ところ変わって、水月尾行担当の私です。

なんか釣糸君監視中の私から変な報告共有が来てて首を傾げたりして目を離してる間に。

「ずっと監視してたのは、やっぱりあなただったんだね。…水月」
「ボルトを助けにいくつもりならやめときな。あの人が、これ以上この件に介入するなってさ」

ミツキが水月を袋小路に追い詰めていた。
ウフフフーー！！可愛いなぁ！！！

「どうしてだい？」
「知らないよ。ただお前とボク達との繋がりが霧隠れに知られると面倒なことになるからね」

シッポ振りながら見届ける限り、水月とミツキのやり取りは特に変わらず。

「――なんであんな連中が『新七人衆』を名乗ってんだか。けっ、戦争を経験してもいないガキどもが！」
「へえ。水月は彼らのこと嫌いなの？じゃあ、教えてくれてもいいんじゃない？」
「へ？…教えるって、何をだよ」
「水月がわざわざ来てるってことは…調べてるんでしょ？彼らの泣きどころになるような情報を、さ？」
「お前…介入するなって言ったばかりだろ…！？」

水月も言いつけを守って、私の事を話題に出すこともなく。
シナリオ通りに進む。

いのじんとシカダイも、ちゃんと来てる。

「ボルトを追ってはみたものの…」
「まずいとこに出くわしちまったかな…」
「どうする？」
「ひとまず、ここは――」
「はい、そこまで」
「「……ッ」」
「動いたら殺すからねー」

その水月に 後頭部に水鉄砲の指先突き付けられてゾクッてするやつ私もやりたい。

「でェ、何をしてるのかなァ…？」
「「……っ」」

てか二人とも顔面冷や汗まみれやんけ草。
近くにフワと着地したミツキは水分身の水月に視線を向ける。

「悪ふざけはそのへんにしといてよ。友達なんだ」
「知ってるよ。ちょっとからかっただけだよ。ねェ？」

あ、その水分身水月のおちゃめな笑顔ソレ私にもやってほしい。(語彙力

「君達もそんな顔するんだね」
「お前なぁ…っ」

そして相変わらずミツキはマイペース。

「そうだ。多勢に無勢で尋問されたってことにすれば、言い訳は立つんじゃないかな？」
「…しつこいぞ、ミツキ」

っと。

「ハァ…まいいや。ボクの代わりに、屍澄真を潰してくれるんならさ」

そろそろ終わりそうだし乱入でもしてみようかしら。

「そっか。本当に嫌いだったんだ」

おててグルングルン。
迷彩隠れ 解。

「ありがとう。二人のおかげでボルトを助けてあげられそうだ」
「なんなんだ、これは…」
「要するに…修学旅行を隠れ蓑に、大人たちの思惑が動いてたってことでしょ…」

よし。

「ィヒーーーッ会いたかったぜェーーッマイスゥィートハニーーッ！！」

小声で叫びながらの射出である。
本体の方の水月の正面から、木に掴まるセミのポーズで飛んでってみた。

「…でっェ！？」

クソシュールに水平へ飛んでいった私に、思わずドンドンッと放たれた水月の水鉄砲。しかし水の弾丸は私に接触する前にジュッと蒸発した。

お次の障害は水月の水分身がとっさに繰り出すラリアット。
さっと掴んで、鉄棒のようにくるりと一回転のちその勢いのまま飛び上がる。

「！？」

よって、そのまま私は放物線をえがいて水月の首元へズガッシーン！としがみ付いたのだった。
バッと外されかけたので、彼の肩に軸腕置いてくるりと彼の背後に回り、ギュッシリしがみ付き直す。
はい、おんぶちゃん。

「え？」
「は！？」
「號っ！？」

突然飛んできた私に当然目を剥くクラスメートのお三方。

「ハァン出会いがしら撃つなんてひどいなぁハニー！」
「…ッ…はぁー…」
「にしたって相変わらずなんだいハニーこのけしからん胸元はーガバガバっと開けちゃってこの眩しい魅惑の谷間に誘われる哀れな羽虫をそんな目で見んなってハニー照れるジャマイカ☆」
「あー見てない聞いてない何も見てマセン一切視線のひとかけらとも」

お顔や顎下サワサワしても全く動じず、なんかもう諦めたように遠い目をしていなさる水月。

「そんなオ顔もカワイイッ！ネッ！」

「へえ…驚いたな。二人とも知り合いだったんだ」

ミツキがマイペースに口を入れてきた。
それを聞いた私は、真顔に戻って淡と告げた。

「ボルトは慰霊碑だよ。早く行ってやりな」

いや、なんとなく。

「……この情報があれば、ボルトが助かるんだね。水月」

ミツキは特に気にするでもなく、水月から受け取った巻物に視線を一瞥し、水月に問いかけた。

「そんなことまで知るかよ。ボクはあの屍澄真ってガキが潰れてほしいだけだ」
「わかった。この情報は有効に使わせてもらうよ」
「ついでにコレ…取ってくれる？」

やり取りの最中に突っ込んでくる程度には私を嫌がる水月が、背中に引っ付く私を指差した。
ミツキは首を傾げた。

「號、嫌がっているみたいだけど」
「だがそれがいい」
「ふーん。そうなんだ」
「いや、『そうなんだ』じゃなくてさ…。ちぇっ、まあ期待はしてなかったけどさ…」

あ、諦めた。

「…早くボルトちゃんのところに届けてやれよ。お前の太陽なんだろ？」
「そうする。水月、ありがとう」

水月の言葉に、蛇のような可愛らしい笑顔を向けてから、ミツキはタッと地を蹴っていった。

「お前も言うようになったんだな…。ありがとうって」

さっきも言ってたけど。
あ、身内に対して？

っとそれよりより私は。

「ちょ、おいミツキ！」
「ならボク達も…」

ハオリから聞いていたシナリオと違って、何故か行く気満々のいのじんとシカダイを食い止めとかないとな。

仕方ない。
トンと水月から降りて、私は二人の前に立ちはだかった。

「二人は帰りましょ」
「ハァ…そーそー。これ以上オオゴトにしないでちょーだいよ」

水月も乗ってくれた。

「なんでさ」

いのじんがジトッと睨んで来た。

「なんでも。もう定員オーバーなのよ」

私は肩をすくめた。

「だから二人は私と一緒に戻って、デンキ君と一緒に誤魔化し便宜を図ってほしいんだよ。それが分担ね」

そう言ってみた。
いのじんとシカダイはしばらく黙って私を見ていたが。
水月の本体がスタスタやってきて、私の傍らに立って両腰に手をかければ、そこで渋々目を逸らした。

「わーったよ…行こうぜ、いのじん。オレ達じゃここを突破できそうにねーしな」
「…あーあ、またボク達は仲間外れ？」

諦めてくれたようだ。

「助かるよ、ありがとう二人とも」

そして私も踵を返す二人に続く――前に。

「そしてスペシャルサンクス何よりァりがとぉッすべて君のおかげだよッハニー！」

こちら側にあった水月の手をガッチリひっつかんでウィンクバチーン☆な。
私が遠ざかる提案なら協力してくれるとか言う可愛らしいポインツなにそれかわいい！

「……」

呆れかえった無言で思い切り目逸らして、逆の手でシッシッてやってくるけど。

「アハーーーッッ！そんなつれない君がッカッワイイッ！！ンネッ！」
「早く行ってくんない…」
「やだハニーったらてれやさん！キュート爆上げ！！ままええわ。ありがとまたね」
「……」

すげー迷惑そうな顔してる水月の手を解放した私は、そのまま彼に向けて軽く手を振ってから、前方のシカダイといのじんの元へと駆けた。

「――じゃあ、つまり里外にいる號の好きな人って…」
「むしろ完全にそうだろ…」

なんかこっち見てコソコソしてるけど。

「なんじょい」
「「別に…」」

見届けもせず去ったらしい水月の気配は、すでに遠い。

別れといてなんだけど聞きたいことあったの聞きそびれたからまた明日会おうね。ムフ。