□13 ハロウィン
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先駆けて飛び込んできたのはグリフィンドールのマクゴナガル。
それに続いてやってきたのはスネイプと、最後にクィレルだった。
クィレルはトロールを見たとたん、ヒーッと弱々しい声をあげ、胸を押さえて座り込む。
倒れるトロールすら恐ろしいというふりをした。
目を瞑りしゃがみ込んで安心したふりをしているヒサキに、クィレルは一瞬だけピントを合わせたが、しかしすぐにトロールを恐れるふりに全力を注いだ。
スネイプは足を踏み出した。
「どけ」
これ見よがしに身構えたハリーをスネイプは煩わしそうに睨み付けた。
ハリーはそそくさと道を開けようとして、しかし目を瞑って俯いているヒサキを見つけ、その腕を引っ張った。
ヒサキは、俯いたままではあったが、大人しく腰を上げてハリーの力に従って動いた。
スネイプはそれを一瞥し「疚しいことが無いというなら顔を上げておくべきだと思うがね、Ms.ヒカサキ」と言って、彼女とすれ違った。
「はい、すみませんでした先生……」
それを聞いてすぐヒサキはそっと顔を上げたが、スネイプはすでに背を向けていた。
のびているトロールの顔をのぞき込んでいた。
そこでマクゴナガルが発言を知らせるような咳払いをした。
ハリーの手が離れ、ヒサキがそこで再びしゃがみ込みながら、そちらに顔を向けた。
今にも大きな猫の唸り声が聞こえてきそうなほどに不機嫌な顔をしたマクゴナガルが、それは厳しくハリーとロンとヒサキを見すえていた。
「一体全体あなた方はどういうつもりなんですか」
怒りに満ちた声色が、冷静な口調で襲ってきた。
ハリーはロンを見た。
ロンはまだ杖を振り上げたままだった。
ヒサキはしゃがんだままマクゴナガルをじっと見上げていた。
「殺されなかったのは運がよかった。寮にいるべきあなた方がどうしてここにいるんですか?」
その言葉の返答は、薄暗いトイレの奥から聞こえてきた。
「マクゴナガル先生。聞いてください――二人とも私を探しに来たんです」
「Ms.グレンジャー!」
不意をつかれたマクゴナガルが、驚いたようにその存在を認めた。
ハーマイオニーは小さな声で、やっと立ち上がっていた。
「私がトロールを探しに来たんです。私……私一人でやっつけられると思いました――あの、本で読んでトロールについてはいろんなことを知ってたので」
カツーンと、ロンが杖を取り落とした。
ハーマイオニーが教師に嘘を吐いている、その事実に。
ハリーも、信じられないようにハーマイオニーを見ていた。
ヒサキだけは振り返らず、再びその場で俯いて、ハーマイオニーの言葉を聞いた。
自分がどのように捏造されるのか、楽しみに耳を張った。
「そんな私に気付いたのが、ヒサキでした。ヒサキは何度も考え直すように言ってくれて、でも私は耳を貸しませんでした。それで、告げ口もされたくなくて、無理矢理つれてきたんです。
でも私、トロールに見つかったとたん、腰を抜かしてしまって……ヒサキは私を庇って、トロールの気をそらして時間をかせいでくれました。
そこで私達を見つけて駆けつけてくれたのがハリーとロンだったんです。
だから……もしヒサキが居てくれなければ、……二人が私達を見付けてくれなかったら、私、いまごろ死んでいました」
ヒサキは内心なるほどとにやついた。
「ハリーは杖をトロールの鼻に刺し込んでくれ、ロンはトロールの棍棒でノックアウトしてくれました。二人とも誰かを呼びにいく時間がなかったんです。二人が来てくれた時は、私達、もう殺される寸前で……」
ハリーもロンも、そのとおりです、という顔を装った。
ヒサキもそのタイミングで顔を上げ、直ちにハーマイオニーの言葉通りの情景を浮かべ自己暗示をしながら、マクゴナガルを真っ直ぐに見た。
「まあ、そういうことでしたら……」マクゴナガル先生は4人をそれぞれじっと見て、ハーマイオニーの言葉を信じた「Ms.グレンジャー、なんと愚かしいことを。他の寮生とはいえ、学友の忠告に耳も貸さず、たった一人の力で野生のトロールを捕まえようなんて、そんなことをどうして考えたのですか?」
ハーマイオニーはしゅんとカワウソのようにうなだれた。
「Ms.グレンジャー、グリフィンドールから五点減点です。あなたには失望しました。怪我がないならグリフィンドール塔に帰った方がよいでしょう。生徒たちが、さっき中断したパーティーの続きを寮でやっています」
ハーマイオニーはとぼとぼと帰っていった。
すれ違う時にヒサキは「あ…」と遠慮がちに声を上げたが、ハーマイオニーはそのまま通り過ぎて行った。
ハーマイオニーの退室と共に気を取り直したマクゴナガルは、改めて三人の方に向きなおった。
「先ほども言いましたが、あなたたちは運がよかった。でも大人の野生トロールと対決できる一年生はそうざらにはいません。三人には一人五点ずつあげましょう。スネイプ先生、よろしいですね?」
マクゴナガルは念のためヒサキの寮監に確認した。
「お任せしましょう」スネイプは二つ返事だった。スリザリンに入る点をどうして拒む理由などありはしなかった。
マクゴナガルもその返答が想定通りという感じですぐにうなずいた。
「ではそのように」
「えっ私もいいんですか」
とうのヒサキは不意をつかれたふうを装って、自分の評価を聞きたがった。
「トロールを前にしてMs.グレンジャーを見捨てることなく食い止めたのでしょう?聞くところによると、つい先ほど退院したばかりというあなたが。違うのですか?」
「違いません、ですが私は二人と違ってトロールにダメージらしいダメージも与えられなかったし、多少粘れたとはいえ結局追い詰められてたのに…」
「しかしその勇気と稼いだ時間は評価に値します。ええ。しっかりとダンブルドア先生にご報告しておきます。」
そう言ってマクゴナガルは腰に手をかけて三人を見回した。
「Mr.ポッター、Mr.ウィーズリー、帰ってよろしい。Ms.ヒカサキはスネイプ先生の指示に」グリフィンドールの寮監であるマクゴナガルが、ハリーとロンにキビキビと言いつけた。
スリザリンの寮監であるスネイプはヒサキを見下して吐き捨てた。
「速やかな帰寮を」
ハリーとロンは急いで部屋を出ていこうとしたが、ハリーのズボンが何かに引っかかった。
「ヒサキ?」
見やれば、ヒサキがハリーの裾をつまんでいた。
「ごめん」ヒサキは申し訳なさそうに笑いながらハリーを見上げた「安心して力が抜けちゃって……」
ハリーは、そうするべきだと思って手を差し伸べた。ヒサキはみなまで言わずとも意図を組んだハリーに「ありがとう」と礼を言ってその手を取った。
「少し歩いていれば落ち着くと思うから、それまでごめんね」
掴んだヒサキの手を軽く引っ張れば、思ったよりすんなり立ち上がった。
そのままハリーは、ヒサキの手を引いてロンと合流し、揃って廊下に出た。
しばらく歩いて、三人はやっとトロールの異臭から解放された。