□20 修学旅行編新七人衆のザコ組撃破まで[10p] ※霧が干柿一族を管理したというのは推測捏造です
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フォーカス戻って本体の私さ。
起きた爆発は随分上空の方からだったが、爆発音は爆発音だ。
大きな音に反応するのは生物の本能。それに気をとられ、予測していた私以外この場の全員が思わずと怯んだようだった。
さて。
長十郎が弾いてくれたおかげで、ちょうど中距離になれたことだし、やるかぁ。
「今のは…」
「燈夜、注目」
「…」
小声で『注意を引け』と指示を出せば、燈夜は返事代わりに即座に跳躍した。
同時に、『燈夜に『注意を引け』と指示を出したら例の術を』という事前指示に従って、マギレ君が印を結ぶ隙を窺いに出る。
燈夜は長十郎の前に着地し、素早くチンピラ共に向けて構えた。
まずは、急に背に庇われるようになった長十郎が「君は…!」と反応する。
そして狙い通り、注意散漫なチンピラ共は「あ?」「一人ぼっちでアタクシ達の前に立ちふさがるなんて…随分いい度胸ですわね」などと言って、それに気をとられてくれた。
その隙にマギレ君は印を組み、私は長十郎の横に立った。
「何のつもりですか?」
「まあ見ていてください」
「うしろ…何…相談してる?」
巨峰が喋ったあ!?
「つまりこいつは時間稼ぎか。へっ…どんな策を立てようとも…ヒラメカレイを手放したあんたなんか怖くねえぜ…!」
「そーんな貧弱な刀で何ができると?忍刀も随分安く見られ――」
煽っているらしい蛇苺の言葉に思わず笑止した。
「――何がおかしいんですの!?」
「いやァ」
「むしろ、どこが可笑しくないと言えるのでしょうか」
私の言葉に続いたのは、完全にノーマークであったマギレ君。
動いている私達と違って、比較的後方で大人しくしていたというのもあるが、それにしてもノーマークは迂闊すぎる…と思ったらしく。
私の『可笑しい』という言葉に乗っかかってきた。
そんな彼は言葉ながら、ロングケープの下で結んだ印の存在を見せるように突き出していた。
対峙していた三人のチンピラはそれを見て、目で追って、やっと気が付いた。
「!」
マギレ君の印から足元に落ちて、地面を伝って三本に分かれ、それぞれの足元に伸びる、チャクラ糸のようなものに。
「驚愕するだけで咄嗟に飛び退きもしないのか」
燈夜のつぶやきにハッとした三人はしかし、もう遅かった。
だからつぶやいたのだとも言えるが。
「荒療治の術」
マギレ君の術は問題なく発動し、チャクラ糸はそれぞれに注入されるようにして消える。
ほどなくして、成功の証であるマーキングが然り現れた。
彼らの首を一周する、緑の一線。
けれど発動条件を満たしていないため、変化はまだ、それだけ。
「!…?…動、ける」
「いや、なんだその、首の線は!」
「けれど、何ともないですわ…。つまり…失敗…?」
三人組は敵の前でわいわいしているうちに、私は長十郎の肩にうんしょと と手を伸ばし、ポンと置いた。
「!、あの術は一体…」
「ここからは私達にやらせてください」
「君達が?」
「引率の先生に、必要以上の暴力を振るわせたくありませんので」
「しかし…」
「いま不意を打って見せたのでは足りませんか?」
「……。いいでしょう。しかし、危うくなれば間に入らせてもらいますよ」
「ありがとうございます。さっすが水影様は話がわかる」
フッと笑って、私は長十郎の肩から手を放した。
目前の三人組は、既にこちらに注意を持ち直して、やり取りを聞いていた。
「そういうわけで、よろしく皆さん」
「ハッ!こいつはお笑いだ!術もまともに使えなかった奴らに、オレ達を任せるってか?」
「また…!ボロボロ、に!して、やるぅー!」
「いいえそれ以上に…グチャグチャにして差し上げますわぁ! アタクシ達、文淡のようにお優しくは出来ませんので…♡」
「律儀な奴らだな」
私の挨拶にわざわざ反応を返した三人組に対し、燈夜が呟いた。
ちょっと噴いた。
私が文淡にボコられたってのもただの幻術だし。
じゃなくて。
気を取り直して。
噴き出した口元を押さえていた手を、ゆっくりおろす…という予備動作を見せてから、私は地を蹴った。
常人に目視できる程度のスピードで蛇苺に向かう。
「フン、寄らないで」
蛇苺は余裕綽々といったふうに、私の右肩めがけて縫い針を投げた。
うーんと。たしか長十郎は肩貫通させてワイヤーをたどるように距離を詰めたんだっけ。なら私もあえて当たってみる。
ぐさりと。
背後の長十郎が足を踏み出しかけたが、燈夜が手で制して止めていた。
ああ、とても痛い。
「はぁ」
けど本当になってない。
長十郎(私の水分身)を拘束した動きはどこ行った?
蛇苺もそうだが。どいつもこいつも。
入手したての刀ってことを差し引いても、余裕で見切れる程度の動きしかしない。
柄の掴みも甘く、自在に振るえるだけの腕力だって足りてもない。
格上を格下と侮り舐めプして負けるただのワイヤー使い。そんなのに振るわれるなんて、忍刀が泣いてるよ。
あと私の大好きな栗霰串丸に対する侮辱だよ。
「まず縫い針は無策に手放しちゃダメな武器だよ。たとえ油断しようとも」
「なっ!?痛みを感じないんですの!?」
肩口に刺さる縫い針を掴み、ズボボッズボッズボボッと長い刀身を数回に分けて抜いた。
顔色一つ変えず喋りながらそれをやってのけた私に、蛇苺が後ずさる。
「無策に投げるなら、刺してすぐ引くか、」
気にせず私は、手にした縫い針を蛇苺目掛けて投げた。
私は、力を抜いた早口で解説しながら、既に彼女の背後に到着していた。
「ひっ」
「もしくは 前もって着弾地点に着いてないと」
「!? ぐががががっ か…」
そして投げられた縫い針が蛇苺に到達する前に、彼女の背後に回り込んでいた私は、その両肩を掴んだ。
ガッチリ掴まれ回避を阻止された蛇苺の喉元に、見事縫い針が貫通した。
すぐ近くで生々しい音を立てて通る縫い針の刀身が、蛇苺の首から抜けた瞬間、私はそれをキャッチして回収した。
「……ひゅ…ッ、ー…っ」
痛みに絶叫もできず、ボロボロ涙を流す蛇苺。
その背後から跳躍した私は、再び彼女の目の前に着地した。
『肩を持っていた私』という支えを失い崩れ落ちた蛇苺は、その首に貫通しているワイヤーがずるずると通っていく痛みにもがき喘いでいた。
「ワイヤーも。科学忍具的な特殊ワイヤーでもないのに何もコーティングしないのはいかがなものかと思うんだよねー昔と違うこのご時世においては。だってほら、こんなふうに」
しかし私は説明を続けながらワイヤーを掴み、火遁の熱を流し込んだ。
「熱や電気を流せる科学忍具とかに対応できないし、」
「っ ッ! ーーッ!!」
ワイヤーの通る喉から煙が上がり火傷どころか黒焦げになったそこが、さらに炎上した。
肉の焼けるにおいがする。やめろ殺す気かみたいなこと言う長十郎を言葉と力で止めてるマギレと燈夜のわいわいが後ろから聞こえる。
気にせず私は、ワイヤーの一点に火遁を集中させ、ボッと焼き切った。焼き切ったのは、蛇苺の首元あたり。
「こうして簡単に切られちゃうからワイヤーありきの戦術が使えなくなっちゃうじゃんね」
縫い針から伸びるワイヤーを引っ張り、蛇苺の首からワイヤーを抜き取った。
「まあどんな時でも冷静さを欠かずワイヤーをもっと複雑かつトリッキーに使いこなす力量さえあれば、敵にチャクラ流しやワイヤー切断させるほどの隙をかき消すことは出来るのだろうけどさー」
レクチャーを終えた私は、心底呆れた空気を出しながら、残りの二人を見た。
そして言い聞かせるように口を開く。
「仲間が圧倒的優位から落ちたにもかかわらず加勢しないのはなんででしょうかね?」
この十数秒の出来事を飲み込めず目を白黒させている八朔と巨峰。
「ぎゃぁああああああっ!!!」
沈黙の後、不意に絶叫が鳴り響いた。
喉を潰された蛇苺の、鳴るはずの無い声だ。
これに反応したのは、八朔と巨峰、そして――マギレと燈夜に効果を聞いていたが半信半疑だったらしい――長十郎。
「安心してください。ボク達は、他里の人を傷付けたまま逃げるようなことはしませんから…」
マギレが笑う。そして、その手に握っていた私の髪をひらりと捨てた。
突き刺さる注目に、マギレは自分の首元を指差して見せた。
「ボクが先ほどかけた荒療治の術は、どんな致命傷も再生させる強力な医療忍術です。…再生の際には酷い痛みが伴いますが…」
「再…生…!?」
「まさか真実だとは…とんでもない術ですね」
「唯一の欠点は、極めて莫大なチャクラを必要とすることですね…。ある特別製のアイテムが必須…ボクの力だけでは、到底使えません」
言葉ながらマギレ君は前に出るべく歩き出した。
これこの術あれな。以前私がモノローグで言ってたやつ。
習得のために私の髪が多量に持ってかれたやつ。
そして試し打ちでとんでもなく痛すぎて拷問の訓練受けてなかったら廃人なってたわってやつ。
いやマギレ君のチャクラ量だとね…私の髪(超容量チャクラタンク)必須でさ。
無しで使うと、チャクラ枯渇して昏倒するうえ不発となりますから…。
そんな余談はそれとして。
八朔の目前へと歩き着いたマギレ君は、サッと腰を落とし、構えた。
「このまま戦うなら、ボクの相手は八朔さんですが、降伏する気はありませんか?」
「…!」
同時に、蛇苺の悲鳴が止んだ。
再生が終わったようだ。
「蛇苺、治ったのか!…おい!」
しかし、彼女は荒い息を繰り返すだけで、立ち上がる気配はない。
悪夢のような痛みの余韻の中、やがて彼女は気を失った。
よく見れば、その首に引かれた一線は、点線になっていた。つまりその線は、再生できるチャクラ残量を知らせる指標だ。
「さ、どうします。肉を切られる覚悟が無ければ、骨は断てませんよ。…だっけね。水影様」
「……!」
私がその場に発してみた言葉に、八朔と巨峰はドキッと息をつめた。
そして長十郎も、意表をつかれた顔をした。
「痛みに打ち勝てなければ、それ以上の痛みが待っている。敗北者は尋問、拷問、凌辱、人体実験…な。…それがあなた達の掲げる戦争というものだけど。…そういう覚悟、きちんと決めてきてます?」
…なんか求められてる気がしたのでなんとなく煽ってみた。