「正直、號はメガネないほうが見れる顔してると思うんだけど」
「あーそうね私もそう思う」
「そんななげやりな返事する？ひどいなぁ」

道中特にトラブルに出くわすこともなく、全員ホテルへと帰還した。

先生方にはバレていないようで、全員胸を撫で降ろしたり。

私がこっそり眼鏡のスペアを取りに行って戻ってきたときには、

「――気づいたときには、人が倒れてた……そのとき、自覚したんだ。やっぱりオレは、やぐらの孫だって」

すでにかぐら君の身の上話は始まっていたり。

「今も刀を握るたびに、自分を押さえつけている。…オレは…刀を握るのが怖いんだ」

「それでボルトとの訓練のときも…終わったあとにホッとした顔をしてたのか」

「！　あ、ハハ…やっぱりバレるよね。……これはオレ自身の問題だ。忘れてくれ
　さあ戻ろう！あれだけやれば、蜂谷たちも何もしてこないだろうしね」

夕食はグループ行動だし、いったん部屋に帰らないとな。

しかし、なんかこう……やぐら可哀想やなって…。
人柱力で、水影で。
幻術で好き放題やられて非情な暴君のレッテルを貼られ、孫にまでそんな黒歴史だの汚点だの扱いされるなんて。

ま。それはそれとして。

部屋に戻ってからやがて夕食の時間となり、部屋ごとのグループ行動でビュッフェホールへ。
グループごとに用意された予約席で、同室の子達と楽しく夕食の時間を過ごした。

「うっっま……魚うっっま……」
「ね、號ちゃん、この貝のパスタも超おいしいよー！でもちょっと取り過ぎちゃったからわけてあげる！」
「いいの？！あひるちゃんありがとうー！貝もいいよね！あ、それじゃあ私のムニエルとフライもシェアするー！」
「シェア？」
「ふふふ」
「ただいま…」
「お、分け合いっこ？じゃあ今取ってきた私達の刺身とお寿司も仲間に入れてよ」
「あ、たんぽぽちゃんににとらちゃん！おかえり！もちろんいいよー！」

そして夕食も済ませた後。

同室の子達がこれから全員他の部屋へ遊びに行く予定なのだと聞いた私は「じゃあ留守番しとくねー」と部屋に戻り、一人の間にちゃちゃっと個室風呂を使った。
無茶苦茶立派だった。なんか全ての部屋に温泉引いてるらしい。壁に書いてあった。

今回関わった男子達は、皆ボルトグループの部屋に集まってシノビバウトとかいうUNOやってた。
やりながら、血なんて関係ねぇかぐらはかぐらだ的なお話して仲良くなってたご様子。

意外にも燈夜、どさくさに紛れてかぐら君のためにここで血狂い豹変を打ち明けるのかなと思ってたのだが、そんなことはなかった。

って、鉛分身の私から共有を受けた私はと言えば。
点呼の時間になり同室の子達がお部屋に帰ってきたので、
「…点呼来ないね」
「あ、じゃあ私様子見てくる」
つって廊下に出てうろついたところ。

「あっサラダちゃん！どこ行くの！？」
「ボルトのとこに決まってるでしょ！点呼の時間過ぎてるってのに、全然来ないじゃんあいつ！」
「私も行くー！」

点呼ひとつまともに取れない修学旅行委員を促しに行くサラダちゃんに合流したのだった。

「ボルト！夜の点呼の時間！！」
「結構過ぎとるよ～」

ボルトのお部屋バーンと入場サラダちゃん。私もひょこっと参戦な。

ボルトにデンキにシカダイにいのじん、そしてかぐらが忍バウトという名のUNO。
ボルトの傍らで見学がミツキ。
イワベエ、燈夜、マギレは思い思いの場所に座って話だけ聞いているようだった。
…かくいう私も鉛分身迷彩隠れでこの部屋のお話傍聴してたわけだが。

「いいじゃねえか点呼くらい。さぁもうひと勝負だ！」
「あんた立場わかってんの…？」

まあ、ここからは特に代わり映えなく展開していった。
アニメ通り、小説通り。

問題なく点呼を取って、部屋に戻って就寝した。

明日は、朝から夜まで自由行動の日。
点呼も夜だけ。
グループ決めもなし。
ただ単独行動さえとらなけりゃいい。
…ってのもぼっちを貫くイワベエ君のおかげで原則扱いみたいなものになってる。

ああ楽しみだ。
イキりチンピラ六人衆に水月に。
うっきうきが止まらないね。

懸念は一つ。
兄さんが起こしてくれないこと。
あの人、チャクラをちょちょっとして疲労回復パッチリお目覚めさせてくれるんだけど…それが無いから…。

……寝坊、しないようにしないと。

一応えんこちゃんとたんぽぽちゃんが初日の出を展望台から見るんだっつって、日の入り前に早起きするみたいだから、出かける前ついでに起こしてもらうよう頼んだけど。
起こし忘れられたら自信ないぞ。