□16 緋色の花つ月編終了まで[10p]
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「ミツキだよ」
「そうね。バイバイ」
「……」
「…………いや急に並進してきたと思ったらついてもくるんかい」
「ダメだった?」
「ダメダメ。図書館かボルトのとこ行きな」
「君、ボクに対してとりあえずボルトの名前出せばいいとか思ってない?」
「思ってるけど」
「素直だね」
「てか何の用なの」
「特には。ほら、あそこがボクのアパートなんだ」
「たまたま窓の外に私が居たから出てきただけと」
「うん。どこいくの?」
「あうんの門」
「出かけるの?ついていっていい?」
「だめ」
この好奇心旺盛な子ヘビちゃん地味に私に懐いてるんだよな…。
野生動物に餌付けするのは駄目だなやっぱ…。
彼の餌は食べ物じゃなくて質問への回答だけど。
「誰かと待ち合わせ?」
「頼むソロ充させてくれー」
「ソロ充?」
「一人にしてくれー」
「わかった」
しつこいんだかアッサリなんだかわからんなこいつは。
踵を返して帰っていったミツキに振り向くことなく私も目的地に向かった。
サスケを見送るサラダちゃんとサクラちゃんを陰ながら見届けた。
見届けて。
そしてひたすら待ち伏せた。
昨晩ハオリから聞くに、アニメタイミングで水月が発ったって。
つまり順当なら今日中に水月が木ノ葉の里に来るはずだ。
何度か、特に早い連絡用の鳥が行き来するのも見た。
ひたすら物陰で筋肉トレ待機。
鉛分身出して体温調節してもらいながら超スクワットした。
太陽が真上を通過し、下りはじめた頃。
待ち人がやっと来た。
その足が、あうんの門を跨ぎ、木ノ葉の土地を踏みしめた。
瞬間、私は、身を隠していた建物の屋上から飛び上がった。
「ククク……待っていたぞォー!!ン水月ゥウウーーーー!!!」
「ぎゃーーーっ!?」
全力でよけられた。
そのためルパンダイブの姿勢のまま、私は地面に突き刺さったのだった。
閑話休題。
「君、髪そんな長かったっけ…」
「むしろ昨日が特別短かったんですよ」
「というかボクが来ること上層部しか知らないはずなんだけど…誰に聞いたの?」
「愛じゃよ、ハニー」
「……」
「ラブじゃよ…」
「…。それで、ボクが何しに来たかも知ってるワケ?」
「もちろん。探し人はお家じゃないところで修行中さ」
私は笑顔で水月の背中に飛び乗った。
で。
「水月…フフ…すけべなおぐしだね…子猫ちゃんみたいで可愛いね…お口可愛いね…尖った歯がすごくセクシーだよ…嚙み合わせ大丈夫?…すごく水の気配がするね…えっちだね…私火遁使いなんだけど…君は水遁使いなんだろ?…ウフフ…沸騰しちゃうね…結婚する…?」
「た す け て 。」
「う゛わあ…」
千手公園の奥…森林に囲まれた修行場っぽいところで、手裏剣稽古をしていたサラダちゃんに開口一番ドン引きされつつ合流した。
いや私のせいなんですけどね。
三十路の背中に引っ付いて鉛の薔薇出しながら口説きまくってる少女がたわしです。間違えたわたしです。
「また取ってくれる…? コレ…」
「はあ…。號、降りなって。嫌がってるじゃん…」
「えー」
「えーじゃない」
それはそれとして。
ぼちぼちおやつの時間だしお詫びも兼ねてってことで、喫茶来ました。
そこそこお高めの。
「私が注文するから食べたいものを教えてごらん、お姫様達☆」
「いい笑顔すぎてキモいんだけど」
「ボクをお姫様にカウントするのやめてくれないかな」
そんでもって、そこそこ騒がしい通りに面したテラス席で、パフェとか食べながら。
「それで…話っていうのは、えーと」
やがて水月は事情を説明し始めた。
あの時、採取した遺伝子はサラダとサクラのものだから一致していて当然だとか、香燐に頼まれて謝りに来たとか、新しいメガネを届けに来たとか。
私は大人しく二人のやり取りを見届けた。プリンパフェ食いながら。
「……!、じゃあ…本当に私は…パパとママの…」
「ま…、そうなるみたいだね」
「號…」
「よかったね、サラダちゃん」
「うん…!」
嬉しそうに顔を向けてきたサラダちゃんに微笑み返せば、また嬉しそうに彼女は頷いた。
そして、水月がテーブルに置いたメガネケースを引き寄せ、それをゆっくりと開けていた。
「…香燐さんとママの…友情の証かあ」
サラダちゃんは、ケースに納まっている新しいメガネを見つめて、そして、まだ持っていたらしい鷹の写真を、並べるようにして置いた。
通りの喧噪が、室内よりずっと話し声をかき消してくれる。
そのためのテラス席。
けれども。
「!」
「写真が!」
急に吹く風に対処できないのもテラス席。
「…!」
そして通りに面している関係上、知り合いが通りがかることもあるのがテラス席。
「あ…」
「!」
……つまり。
突然吹いた風に飛びかけた写真を、丁度真横を通りがかったかぐや君がキャッチしたということだ。
どんなタイミングやねん。
「これはお前達の、か……!?」
手の中にある写真に目を落とし、そして珍しく目を見開いたかぐや君。
「え…重吾…?!」
そしてそんなかぐや君を見て目を見開く水月。
いやおもろ。
てかかぐや君おま母譲りの伏し目見開くと、さらに重吾にソックリじゃんけ。
「……? あなたは…」
水月の言葉に気付いて我に返ったかぐや君が、そちらに目を向けた。
「あ…イヤ、名乗るほどの者じゃないよ…アハハ…」
に…似てる…!とか思ってんだろうなって顔で両手を振った水月に、かぐや君は「そうですか、」と返していた。
そしてサラダちゃんに写真を返していた。
「やっぱり似てる…」
サラダちゃんは写真を受け取りながら私をチラッと見たが、すぐにかぐや君へとその視線を戻した。
「ねえ燈夜、この人ってあんたにソックリだけど、親戚?」
「いや。驚いたが、知らない」
かぐや君はサラダちゃんの問いに首を振り、そして私に目を向けた。
「無用と言ったはずだが、お前の差し金か?」
「違うけど」
とんだ誤解である。
確かに私は君の父を知ってると言ったが、君が必要ないと言ったの了承したじゃないか。
「…え、何、どゆこと?」
「やっぱり、何か知ってるの…號…?」
ほらー!!もー!!
クラッシュソーダゼリー入りヨーグルトシェイクと紅茶パフェちゃんが私を見るじゃん!!!おのれ!!
「…ああ、うちは母子家庭なんだ。まあ、うちの口寄せ動物の蟻と同じだな」
なんか身の上話始めたんだけどこの人。やめてやめて。
私に向けられた視線は再びかぐや君へと向いたが。
「じゃあパパは…?」
「さあな」
「…ママに聞いたりはしなかったの?」
「教えられなかったし、俺もすでにそれで納得している。號は、俺の父が誰か知っているようだが、俺の方から断った。今更知りたいとも思わない」
「……そう…なんだ」
「あー、ちょっといい?」
「はい」
「好奇心で聞くんだけど…君の名前…教えてもらってもいいかな…?」
「かぐや燈夜です」
「そっ…う。ああ、うん、なるほど、ありがと…」
「?」
あっ水月が察した。
「てか、かぐや君こんなとこで何してんの?」
「ん、ああ。これから買い出しに行くところだ」
「道草いいの?」
「……よくないな。タイムセールに間に合わなくなる」
「バイバイ」
「ああ。悪いな、サラダ、邪魔をした」
「え…いや、こちらこそ、写真キャッチしてくれてありがとう」
「次から気を付けることだな」
そんなわけで、かぐや君は水月にも一礼して、走っていったのであった。
「……それで?」
「ん?何がだいサラダちゃん」
「もしや、この写真の人が燈夜の…なんて言わないよね…?」
「アハハ、言わない言わない。安心して。この世に三人は同じ顔の他人が居るっていうしさ」
「そ、そうよね」
「…………」
おい水月、その顔やめろや。
とか思ってたら今度は。
「きゃ!」
「うわっ!?」
「ええ…」
テーブルに鳥が飛んできた。
赤い頭、長く湾曲した黒いくちばし、白地に淡い黄みがかった桃色…朱鷺色の羽根。
まあつまり朱鷺(トキ)ですね。
つまりハオリさんですね。
くちばしにくわえているのは、白い紐に括りつけられた小型の通信機。つまり『この場からいったん離れてみろ』って指示ですこれ。
「ごめんちょっと席外すね…ちゃんと戻ってくるから」
「え?號…」
「この朱鷺、知り合いの子でさ。ちょっと話したい事あるから来てって合図なのよ」
「あ…そうなんだ」
つって。朱鷺を腕にとまらせて、私はとりあえず店の裏手に回った。
ちな戻るタイミングは最速でもこの朱鷺が帰るまでです。そしてこの咥えてる通信機はガワだけで中身空のおもちゃです。
とりあえず水月に渡した鉛の薔薇と片耳の聴覚を繋げてみた。
いやこれ実は送信木を参考にした鉛版というか…つまり位置情報の特定や必要に応じて盗聴と盗撮機能備わっているので…。
それより。
「――そういえば、水月さんは…號の両親を知っているんですよね」
「?…まあ、一応」
「どういう人なんですか?」
「どういうって…」
「號は、ママとは簡単には合えない、文通もできないってって言っていたんです…」
「…まあ、そうだろうね」
「それは、どうしてなんですか?」
「どうしてってそりゃあ……」
待って。いいのコレ。
腕の朱鷺消えないんだけど。ハオリさん…?
「……言えないようなことなんですか…?」
「…言えないし首を突っ込まない方が…って言ったらますます気になっちゃうよね、コレ…」
「どういうことですか…號のママって…?」
「はあ…しょうがないな。ここだけの話って約束してくれる」
「……!、」
「じゃあ……ここだけの話。まあ詳しい事はボクだって知らないんだけどさ……、あれの母親は誰とも連絡が取れないんだ」
「それは…私のパパみたいに、任務で…とかですか?」
「いや?全ての責務や知り合いや家族ほっぽって、世界中を隠れながら放浪してるだけ」
「え…?!」
「洞との不可侵条約によって追跡やコンタクトもできないんだ」
「不可侵条約…?洞って…號の里の…?」
「そ。いわゆる、探さないでくださいってヤツね。なんでそんな条約出してるかはわかんないけど、どこも洞隠れの里長を敵に回したくはないから…彼女を知る里や人物は軒並み結んでるはずだよ」
「洞隠れの里長って…號のパパ…ですよね」
「いや?」
「え…でも號は洞隠れの里長の娘だって以前…」
「あー…そうなってるの?…なら、義理の娘ってことだね。あれの一つ上の兄キは間違いなく洞の長の子だけど…」
「待って、わかんなくなってきた…、血が…繋がってない…?つまり…號のお兄さんのパパは洞隠れの里長だけど…號のパパは…それと別人…?」
「そういうこと。なかなか珍しいよね、異父兄妹って」
「さ、最低じゃない!それじゃあ號の本当のパパは誰なの!?」
「うわわわ!しー!」
「!…すみません」
「…まあ、気持ちはわかるけどね。全然そんな素振り見せないし」
「……それで、號のパパって…?」
「…やっぱ聞いちゃう?」
「どこの誰で、何をしている人なんですか?どうして號を引き取らなかったんですか…?」
「そりゃ死んでるからね。あれが産まれる前に」
「え?」
「どこの誰って質問は…流石に名前や詳細は伏せさせてもらうけど…かいつまむと、知る人ぞ知るバケモノ…木ノ葉の抜け忍で超大罪人だよ。ちなみに、そのことをあれ本人も知ってる」
「………!? 冗談…ですよね」
「冗談と思うならそれでもいいよ。他の事実があればだけど」
「だって……號は…笑顔で……雰囲気が母に似てるとか、見た目は父似って…すごく普通に…何気なく…」
「うんうん。普通じゃ考えられないよね」
うーん。
軽くなった腕で印を組み、姿を消して近付いた。
「號がたまに…すごく大人に見えるときがある理由がわかりました…」
「まあ義理でも片親や兄キが居るぶんには、孤児とかよりはずっとマシなんだろうけどね…」
「それでも…、…。なんで……なんで言ってくれなかったの…?號…。あなたの方が、私なんかよりずっと……」
「なんかってやめなよー」
「!?」
「ッ!」
「私は不幸比べなんて野蛮なことしたくないだけだし、そうして比べたとしてマシな方が我慢しなきゃいけないなんて道理は全くないじゃない?」
「…號…い、いつの間に…!」
「度合いなんてどうでもいい事だよ。私は苦しくなかった。サラダちゃんは苦しかった。それだけのお話でしょ」
先ほど燈夜が立っていた場所に立ってから、隠れ蓑の術を解いて姿を現せば、面白いほど驚かれた。
「ね、そうでしょ?サラダちゃん」
「……、本当に平気なの?」
「うん。心配ありがとうね。…それからね」
ガッシ!
と、微笑みの表情のまま前触れなく水月の顎をひっつかんでやった。
「ちょっとお口が緩いようだねぇハニー」
「ヒッ!?」
ビックー!と肩をはねさせた水月の顔をグッと覗き込む。
お目々泳がせながらプルプルしとる。
だからァ!
そういう反応するから!
私は!
昨日の鉛分身みたいに大暴走したんじゃん!!
テンション爆上げてニヤニヤがとまらなくなるんだよ!!
衝動のまま私は水月の顎を掴んだ手の親指…が、届かなかったので逆の手で彼の唇をなぞってやった。
手袋ごしではあるが。
「お喋りなお口は塞いであげないといけないね…?」
「――ッ!?」
「?!」
昨日の鉛分身による電撃調教の結果だろう、水化や抵抗を忘れたように水月はただ目を白黒させた。
サラダちゃんも急展開に顔を赤くして顔を中途半端に手で覆ったりした。
そして私はニヤけ顔を水月に顔をぐっと近づけて―――
いや寸止めに決まってるが。
ゆっくりと唇をスレスレに通り過ぎて、代わりに向こう側のほっぺ付近でリップノイズだけを鳴らしてみた、
ら。
カンカララン、と、通りの方で何かが落ちる音がした。
ので、振り向けば……。
真っ青な顔して鉄棒を取り落としたイワベエ君とがっつり目が合ってしまった。
「……ッ!」
ほんでガタガタ震えながらこっち指差して、お口パクパクし始めた。
いやタイミングの女神。
今日どうした???