた。
他の面々も口こそつぐんでいるものの同じ気持ちのようだ。
失敬なやっちゃな。…いや、気持ちはわかるけど。
「ギギ…」
鮫肌はなんだか懐かしむ?ような?感じ?で身を震わせていた。
おそらく、姉さんから摂取した鬼鮫のチャクラが嬉しいのだろう。何度でも言うが、うちの一族の子は、親のチャクラをそっくりそのまま受け継ぐ性質であるからして。
シンから教えてもらった新事実として、父母本人三つのチャクラがまだらに入り組んでいることが分かったりしたね。
そういや…選り分けるとか何とかで思い出したが、鮫肌は母のチャクラが嫌いだったな。
チャクラ流してみたら嫌がって棘出されてた記憶がある。
で、その合いの子である姉さんのチャクラはといえば……鮫肌的にオッケーらしかった。
その証拠に。
いつの間にか掬うように柄を掴まれ、持ち上げられていた鮫肌は、何の抵抗もなく落ち着いている。
逆立たせていた棘や大口をすっかり収めて、布に巻かれていた時と同じシルエットに戻ってまでいたのだ。
「……」
姉さんはそれを確かめるように、手の中でパシパシと左右に投げ持ち替えてから、くるりと逆手に持った。
彼女は、鮫肌に認められた。
明らかだった。
その光景に、長十郎が息を呑む。
かぐらがヒラメカレイを握りしめる。
私は棒立ち。
イヤ…どれだけ気に入られていようが、彼女は鮫肌の主人にはならないだろうし。
関与と注目を良しとしない、対之一族の人間ならば。
鮫肌を片手にした姉さんの瞳が黄に光る。
首を回すことなく、瞳術で辺りを確認した姉さんは、やがての屍澄真の元へと歩き出した。
「そこまでです!」
長十郎の声に、姉さんは静かに足を止めた。
「あなたは…一体…」
月並みな質問に、彼女はフーと口を閉じたまま長く息を吐いた。
「……世間話なら他をあたっていただけますか?」
「なっ…!」
そうして再び彼女は屍澄真の方へと歩を進めた。
長十郎は子供達から距離を開けるわけにもいかず歯噛みをする。
大の字に転がる干柿一族の青年の前に辿り着く前に、今度は彼が躍り出た。
ヒラメカレイを握るかぐら。
「屍澄真さんに何……、っ!?」
姉さんは、流れるように軽々かぐらの首元を掴み上げた。
かぐらは片手で持ち上げられてしまった。
彼女が纏っていた水塊がかぐらの手に触れれば、無理矢理開かれ、ヒラメカレイが地面に滑り落された。
「姉さんはどちらへ行きました?」
「…?」
彼女は抑えた声量でかぐらに質問した。
かぐらは疑問符を飛ばした。
長十郎も聞き取りはしたものの意図がつかめないようだった。
それに気付かぬボルトがかぐらの名を叫ぶ。
吠えながら考えなしに走り出したボルトだが、二人の間に辿り着くまでもなく、自在なる水塊がボルトの両脚を掴み止めていた。
「慰霊碑の前に姉さんの痕跡がありました。同時刻あなたがたが立っていたような痕跡も。つまり言葉を交わしたように見受けられますが?」
「…! それって、まさか」
トキの姿が思い当たったかぐらは目を張る。
対するナガレ姉さんは、瞳術で彼の心を覗き込んで答えをすでに探り当てていた。
「お話になりませんね」
目で追えていない。との事実に関する感想と共に、彼女はポイとかぐらを背後に投げ捨てた。
かぐらはそのまま、水塊に掴まるボルトのすぐ横に着地した。
するとボルトを捕まえていた水塊が弾けるように形を変え、拘束の枷ではなく確保の檻へと形を変える。
「これは…!」
「おい!ここから出せってばさ!!」
出したら邪魔するのに出すはずないわな。
吠えるボルトを無視し、彼女は屍澄真の真ん前に到着した。
ズゴン、と。逆手に持っていた鮫肌を、屍澄真の顔の真横に突き立てた。
気を失っている屍澄真は、その程度では気が付かない。
ナガレ姉さんは面倒そうに、屍澄真の胸ぐらを掴んだ。
「ヴッ…ゴホッゴホ…、!?」
かぐらと同じように片手で持ちあげられちゃったよ屍澄真さん。
空中で揺さぶられれば流石に意識を取り戻した屍澄真は、目の前に飛び込んできた顔に目を剥いた。
「姉さんはどこに行った」
しかし、一の句を告げる前に姉さんが問いを詰めた。
「は…?」
沈黙は、たっぷり五秒くらい。
およそ屍澄真さんが言葉の意味と現状を解し、そして思考がトキに行きつくまでの間。
察し終えたらしい姉さんは、屍澄真が返答を述べる前に、彼の腹へ鮫肌の柄をえぐり込んだ。
「ぐはっ……!?」
屍澄真は、訳も分からず再び気絶した。
まあ話にならないわな。
屍澄真もかぐらも、去るトキ姉様を目で追えていなかった。
時空間忍術での離脱であったし当然ではあるが。
「……」
幻滅した、と言わんばかりに姉さんは屍澄真さんをその場に落とした。
干柿一族いうてそんな特別な血統でもないんだから無茶いうなって……。
しかしなぜ彼女はトキ姉様を探してるんだろうか。
気になったので鉛分身の私がチラと瞳術で彼女の心を覗く。
覗いたら。
……。
あれ、これ逃げないとまずない!?
ハオリがちょいちょい言ってた追手って姉さんだったのォ!?
と内心叫んでるとこ、気付かれた。
屍澄真というアテが外れたから、気を取り直してこの場全てを改めて探っていたようで。
ナガレは視線を動かすような前触れもなく、地を弾く。
この瞳術には死角がないので、眼球動かす必要がそもそもない。
「!? くっ」
私の鉛分身へ接触するにあたっての障害物こと、長十郎の水分身が…、鮫肌によって凪ぎ払われた。
腕のガードで受けたため外傷はないようだが、鮫肌にチャクラを吸われ、たまらず水となって弾けてしまった。
「……」
そして、お目当ての私が睨まれた。
抵抗の意志を示さずいれば、掴み上げても来なかった。
「おや…?これは驚きましたね。……宿す色彩、そのチャクラ、封印術式の位置」
彼女は私のチャクラから母のチャクラを感知したようだった。
そして、この目と髪の色に、この瞳と額に施された封印術式で、気付いたらしい。
私が妹であると。
「まさか、こんなところでお目にかかれるとは思いませんでしたよ。災厄と魔性の合子」
嫌悪の感情が伝わってくる。
私にではなく、私の父と母に向かう嫌悪が。
「その血、決して残す事の無きよう、お願いしますよ…」
一族きっての異端児であり、対之の存在を明るみに出した母。無責任に、力溢れる者の子をいくつも産み落とし、ろくすっぽ管理もせず放任する母。
そもそも一族の綻びは、かつての里長がマダラに惚れ、有力者との子は禁忌であるというのに力ずくで押し通して血を持ち帰り、彼の子を産み落としたことから始まったのだと。
その里長の妹も影響され、柱間の血を手にして、さらにその子までが扉間の血まで欲してしまったこともそもそもはマダラがその里長の心を奪ったせい。
そんな魔性の男マダラからできた子が、夫の後を追い命を絶ったせいで、その子供であり当時ほんの幼子であった私の義父が、愛に飢え歪み処刑にまで至り――その処刑ゆえに、義父の許婚として仲睦まじかった幼い母の思想に反骨が息吹き、育ち、今の厄災たる母をつくったのだと。
イヤ私にそんなこと言われてもって感じですね。
私自身に対しては、ただの『たとえ術式刻まれようとも決して対之なり得ない生まれながらの危険因子』とだけ。
姉妹の情どころか何の興味も関心もないようで。
「失礼。話が逸れましたね」
こちらの様子を窺う皆と本体の私には背を向けている為…心置きなく黄色い瞳で見つめ合う。
『姉さんは何処だ』
と、彼女の感情が語る。
記念公園の一角にある林での出来事のみを思い出すようにすれば、彼女はすぐにそちらへ行ってくれると思ったが。
「……」
まだ隠していることがありそうだ、とか。
親密ならば連絡手段があるはずだ、とか。
心を探り始めてきたものだから恐ろしい。
目潰しなど無意味な、視野の広い、死角のない瞳による詮索から逃れるには、こうするしかない。
集中を乱す。退却させる。
向こうで私の名を呼ぶ声がするが。
構ってなんかいられない。
――彼女の背後に本体の私が飛び入って、鳶口を振り上げた。
「……」
が、姉さんもバカではない。
とっくに気付いている。
ブゥンッと、鮫肌が背後に振るわれ、本体の私を捉える。
もちろん、私もバカではない。
受け止めて、そのままチャクラ吸着で鮫肌に貼り付く。
チャクラ吸着により流れた私のチャクラは、当然鮫肌に吸収される。
「ギギギィイイーーッ!!?」
「!」
堪らず弾け飛んだのは鮫肌だった。
火傷したように私を振り払い、反動でナガレの手からも勢い良く飛び出した。
数メートル先に転がり落ちた鮫肌は、痛みにもがくようにのたうち回っていた。
こう…『うわめちゃチャクラ量あるじゃん吸ったrアツゥイ!!(高温の溶解液』みたいな。
もともと鮫肌は母さんのチャクラが嫌いだというのもあるが、なによりも、私本来のチャクラが相当効いたみたいだった。
「そのチャクラ…随分と有害なようだ」
「……」
姉さんが本体の私と対峙する。
私は彼女の集中を乱しこの場から追い払うべく、鳶口と団扇を振るって攻撃を仕掛け続ける。
だが彼女も伊達にハオリの追手をしていない……といったところか。
優れた体術、自在の水塊。
全く一筋縄ではいかない。
でも深層心理を探られたくはない。
千鳥団扇によるうちは返しや大規模忍術を使えば違うのだろうが、しかしギャラリーが居るぶん、今後を考えると全力を出せずに苦戦する。
「良い心がけですね」
非凡なことを控えようとする姿勢は褒められたが、だからといってこちらを探る瞳が閉じる気配はない。
私は黙って次の攻撃を繰り出した。
その間に鉛分身の私は戻らせて――皆を説得して点呼にいかせようと思ったので――合流させようとしたが…向こうに着く前に水塊が八つ裂きにしてしまった。
鉛色となって弾けた私の鉛分身に、また向こうの面子が反応する。
手裏剣やワイヤーが飛んできもしたが、すべて水塊に叩き落されていた。
「!」
そうしている間にも、この戦闘に慣れて来たのか、彼女が余裕を得かけるものだから。
私はなりふり構わず、思い付く限りを行った。
ボボボボッと背後で点火音が鳴る。
広げた両腕を、思い切り前へ。
「……」
彼女と同じ、ただの形態変化に火遁を纏わせたものを、めいいっぱい。
無数の炎塊を、彼女目がけて一気にぶっつけた。
「なるほど」
彼女は、力を込めてひらいた掌を、前へ。
一瞬のうちに同数へと分散した水塊が、炎塊にぶつかる。
無論残らず防がれ、ジュゥウウワワワッ!!と、激しい蒸発音と真っ白い水蒸気が、あちこちで爆発的に発生した。