□13 ハロウィン
ドリーム設定
ドリーム設定□このブックはドリーム機能を使用しています。
名前を入れると、登場人物に自動変換します。
より楽しく読むために名前を記入して下さい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――さて、と。
しばらく歩いたヒサキは口の中の飴玉を排除すべくガリガリと歯を立てはじめた。
毒見代わりに口に入れて見せたというだけで、この味が好みなのかと言えばそうでもない。
人工的なイチゴ味はうざったい。
などとどうでもいい思考をしながらヒサキはスリザリンの寮目指して廊下を歩いた。
地下に続く階段にいよいよ近づいたそのときだった。
バキン、とヒサキは飴玉を噛み砕いた。
耳に届く音と、ついさっきまで対峙していた鋭い異臭に、ローブで鼻先を覆った。
そしてあたりを見回してから、自分に目くらまし呪文をかけた。
冷たいものが流れる感覚と共に姿を消したヒサキは、飴をゴリゴリと粉々に砕き、飲み込みながら進路を変えた。
好奇心を躍らせながら。
(あまりにも都合が良くはないか?)
§
道の先に居たものは、ヒサキの予想通りのお品だった。
元気そうなトロールがそこにいた。
頭の悪そうな唸り声をあげる巨大な体躯に小さな禿頭、灰色の肌、大きな棍棒は先ほど見たのと微妙に違うところから別個体であることがわかる。
(二体入れていたのか。これについては本編で言及されなかったが……つまり、これは私の好きにしていいものだ)
ヒサキは上機嫌に杖を振り上げた。
まずは特大のスコージファイが炸裂した。
あたりに立ち込めていた異臭が一瞬のうちに消え去り、トロールが愕然と飛びあがった。
何事だとキョロキョロあたりを見回したトロールの顔面に向けて、さらに、今度は違うイメージのスコージファイをぶつけた。
直ちに泡ぶくがトロールの鼻や口、目頭に沸いてきた。
相当しみる事だろうし苦しいだろう。トロールは、ブォッゴボァゴボッ、と棍棒を取り落として醜く大きな両手で顔面を覆いながら訳も分からず咳込んだ。
想像通りの反応に愉悦の止まらないヒサキは、そこにインカ―セラスを2つ放った。
トロールの両腕と首がシッカリとまとめられてぐるぐる巻きにされ、その両足首もがっちりと縛られた。
ダメ押しにその足元に再びぶくぶく洗剤のスコージファイを放てば、それは面白いほど思い通りに、ずるりと足を滑らせた。
ドシーン!
1tにもなる体重が、場に大きな振動を響かせながら、その醜い生物は汚い悲鳴を上げてみじめに転がった。
ふと、無垢で無知な生き物がわけもわからずこんな目に合うのは酷く可哀相に思えたが、しかし今のヒサキはそれよりも、完全に己の力を試したい気持ちでいっぱいだった。
それに、不潔な生き物を憐れむほど慈悲深くなる気分でもなかった。
(力を示したくて、歯がゆくて仕方がなかったんだ。人に知られることよりも、私がそうしたという事実だけが重要で、それさえあればいい)
ヒサキは目の前にできた素敵な実験体に杖を向けた。
デパルソで毬のように転がし、トロールが悲鳴とうめき声をあげる。
フリペンドで強力すぎる衝撃を与えればその固い皮膚であろうと破裂するように抉れた。
不潔な血を流しながらうめくマウンテントロールに打つ次の呪文を考えながら杖をくるりと遊ばせたその時。
ヒサキの耳が、自分とトロールのものではない足音を拾った。
ヒサキは瞬時にステューピファイをトロールに放ち、足音を殺してその場を離れた。
トロールはライフル弾の様に赤く鋭い光線を突き刺された。
醜いうめき声が嘘のように止まった。
完全に昏倒していることは、目視で確認するまでもなかった。
ヒサキがある程度距離を離したところで、トロールを置いてきたほうから「ヒーッ!」と声が上がった。
思わずヒサキは足を止めた。
振り返れば、クィレルがしきりにあたりを確認しながら杖を取り出しているところで、ヒサキは肝を潰した。
今すぐ近くにいるところで痕跡追跡魔法でも使われたらたまったものではない。
音を殺しながら、なるべく急いで やたらめったらに角を曲がり、その場を後にした。
しばらくして、クィレルが怯えた演技で人を呼ぶ声が聞こえてきて、どうやらまけたようだと断定した。
ならばとヒサキは急いで目くらまし呪文を解き、グラスを呼び出した。
ささやき声の屋敷しもべ妖精、グラスの手を借り、すぐさまスリザリン寮のほど近くにある物陰に屋敷しもべの姿現しでエスケープした。