□15 緋色の花つ月編途中まで[8p]
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「やめてパパ!!」
「!」
サラダちゃんの声が響く。
簡単に腕と背後を取られ、地面に叩きつけられた私に向かっていた刃が止まった。
フルフルと見つめてくるサラダちゃんの瞳には、涙の跡と、一つ巴の写輪眼が痛々しく主張するように残っていた。
「さ、サラダちゃん…、パパって……?」
私は、すでに『サラダに付きまとうクラスメート』の仮面をつけ終えていた。
そして「まさか、」と。
自分が誰に何をしようとしたか、気が付いたように息を呑みこんでみたりした。
「どうして無茶をしたの、號!」
「……わ、私、サラダちゃんが不審者に襲われてると思って…」
首だけを上げた姿勢のまま、言い訳をする。
サラダちゃんの言動から、私が知り合いであると認めた時点でサスケは既に私の背中から足を退けていた。
――大剣を振りかぶって走り出した私は、しかしサスケを大剣の間合いの内に入れることもできず、サスケに回り込まれていた。
音もなく背後から腕を掴まれながら、背中を足蹴にされて倒された。
大剣はガランと落ち、そうして足蹴のまま腕のみを解放されたと思えば、鞘から刀を引き抜く音がした。
動く首だけを向けて振り返れば、右肩にその刃が迫っていた――その刃は止まったが。
私はうつ伏せから起き上がりながら印を結び、先ほど派手に落ちた大剣を足首に封印し直した。
「やっぱりここか!」
ナルトとチョウチョウちゃんが塔の扉を開け放ったのは、まさにその直後だった。
ここからは原作通り進んだ。
私が居ることによる変化はなく、私はチョウチョウちゃんの近くでじっとしていることに専念した。
「これあげっからサラダと仲直りしたら…… コンソメ味」
つってポテチ差し出すチョウチョウちゃん無視してサスケは
「! ……お前ら少しの間この塔から出てくるなよ」
などと言い残して塔の外に走り出していった。
言いつけ通りサスケを追わずに塔の壁に背を預けたチョウチョウちゃんは、おもむろにポテチの袋を開けていた。
コンソメ味のにおいがして、パリッと小気味の良い音が耳に届いた。
「もー…あちし気まずい空気って嫌いだし…號あんたいつもみたいにふざけるなりしてなんとかしてってほら」
「やー無理だって。チョウチョウちゃんにもできないこと私に出来るはずないって」
チョウチョウちゃんの言葉に返しながら、塔内の様子を見物するように動き回る。
そうしながら私は、隠れた右瞼の下に瞳術を光らせていた。
密閉された塔の中は静かで、ポテチを食べる音がさらに、外の戦闘音をかき消していた。
それでも、感知に集中すれば聞き取れる程度のものだから問題はないが。
筋書き通り物事は進んでいる。
筋書き通りでない物事があるとすれば――――。
私は、何気ない興味に押された感じで、塔の二階へ続く階段を登った。
続けて足音を殺して走り出し、真っ直ぐ三階へ。
さらに四階へ続く階段へ向かって走り、止まる。
「君かな」
「……」
予想通り、その階段を音無く駆け下りてきた、うちはシンのクローンに話しかけた。
二階への階段に続く道を塞ぐように立てば自然と対峙するかたちになった。
三人目のシン。
彼のことは全く聞いていないし、記憶にもない。
外では問題なくオリジナルのシンとクローンのシンが戦っている。
シンが手にしているのは、原作通りの得物。
十字の取っ手が付いた矢印のような形の……大手裏剣とジャマダハルを混ぜたような専用武器。鎖はない。
「お前達、守られた。それなら、人質になりえる」
立ちはだかった私に、シンは抑揚なく告げた。
その得物を振りかざして、私に向かってきた。
ガッと、鈍い音が鳴る。
「だからサスケが外におびき出されてった今、捕まえるために駆け下りてきたと」
がちがちと鍔迫り合いを起こしながら、私はシンに微笑んでみせた。
シンは左手に飛び退いた。
背後に迫っていた鉛分身の私にいち早く気付いたらしい。鳶口での一閃を見事回避してみせた。
「うちはサスケ、殺す。眼球だけ奪う。お前達、そのための人質……」
「なるほどね」
私は今さっきまでシンの得物と鍔迫り合いをさせていた千鳥団扇をパタパタと扇いだ。
既に一人の鉛分身は外の『筋書き』を見つめてリアルタイムで記憶共有をしている。
もう一人は鳶口と千鳥団扇を持ってシンと楽し~く踊っている。なお、その鉛分身が手にしている得物は両方とも別の鉛分身が変化したものだ。
「……お前、一番強い。一番弱く見せておいて、一番強い子供…」
「どうも」
「そのチャクラも、変。普通じゃない…」
「へえ、どう見える?」
大きく息を乱して戦っていたシンは、そこで刃を止めた。
シンが攻撃をやめれば、私も当然攻撃を止める。
シンは万華鏡写輪眼で改めて私を見上げ、続けた。
「三つのチャクラ。よく見ないと、一色…。よく見ると、斑模様……すごく細かい、斑模様」
「なるほど。そう見える感じなのか」
「イヤ……、三つじゃない」
そういうとシンは何に気付いたのか、正面に対峙していた鉛分身の私と距離を詰めた。
敵意なく近づいてきたシンは、その私の二の腕をぎゅっと掴んだ。
グイと、くっつきそうなほど顔を近づけて、眉間にしわが寄るほどジッと目を凝らしていた。
まるで細かい文字を読むように、私のチャクラを見ていた。
「三つのチャクラのうち、一つが…もっと細かい…さらに三色の斑模様……」
やがてシンはそう言った。
「あー…」
「その三色は、そのうち二色が、さらに三色の斑模様……そこから先は、もう、細かすぎてわからない……」
「なるほどなぁ」
間違いなく、母の一族の特性やなと。
子に親のチャクラをそのまま流し込み、切り離す、という性質の。
どこまで遡れるのか、果てはあるのか、それはわからないけど、つまり、私本来と父と母の三つのチャクラがそれぞれ独立しながらも結合しているのが私のチャクラということだ。
そして、私の母コウのチャクラが、さらに私と同じ三つ構成になっていると。
ゆえに、私は母のみ対之一族ゆえに三つのうち一つが三色構成なのに対し…、母コウは両親ともに対之一族の者だから、そのうち二つが三色構成…となっているわけだろう。
「お前のチャクラ……変……」
「わかるってばよ」
シンはそこでハッとしたように私から距離を取った。
あららナルトの口調を真似たせいで我に返っちゃったのかしら。
「お前……どうして攻撃しない」
「うん?」
「傷をつけるタイミング、沢山あった。なのに、オレまだ血を流していない。解せない」
「そりゃあ、傷つけたくないからね」
君は本来ここに来るはずのない、つまり傷付く予定の無い存在だ、とまでは言えないが。
くるくると鳶口を回してそのように答えれば、シンは、少しの間沈黙した。
既に呼吸が整ったにもかかわらず戦闘再開する気配もなく、やがて視線を本体の私に向けてきた。
「……お前、オレだけで捕まえるの、無理。ここの突破も、無理」
「ん」
「父様の方、加勢する……」
そう言って外へ臨む戸へ向かって走り出したので、私はその首をガッシと掴んだ。
シンはスダンッと派手に足をもつれさせて止まった。
「ッ!!」
「それはちょっと困るからこうしようか」
外の『筋書き』もいい具合に佳境だ。
よって私は、シンに思い切りチャクラを渡した。カチリと首元で音が鳴り、シンのチャクラが思い切り私に流れ込んできた。
首飾りは健在だ。
イタチの子が作った作品だと言えばどういう反応をくれるだろうね。言わないが。
「……!! カハッ ゲホッグホッッ」
突然、一瞬にして大爆発的にチャクラを吸い取られたシンは、空咳を数発した。
全身から力は抜けて、首を放せばドチャリと崩れ落ちた。
動かそうとしているのだろう腕や脚は、プルプルと震えるだけだ。
ヒュッと息をするだけで精一杯なシンに口封じと言語封印の術式を刻んだ。
その身体を、別の鉛分身が抱え上げた。そうしてそれは勢い良く戸へ走り、そこを開け放ち―――!
「ダァッシャラァ!!」
「!!??」
「何だ!」
「號!?」
「んなァ?!」
「誰ッ!え!?この子って……!」
外の皆さんトコに投げつけてみた。
というかサクラとその傍らに横たわるシン二人めがけて。
投げられたシンは、ろくすっぽ抵抗もできずにドザザッと落ちていった。
「まさかこちらもが失敗するとは想定外だ。いったい何をした?」
そして背後の、随分下の位置からやってきたシンの声。
ずっと発動していた瞳術にバッチリ捉えていたので驚きはない。
「彼の病状はただのチャクラ切れ。言語封印の術式は24時間後に解ける。ところであなた誰?」
振り返れば、もう小さなシンはその場所から飛び去っていた。
行き先は勿論、下へ。
「こいつごと連れていく!」
小さなシンが時空間忍術を発動し、三人のシンとサクラの姿が消えた。
場は騒然とする。
ひとまず私は、死角である塔内部に駆け戻らせてから鉛分身を消した。