□20 修学旅行編新七人衆のザコ組撃破まで[10p] ※霧が干柿一族を管理したというのは推測捏造です
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とりあえず釣糸君は参加しなくていいよってことで置いてきた。
武器庫の片付けと訓練所の痕跡隠滅だけ頼んでな。
と思ったら。
「あっあの、女神様…」
「ん」
別れざま、武器庫を出ていくボルト達に続こうとしたところで、呟くように呼び止められた。
私が最後尾であったので、前を歩いていたマギレ君だけが気付いて一緒に足を止めていた。
ので、マギレ君にはあとで追いつくからって言って、今まで隠れていた鉛分身を釣糸君から死角になるところに出現させた。
察したマギレ君は、その鉛分身を私として他の面子と先に行った。
そして私は先に行く面子が振り返ってもいいように、死角である倉庫へ再び出戻りした。
そのまま釣糸君の目の前まで行けば、きょどったように口をもごつかせた彼は意を決したように言葉を寄越してきた。
「そ、その…なんで、オレなんかの肩を持ってくれるんスか…?昨晩…オレ…散々……したはずなのに…」
「あー」
まあそうね。
顔面ボコしたのになんでそんな優しくしてくれんのっていう。
「それは君の瞳が、彩度の高い綺麗な緑色をしてるからかな」
「…へ…?!」
「それに釣糸君は私にとって、なかなかに『オモシレー奴』だからね。肩を持ちたくなる程度には」
「そ……そ、そそそれって…!?」
ポッと頬を染めながら両手を迷わせるその反応が中々に面白いわ。
そして私はにこりと小首を傾け微笑んで、次の言葉を紡いだ。
「なにより、パンチもビンタもキックも子猫ちゃんレベルなのにイキりちらしてて可愛いなぁと」
「そ……え?…は?」
満更でもなさそうな照れ顔から一転、釣糸君の表情が抜け落ちた。
いやー、これだから上げて落とすのやめられねぇんだよな。
そんな彼に「ん?」としらばっくれて傾けた方の反対側に首をかしげてみれば。
「それって…どういう…?」
と困惑した様子で聞いてきた。
私は「うーん」と軽く喉で声を鳴らして口を開いた。
「言葉通りだけど。なんなら腕相撲しようか?」
「へ…」
適当な台に肘を置いて、カムカム手招けば、彼はおずおずと乗ってきた。
バァン!
と。倒したいのはやまやまだが怪我させちゃ世話ないので。
「ふんっぬぬぬ…!? あ痛ちぃ!!」
動かないでみるだけな。
そしたら勝手に釣糸君の元々の怪我が痛んでくれるから。
「アハハ。ここまでにしようか」
マギレ君が治したのはほぼ深手だけだから。
放した手をふらつかせながら、びっくりしている釣糸君を笑って観察した。
「お、オレよりも力があるなら、どうして昨日無抵抗だったんだYO!顔に傷までつけられたのに…」
「みんな顔顔言うけど、治せる人が近くに居るんだし刹那的なら傷もアクセサリーだよ。それに私はデンキ君が無事でいてくれればよかったわけだし」
「そ、そういうものなのか…?」
「私はね。ああ、それから昨晩のボコスカに対してだけど、釣糸君が責任に思うことは全くないよ。事実としての報いはイワベエ君が同じだけボコスカした時点で帳消しだし」
「で、でも、年下の挑発に乗って手を上げちまうなんて…メガネも割っちまったし…」
「あれ…気付かなかった?それも気にしなくていいことだよ」
「気付く…?」
「昨晩私はすこしの間だけ、私に対しての憎悪と暴力性を増進させる幻術を君にかけてたんだよ。そうすることで、デンキ君に行く分のヘイトを独り占めしたわけ」
「へ……」
さっきからまるで予想外の連続に、かなり困惑し反応に困っているご様子。
わかるけど。
「なんでかっていうと…デンキ君は友達だからってのもあるけど…彼もわりとやんごとなき身分の人なんだよね。ボルト君ほどではないにしろ」
「そ、そうだったんスか」
「うん。よってマギレ君でも治しきれない怪我でもしたら外交問題なんで…、それだったら比較的丈夫な私が打たれた方がいいってわけね。打たれ稽古代わりに。そして君の打撃はいつも私が稽古で受けてる痛みに到底及ばなかった」
「打たれ稽古…!?こっ木ノ葉って…そんなことやってるんスか…?!」
「ああいや、私が師事してる人と個人的にやってることだから。そこは気にしないでOKだよ。メガネはいくらでも用意できるダテだし」
「…!」
何か尋ねたそうにこちらをうかがう釣糸君に対して私は「とにかく」と区切るように二本指を閉じて立てた。
「私を殴った感情に関する落ち度もなく、それによりもたらされた支障もない」
私は三本目の指を立てた。
「そのうえで何の罪のない君のズボンを直したのは…まあお気に入りの君が辱めを受けてるじゃん?私わりと羞恥心が伝染するタイプだから、つまり私の寝覚めのために直したってわけ」
「……」
「暴力の事実は報いを受けたのでどっこい。
暴力の動機は私の術による要素があるため無罪。
暴力による痛みはそもそも私の自演ゆえに自業自得。
服の修繕はただの気まぐれと自己満足」
四本目の指を立てた私を見つめる彼に対して、私は順々に指を折っていった。
「そんなわけなんで、私の行動は打算と利用しかない結果なので…、だから君が私に慈悲や恩義を感じるのはだいぶ誤解ってことだね」
「…、お…オレ…オレ…」
「うん。私のことは好きに呼ん――」
「感動しましたッ!」
「うん?」
?
「たとえ打算であるとしても関係ありません!誰かを守るために損失と怪我を厭わず盾となる姿勢…!必要だとして、自分を殴らせる選択が出来る人間がどれほど少ないか…!そして個人的に師匠をもって高みを目指すストイックさと成果ときたら…!下忍であるオレを幻術にかけた技術に、その腕力と忍耐力…そしてそれを驕らない姿勢…!」
急に両手を組んで空を仰いでどうした?
「その気概と強さ…!そして暗躍力…!クゥー!まさに忍者の鏡っスYO!」
「そう…」
キラキラした目でぐっと顔を近づけてきた。
え何、思ってた反応と違うん…。
「憧れっス!!オレ、心を入れ換えて精進しますっス!」
「い…いや、んなことせんでも、そんな風に素直に他人を認めることのできる釣糸君の方が既にずっとすごい人だと思うけど」
「そんなことないっスYO!姉御!」
「姉御」
姉御ですって奥さん。
ずいぶんでかい弟者やな。
「……まあ、好きに呼べばいいけど。とりあえず誤解と君に肩入れする理由もわかったのでそろそろ行くね」
「あ、ハイ!引き留めてしまってスミマセンっした!」
おもむろに立ち上がった私に続いて、釣糸君はババッと立ち上がり、ビシッと姿勢を正した。
っと。
「そういえば昨晩の…君の仲間達は無事なの?」
「……! そ、それは…」
「その反応は…無事かわからない感じ?」
「…はい。…その、ある工場の廃墟で…屍澄真さんに襲われたとき、何人かと一緒で…でも逃げるのに必死で…散り散りに……」
いや君を逃がすために囮となったんでしょうが慕われっこめ。
まあ結末は知ってるが。
「留意しとくよ。どこの廃工場?」
「え…」
「屍澄真さんの手がかりを探すことになると思うから」
「…えと、その…それなら…」
つって。
事件現場教えてもらった。
もう知ってるけど、私は知らないことなので知っとかないとね。
原作なら、情報収集のために走らされた水影配下がその死体あたりを回収するんだろうね。
「うん。わかった、ありがとう。…それじゃ、こっちの隠滅よろしく頼んだからね」
「ハイ!任せてくださいっス!」
ひらっと手を振って出口に歩いた私を、釣糸君は頭をバッと90度くらい下げて見送った。
「ご武運を!」
いやどこまでも時代錯誤なやっちゃな…。
ままええわ。かわいいかわいい。