□20 修学旅行編新七人衆のザコ組撃破まで[10p] ※霧が干柿一族を管理したというのは推測捏造です
ドリーム設定
□登場人物名(25文字)□このブックはドリーム機能を使用しています。
名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そんな空気の中で。
「…。號さんの言う通りです…」
八朔に向けて構えたままのマギレが、私の言葉に頷いた。
「よって…その覚悟が、ないのでしたら。…どうか刀を手放して、降伏をお勧めします。
これは戦争ではなくケンカだから…それでおしまいです。
いや…抵抗するならお相手しますし、ボクの術で再生するのでいくら怪我しても残りませんけど…つまり、無意味に痛むだけというか……」
言葉を受けた八朔は、数秒目を泳がせたが。
最終的には刀を構えた。
「い、嫌だ!オレにはこの…首切り包丁しかないんだ!!」
八朔が地を蹴った。
「絶対に、手放すもんかよーー!!」
怯えた足運びで向かってくる八朔を見て、マギレは短く、はぁ、と物憂げな息を吐いた。
そして、ガタガタの太刀筋でもって振り降ろされた首切り包丁を、パンッと止めた。
その怪力を生かした、見事な真剣白刃取りだった。
「な…に…?!」
八朔は引き抜こうともがくが、マギレはビクともしない。
その間、燈夜は巨峰に近付いていた。
「なぜ加勢しない?」
「……! う…おあーっ!」
構えもなく話しかけてきた燈夜に気付いた巨峰は、我に返ったように兜割りの槌を振るった。
隙だらけに首をかしげている燈夜を、巨峰が見くびるのは無理もなかった。
燈夜がこの中で一番、自分よりも弱い奴でありますようにという何の根拠もない願望もあったが。
「連携ができないのなら、各個撃破という形をとるべきだ」
燈夜は槌をひょいと躱し、巨峰の肩の上に片足で着地していた。
結局のところ、願望は願望でしかなかった。
「頭数揃えるメリットは手数と撹乱だ。その訓練を積めていないのなら、相打ちに配慮しながら戦う分、各個出力は激減し、群としても個としても弱体化する」
振りほどこうと斧を振り回した巨峰の肩から既に跳躍して、ブンブンと迫りくる攻撃を気だるそうに避け続けながら燈夜は言葉を流す。
「お前たちはスリーマンセルというより、個人が三つ…『三個』だな。行動を共にするならまだしも、戦闘時まで一緒にいるのは極めて良くない」
そこで燈夜は、巨峰が横薙ぎにした槌をギリギリまで引き寄せ。
巨峰の腕に初めて触れた。その軌道を逸らすことの出来ないように補助した。
「そんなだから――」
ガギィィンッ!と言う途轍もない音を立てて、槌が急に止められた。
「――こうして、利用されちゃうんですよ…」
燈夜の言葉の先を引き継いだのは、マギレだった。
槌を振り回しているようで、振った後はその重さと遠心力に振り回されていた巨峰の腕は、槌の急な停止に耐えきれなかった。
ボギリ、と。
巨峰の腕が鈍い音を立てて逆方向に曲がる。
燈夜の腕は既に離れていた。
巨峰は、槌がまるで壁に当たったと錯覚したが、そうではない。
首切り包丁の背を両手で掴んで、その刃を、槌に突きたてるようにして押し付けている。
そんなマギレの姿が巨峰の視界に映った。
槌が止められた理由は、これだった。
そして、巨峰の視界に映った人物が、もう一人。
それは、首切り包丁の根元に開いた半月の窪みに首を通している、八朔だった。
それは、首切り包丁を持つマギレに注目しながら、追われて槌側に避けていたところ、背後に迫っていた槌に気付けず衝突した瞬間だった。
つまり、振るわれた大槌に、八朔の後頭部および背中が激突し、その衝撃で八朔の頭と体が跳ね返っているところであった。
そして、跳ね返る頭と身体に引っ張られた八朔の首が、そのまま―――
「あ…」
――首切り包丁の刃に食い込み、ずっぱりと断たれる瞬間だった。
「うあああああああーーーっ!!」
巨峰は絶叫する。
痛みに、仲間の死に。
それをした、子供達の冷めた瞳に。
両手の得物を取り落とし、もはや立つことすらできない。
ゴポッ…と、八朔の首は、状況を把握することもできずに血を吐いた。
ドチャリと目の前に落ちたのは、あまりにも見覚えのある、首の無い死体だった。
「大丈夫ですよ。傷は残りませんから」
マギレの優しげな声は、もはや悪魔の号令でしかなかった。
次の瞬間、気が狂いそうなほどの激痛が訪れる。
八朔の首から、赤い血で出来た塊のような糸が伸びて、首から下の身体を引き寄せていた。
「拷問の訓練を受けていないのならかなり辛いだろうが、自業自得だな」
「あ゛ああーーーッ!うう゛ーーーーッ!!!」
逆方向に折れ曲がっていた巨峰の腕が、まるで逆再生のように元通りになっている。
「えと、再生中は気絶もできないようになってますから、頑張ってくださいね…」
「いぎぃいいいい!!ぐああああああーーーっ!」
声帯がくっついたとたん、八朔の絶叫が鳴り響いた。
暴れてもがき苦しむ八朔の首は、どんどん再生していくが、無意識か急に傷口を掻き毟り始めたため、苦痛は少し長引いていた。
「それから……武器の形状を活かして戦えないのなら、変えた方がいいんじゃないかな……」
マギレは首切り包丁の穴に腕を通し、頭上でクルクルとふり回して見せながらそう言った。
他でもないこの動作で、マギレは八朔から首切り包丁を奪ったのだ。
「あんな傷まで……あ、侮っていました……想像以上に…、とんでもない…術ですね。これは…」
「まあ拷問用ですね」
長十郎は愕然とその光景を傍観していた。
私がその腕をがっしと掴んでいるというのもあるが。
「この時代…君達の年齢で、どうしてこんな…」
「時代が平和だからって弱体化していい理由はなく、むしろ平和なぶん修行環境は整い、修業にあてられる時間も格段に増えてますからね」
「……!」
「それに、ちょっと前までの戦乱の世では質より量が求められてましたが、今の世は量より質が重視されている時代です。だから忍の教育レベルも随分と上がっている。で、私達は偶々そのことに気付けていたってだけです」
「それは……間違ってはいない、けれど…」
「里を照らす笑顔で遊びまわるのは、忍を志さない子供の役割です。大勢います。少なくとも私たち三人はそういう気持ちだから、それもあってよくつるんでるんです」
「………」
雑談しているうちに、悲鳴は止まった。
二人の首に引かれている一線を見れば、巨峰は途切れの狭い点線、八朔は途切れの広い点線となっていった。
「あ、ひとつだけ、勘違いしないでくださいね。彼らは最高峰の天才ですから、あのレベルが木ノ葉にゴロゴロ居るとは思わないでくださいね」
「そうでしょうね」
「時代が時代なら、あの二人とも既に暗部に引き抜かれているであろう逸材ですとも」
「…そして、それは君もだ」
「ご冗談を。私は一族きっての落ちこぼれですよ。必死に積んでるだけですから、物事の理解だって、彼らの数倍の時間を要しますし。やんなっちゃう」
「……なるほど。もし、それが真実なら、君が最も優秀ということになりますね」
ぽん、と頭に手を置かれた。
大きな手だった。
が、特に思うことはない。
「はあ、そりゃどうも。それより、今見た術と蹂躙はすべて秘密でお願いしますね」
「……わかりました」
だって、褒められるためにやっていない。
「――はい。それじゃあこのまま大人しくしていてくださいね。…戦争じゃなくて、ケンカでよかったですね」
目前では、マギレと燈夜が八朔と巨峰の気絶と降伏を認めていた。
「これが戦争なら…降伏も認められず、ずっと長い時間、痛くて苦しい思いをしていたところだったな」
「そうですよね」
なーマギレくーん、はよ私の右肩治してくれませんかね。耐えられているだけで、痛くないわけじゃないんですよ。
もう叫びたいくらい無茶苦茶痛いんですよコレ。
ところでこの縫い針の持ち手、少しうちはの宝具のそこに似てるな。