□18 修学旅行編デンキ誘拐まで[10p]
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和太鼓の演奏がされる中。
舞台下手控室に直結した器具庫に、その二人は居た。
二人とも声量豊かな方ではないため、その会話は、会場から響いてくる太鼓の音にかき消される。
少なくとも同じ庫内に居なくてはその声を聞き取ることはできないだろう。
アサリは、じとりとした様子でシノを見上げた。
「……それで、お話って何でしょうっていう…演奏は割とすぐ終わるし手短にしてほしいっでしょって――」
「そうだな。では単刀直入に言おう」
シノの、表情の伺えない隠された目元が、アサリを見下ろした。
「君は油女テスラという男を知っているはずだ」
「はあ…?」
「彼との関係を教えてもらおう」
「……」
「あの舞台演出に使っている君の忍術とかいう光…あれは間違いなくテスラの電光蟲と擬壊蟲だ」
そう言ってシノは指先を見せるように片手を差し出した。
続けてシノ袖から、一匹の奇壊蟲が姿を現し、その指先にちょこんと落ち着いた。
「……油女一族のな」
「……最悪でしょっていう…」
アサリは溜め息を吐いた。
ややクセのある髪の中から、一匹の蟲が顔を覗かせた。
「……!」
まるで応えるように、シノの指先に居座る蟲の隣に寸秒降り立ち、そして彼女の髪の中へと飛び戻った。
間違いようもなく、それは奇壊蟲だった。
「それで?…にーにと私に関係があったら、何?私のことも殺すの?」
「にーに…?」
「にーには、私の養父だよ。今の養母に託される前の」
「……養父」
「というか実子じゃないってことしか私も知らないっていう…。
赤子の私を拾ったのか託されたのかそれか本当は実の子供だけど言ってくれなかったか、他にもいろいろ考えられるけど…知りようの無いことだよ。
…知ってる事なら言うよ。養母に預けられるとき、にーにが言ったから。もしも長く生き延びて、無関係の油女一族と遭遇したとして。にーにのことについて質問されたときは無視していいけど、そのまま食い下がられたら質問が尋問になる前に真実を喋るんだぞって」
「…では真実を喋って貰うとしよう。なぜ奇壊蟲の術を受け継いだ?」
「は?何言っちゃってんの?そんなの木ノ葉の追い忍や、能力研究目的に襲ってくる奴等から身を守るために決まってるでしょっていう…」
「…やはり…息をひそめ、身を隠しながら育てられたということか」
「三分の二は。…10歳の誕生日2日前にして、私は今の養母のとこに預けられたから、そこからは違う。
すぐにその2日後…私の誕生日がにーにの命日なんだって知ったけど。復讐しようとは思わなかったよ。
にーには、その追い忍の追跡を降り切れないことを察して…復讐と怒りの気持ちを私に抱かせないために…私にその現場を目の当たりにさせないために、養母のもとに預けたんだから」
「何?」
「にーには言ってた。にーには復讐を成した結果として木ノ葉を抜けざるを得なくなった。実の親を殺して、だから命を狙われてる。にーには殺したから、殺されるのは当たり前。もしにーにが殺されても、それが正しい事なんだって。
だけど、私が一人で長生きできるようになるまで育てることが最後の使命だから抗ってるにすぎないって。
なんでそんな使命を持つことにしたかは教えてくれなかったけど。
でも、果たせなくてごめんって謝って、にーには私を、偶然通りかかった家に…ジョウルリの養母ブンラクの元に預けたんだっていう」
「君は…テスラが何をした忍なのかも、知っていたのか…!?」
「実父、油女エジンと二人きりの里外任務中に、殺害した。
そのあと、何食わぬ顔で任務で父を失ったと言って木ノ葉に帰還し、実母である油女シソを殺害し逃亡。
これにより油女テスラを除き、電光蟲と擬壊蟲の使い手は潰え、テスラは抜け忍となった。
油女シソはその人柄から、油女エジンは医療忍術を使えたこともあって、夫婦ともに広く人望の厚い人間だった。
…だからにーにの『助けて』は冗談とされた。内情は、にーにを徹底的に虐待していて、傷痕は全て治していた。
そのせいだと思うよ、私がにーにをお父さんとかパパって呼ぶと、3分以内に必ず吐くの。だから私はにーにをにーにって呼んでるの。なんでにーにって呼ぶか気になってたでしょ?」
まるで寄せ来る蟲の津波のように、とめどなくぶつけられた言葉と情報と新事実。
それにシノは対応しきれず、「そうか」としか返す言葉がなかった。
「……2日後、テスラが死んだことをどこで知った?」
「にーにの蟲が教えてくれた。骨と蟻を操る木ノ葉の追い忍に殺されたって。
もしその女がやってきて、自分のことを質問されたら、虐げられ無理矢理従わされながら育ち邪魔になったから捨てられたのだと言えって。自分は医療忍者でもあるから体に傷がない説明もそれでつけろって。それで命を乞えって。
それだけ伝えてその蟲も力尽きた。結局その女はやってこなかったけど」
「骨と蟻を操る追い忍…女…」
その言葉にシノは心当たりがあった。
そして自分が受け持つ生徒であり、自己紹介すら交わしていた、かぐや燈夜こそ、その息子であることも。
「もし今、その女や、その子供に会ったとしたら、どうするつもりだ?」
「その質問は無意味でしょっていう……それに、その子供なんてにーにに何もしてないんだから何の関係もないでしょっていう…」
「無意味ではない。なぜなら、今後生きていくならいずれ、ありえる話だからだ。それに、憎しみは元凶の親族等にも移り得る感情だ。例えば君は……木ノ葉が憎くないのか?」
「うざ。私は過去じゃなくて今を生きてるんですけど。過去に囚われて生きてないんだから、何もしないに決まってるでしょっていう…。
それに木ノ葉を憎む要素なくない?にーにの復讐相手もにーにを殺したのも木ノ葉だけど、にーにやにーにの友達が生まれ育ったのも木ノ葉でしょっていう…。
そもそも、にーにを殺した追い忍の子供にはもう会ったでしょっていう…」
「!」
「屍骨脈のかぐや一族。その生き残りの女が木ノ葉に居ることは、そこそこ有名なことだって元忍の養母が教えてくれたし。…で、どうせあのかぐや燈夜ってのはその息子か義理の息子あたりでしょっていう…」
「……その通りだ」
「プレイルームでも何もしなかったし、殺気だって向けてなかったでしょっていう…」
「それは……」
「信じられない?それとも、油女テスラの罪を私も受けなきゃいけないわけ?私は何もしてないし、血も繋がってないのに、ただ育てられたってだけで?同じ術が使えるってだけで?それとも失われた種の蟲を再度取り戻して存続させるためここで私を捕まえて木ノ葉で飼い殺しにするってわけ?うーわ」
「い、いや…あの……」
「はあーあ嫌になっちゃうなぁこんな理不尽ないよ。エジンもシソも人望あった夫婦でしょ、にーにはそれを殺したでしょ、木ノ葉に戻ったらどうせ私はにーにの代わりに恨まれるに違いないでしょっていう…そのくせにーにと違って医療忍術の才能がない私を出来損ないとかほざいて貶してくるんでしょっていう。あー最悪な一生でしょっていう。私はただ生かされて生きろと言われたから生きていただけなのに勘弁してほしいでしょっていう…見逃してくれないかなぁ…だって奇壊蟲の術は知れ渡ってるけど、他の2種はみんな知らないし普通の奇壊蟲だけ隠してればわかんないでしょっていう…誰にも迷惑かけないでしょっていう…」
「わ、悪いが口を止めてくれないか?何故なら、こちらが話すタイミングを掴めなくなるからだ」
「はあ……じゃあ早く。次の質問はなんでしょっていう」
「急に早くと言われても困る。なぜなら…」
「いいからとっとと次の質問。はやくして欲しいでしょっていう」
「……な…なら、その話し方は誰に似たんだ?テスラには口癖など無かったと記憶しているが」
「……これは、にーにが笑うから…。いつも怖い顔してたにーにだけど、私がこうやって不平不満言っていじけると、困ったように笑うから。…困ったようでも笑って欲しくてそれが癖になっただけっていう…」
「……そうか。しかし…控えた方がいい。何故なら、要らぬトラブルを招いたり、相手が何か話したくともタイミングがわからず困ってしまうからだ」
「は?やどりんもルリりんもブンラクマミーも気にしないからいいでしょっていう」
「親しくない人物にも配慮すべきだ。なぜなら、」
「あのお。にーにの話は終わりで結局私には何もしないんです?ならとっとと戻って欲しいでしょっていう…」
「……。…そうだ、今は何もしない。だが、これだけは聞かせてもらおう」
「何でしょっていう」
「現在の住所と、今後の連絡先だ」
「……」
アサリは袖から出した電光蟲に、世界地図のかたちをとらせてから、波の国を切り取るように拡大させた。
そして波の国のはずれに位置する場所を指差した。
「住んでるのは、ここ……。数年前から結界を張るようになったから、来ても無駄。連絡は…マミーにしてくれれば私に通じる。マミーは、やどりんが少し住んでた洞隠れの里と繋がりがあるから、そこに頼んで。つまり、あの號って子に頼めばいい」
「……なるほどな」
「洞への連絡手段が別にあるならそっち使っても構わないけど」
「承知した」
「…もういいでしょっていう……」
そう言ってアサリは蟲を仕舞った。
演奏も、そろそろ終わる。
っていうか電光蟲って言うんかあれ。モンハンみてーな名前しやがって。
などと思う、器具庫内に盗聴オンの鉛薔薇を転がしつつ、通路の物陰で瞳術を使用してガッツリ観戦していた鉛分身の私なのであった。
しっかし、あの2種の蟲ね。
強力な発光器官と発電器官を持つド派手な電光蟲で気を引きつつ、
発色は自在、かつ、多少の質感変化までをもこなす特殊な表皮でもって不可視と見まごうばかりの擬態能力を発揮する擬壊蟲の不意打ちによって敵を料理するのが基本戦術とみた。
覚えておこう。
いずれ義父を倒す際、彼女達と対峙することになる可能性もゼロではない。
……ハオリさんが私に修業を付けてくれる理由はあくまで、我が母コウの奪還を確実に成すためなのだから。