□16 緋色の花つ月編終了まで[10p]
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翌朝早朝から早々に出発した。
大蛇丸のアジトへと。
その道中も、チョウチョウちゃんにちょっと劣るくらいの速度と息切れをキープし、休憩の度にサラダちゃんにうざったくベタベタ付き纏ったりして。
その途中、ちょっとした仕掛けのあるエリアを通り抜ける為、二手に分かれる必要があるところがあった。
このエリアを回り道するとかなり時間が取られる為、二手に分かれることになるまでは良かったが。
「――バランスを考えたら、こういう形になるだろうな」
そう言って私の後ろに立ったサスケ。
私は後ろに立たれるのが嫌というスタンスを心掛けているため、さりげなく数歩斜めに下がるようにしてサスケの横に立てば、その場に『こういう形』が出来た。
「子供二人守りながら戦うのはナルトの方が向く。その代わりオレは、一番遅れをとっているこいつを引き取る。文句はない筈だ」
いや、まさか。
サラダちゃんとチョウチョウちゃんとナルト、サスケと私、という組み合わせになるとは思わなかった。
確かに私がチョウチョウちゃん以下のスピードと強さであることを考えれば確かに妥当ではあるが。
「……いいのかサスケ」
「何がだ」
「いや、折角ならサラダと一緒に」
「これは遠足じゃない。いつ誰が再び襲撃を受けるかわからない」
「パパ…」
「昨晩、言ったはずだ。くだらない私情を持ち込むなと」
「……」
「ふあああんそんな!サラダちゃんと離れ離れなんてェあ痛!」
パパと一緒に行きたいけどそれも気まずいし断りたいと思っていたがいざ本当に一緒に行けないとそれはそれでしゅんとするそんな女心のサラダちゃんに抱き着こうとしたら頭に鉄拳を頂いた。
けどそれだけでいつもの悪態はなく、頭押さえてしゃがんだ私を見下ろして、複雑そうな顔をして黙っていた。
「え、やだ初めて見る表情にドキドキしちゃうィイッテぇ!おうっ!?」
茶化したら無言でもう一発貰った。
そしてそれに引きずられるように数発、八つ当たりをするように震える手でポカポカされた。
「ああん!愛の鉄拳をありがとう!」
「……、違うわよ!相っ変わらずバカ!ほんと!」
サラダちゃんはスーッと息を吸って、吐いて、そしてブチッといつものようにキレた。
いつものように怒鳴られて、最後に力いっぱい殴られた。
「ああもう馬鹿々しい! こんな人達放っといてとっとと行きましょう七代目!チョウチョウ!」
そしてプイッと背を向けて、ナルトとチョウチョウの手を持って、片方のルートの方へ引っ張っていった。
「え、あ、ああ…」
「號あんた流石にもうちょっと空気読めた方がいいわ」
チョウチョウちゃんがそう言い捨てて、三人はあっという間に草木の向こうに行ってしまった。
しっかし私の一族ひいてはこの瞳術にはわかっちゃうんだよなぁ。
サラダちゃんが心の中で私に『…ありがとう』っつったこととか。
いや、落ち込む気持ちをいつものウザ馬鹿々しさで吹き飛ばして、いつもの振る舞いに戻るタイミングをくれたことに対してって感じで。
そんで、
「オレ達も行くぞ」
「うす」
ずっと何か言いたげにしていたサスケの口をついた言葉はそれだけだった。
もう一方のルートへ向けて地を蹴ったサスケのあとに、私も続いた。
しばらく無言で走り続けて、カマかけに気付いた。
「あの少しずつ早くなってません?付いていけないんですが」
「……」
気付いたので指摘してみれば、サスケは無言で元々の子供用スピードに戻してくれた。
次にサスケが口を開いたのは、またしばらく走り、私が息切れの演技をし始めたあたりだった。
「白々しい」
「何が、ですか」
「走り方も、疲れ方も、サラダへの態度も、全てだ」
「言ってる、意味が、理解、しかねます…」
しらばっくれてみた。
他にも色々…なんかもう色々言われたが、全てサッパリしらばっくれてみたところ。
やがてしびれを切らしたように、斬りかかってきた。
いやちょっと待てやサスケ。
「ひぃっ」
ってちゃんと怯えて尻餅までついてとっさに手を前にするド素人ガードまでしたんだけど…、こいつ全然寸止めしないじゃん。
キレそう。
「…!」
手袋の繊維に刀の切っ先がほんの少し潜ったところで、サスケは弾かれるように後退した。
「やはりな」
などと言って、私が発した雷遁がその刀に触れる前に、見事逃れたサスケ。
涼し気に刀を収めて、再びルートを走り始めたサスケに私は続いた。
「やはりなじゃないが」
「何が出てくるかと思えば、千鳥流しとは。やはりお前はコウの子らしい」
「話聞かねえなお前な」
「そうさせたのはお前の方だ。ここまで見られた以上、もうシラを切るのは無意味だと思うが?」
「なんでこう……いい年して好奇心旺盛なやっちゃなあ」
「その態度、ますますコウを思わせるな」
「どうも」
ガッと、幻術に隠されていたこのエリアの仕掛けを蹴り動かして通り過ぎる。
幻術を発していた術式はそのままにしておく約束だ。そうすれば今しがた蹴り動かしたスイッチは一時間後に自動で戻る。
これ動かさないと合流地点にたどり着けないんだよ。
「よく気付いたな」
「気付くと思ってたから目線も合図も無しにスピードすら緩めなかったんですよね」
「ああ。昨晩の分身の完成度と盗聴技術に、先程の千鳥流しを見ればな。お前は間違いなくコウの才を受け継いでいる」
「あのォなんでもかんでも簡単にこなす神レベル全知全能の天才と一緒にしないでもらえます?こちとら必死に積んでんですが」
「どうだかな」
そもそも私はマダラの娘と言われたいのですが。
タッタッと、スピードはこのまま、ここ一番の大木の樹洞をくぐりぬけた。
息切れの演技はもうやめた。
「もう一度聞く」
「どれを」
「サラダに偽りの好意を向けるのは、写輪眼を奪うためか」
「だから違うって。要らないよそんなの」
「だがお前は写輪眼が欲しいはずだ。コウ由来の瞳術は術者に宿るが、眼球に宿るマダラ由来の瞳術については全て固く封じられていると聞いている」
「確かに写輪眼を得るなら瞳の交換が最も手っ取り早いけどさー、それがしたいなら一番上の兄貴に頼んでるわ」
「……」
「テン兄様元気だよ」
「そうか」
イタチの子供のことはやっぱし気になるらしい。
ポーカーフェイス気取りながら想い馳せてんねん。
と思ってちょっと無言で進んでたら
「……ならば、なぜサラダに関わる?」
話し戻された。
「何度も言いましたけど、好きだからじゃなんでダメなんですか」
「何度も言ったが、ならば、サラダに対する殺意の理由はなんだ。オレのように、先入観なく疑っていなければ気付けないほどの…サラダを視界に入れる度に発される一瞬の殺気を」
「だからーただのサラダちゃんを見た喜びと興奮によるドキン☆を見間違えただーけですって」
「お前、サラダが嫌いだろ」
「サラダちゃん大好き人間にすごいこと聞くな」
「感情の高ぶりを素早く別の感情の高ぶりに変換しているだけだろう。あの茶番と、お前の年齢を抜きにして観察すれば分かる。サラダに対する無意識下での距離の取り方と瞳孔の開き方から感じられるのは…、明確な敵意だ」
あらぁ。
「……なら私が今までバレなかったのは年齢補正による侮りからってことで、もし私が大人なら、手練れの目にはあれが演技とすぐバレると言いたいわけだ」
「心理戦を得意とする上忍以上がその気になれば軒並みな」
「ふむ、その気にならなきゃセーフと」
「……何が狙いだ」
「んー…じゃあ、皆には秘密ですよ?火影や元火影やサクラさんにも。私達だけの秘密」
「それはお前の返答次第だ」
「そりゃそうだ。ままええわ」
出来ない約束とか安請け合いしない人のようでなにより。
私はスーハーと深呼吸をした。
「ただのくだらない八つ当たりでしかない」
「八つ当たり?」
目前の崖を難なく飛び越えて、ここからしばらくは平坦な道か。
「私はうちはマダラの娘になりたい」
「何を言っている?」
実際に娘だろう、という視線が寄越された。
「言い方を変えようか」
事実だけじゃだめなんだ。
「マダラが正式に娘と認めるような、『さすがオレの子だ』と言ってくれるような」
「!」
「そんな娘になりたいんだよ。私は」
「……お前は、自分の父親がどういう人間だったか知っているはずだ」
「手段を択ばず『成し遂げた人』だろ。たとえそれが間違いでも、その過程と行い、強さと人柄に私は惚れたんだ」
「待て。今、お前の父マダラの話をしているはずだ」
「ああ、確かに私は生まれてこの方、生前の父を知らない。だが失念しないで欲しい、私は対之の分家であるトワニの里長…トワニイッタイの義娘だ」
「……」
対之には、他人の記憶をそっくり受け継ぐ秘術がある。
主に里長の世代交代時に使用される術であり、記憶を注がれる側は前もって厳しい精神修業を終えとく必要がある。
このことについてサスケは私の母コウから聞いたことがあるはずだ。
そんな対之の分家トワニの里長の元で育ったんだから、生前マダラについて知るすべを持っていたとして不思議じゃないだろ?と遠回しに言ってみた。
「…なるほどな」
そしてサスケは納得したようだった。
実際そんなすべがあって使ったとは言ってないが。
「だがそれとサラダに何の関係がある」
「……言葉にするのも恥ずかしい、くだらない八つ当たりだよ」
「それはもう聞いた」
「私はうちは號になりたい。マダラにそう呼ばれたい」
「……なら、そう名乗ればいいだろう。面倒な手続きや今の家族の納得を得る必要はあるだろうが、血統そのものは火影が認めている。親族を非公開に、その資格を得ることも可能なはずだ」
「今の私は弱い。頭も悪い。言葉を知らぬ獣であり、簡単に踏みつけることの出来る砂利でしかない。そんなのが、父様と同じうちはの紋を背負う資格はない」
「……」
「父様の娘として納得のいく強さを得られない限り、私にその資格はない。今の私が強引に背負ったとしてもそれは別物の、父様に背を向け千手に下った方の…
腰抜けのうちはだ。
!」
ギン、と金属音が鳴った。
続けて数発。カキン、カカカ、ガッと。
サスケの刀と、私の鳶口がぶつかり合って、やがて互いに距離をとる形で飛び退いた。
「やっぱ本音は口にするものじゃないね。怒ると思っていました」
「……想像以上の危険思想だ」
「イズナ叔父さんやタジマおじいちゃまならきっと褒めてくださると思うんだけどなぁ」
「それらは遥か過去、戦乱の世の人間だ」
「知ってるさ、もちろん。だから、恥ずかしい八つ当たりなんじゃないか」
構えを解かず、ルートを歩き出す。
するとサスケも同じように歩き出した。
「落ち着いてよ、悪口のつもりじゃないから。イタチさんやフガクさん…とにかく、あなたの世代のうちはを馬鹿にする意図は決してないから」
「腰抜けと聞こえたが」
「その辺を深く考えさせないで欲しいんですよね。確かに、父様も完全に時代遅れの的外れな危険思想でしたから誰も付いていかなかったわけですし。もし私がその時代のうちは一族の一員だったとして、私だってマダラを厄介者扱いしただろうなとも。無限月読を拒むなどという低俗な真似はしないだろうが」
「……」
「こう言えばいいですか?あなた達ご家族が背負っているのは正気のうちは、私が背負わんと欲しているのは狂気のうちは」
「その認識があるにも関わらず……いや、それは皮肉か?」
「滅相もない。それでも私は父様が好きというだけだよ。たとえ狂人でも、変人でも、もしやホモでもね」
「……」
互いに武器を構えたまま、平原を歩く。
刀の切っ先と、鳶口の先は、一寸たりともぶれることなく向かい合っている。
サスケの瞳は終始黒いままだが、鋭く私を睨みつけている。
……アホらし。
「まあつまり、だからって里や誰かを傷つけたりは誓ってしませんよ」
私は武器を仕舞った。
封印し直したともいうが、ともかく私の鳶口はボンと跡形もなく消えた。
「話を戻しましょう」
いつまでもこのままの空気はいかんでしょ。
「……」
走り出した私に、サスケも刀を納めて走り出し、すぐに私を追い越した。
…あっ、ここからやや左寄りに走るの?まっすぐ行くとこだった。