□13 ハロウィン
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ヒサキは長い息を吐いてハーマイオニーから手をゆっくり離し、袖口で鼻を覆って、念のため杖を向けながらトロールに近付いた。
鼻はもう悪臭に慣れ始めてはいたが、臭いものは臭かった。
その悪臭にしがみ付いていたハリーも立ち上がった。
もしトロールが仰向けに倒れていたらきっとイクラのように潰されていたであろう脆く小さな体をブルブル震えさせ、太腿に手をついて息も絶え絶えだ。
ロンは今さっき唱えた浮遊呪文を維持していたままの、杖を振り上げた姿勢で、自分の行いと結果に茫然としている。
「これ……死んだの?」やっと喉の硬直が解けたらしいハーマイオニーがぽつりと発声した。
「いや、ノックアウトされただけだと思う」ハリーの目の前には、ピクピク動くトロールの見たくもない醜い顔があった。
そこでトロールの頭部が見える地点に到着し、ハリーの傍へとやってきたヒサキは、トロールの不潔で醜悪な顔に杖先を向け直した。
そうしてヒサキは予定通りにしらばっくれた。
「ホグワーツってトロール放し飼いにしてるんだっけ」
「もしそうなら、パーティー中にクィレルが慌てて駆け込んできて、全員寮に避難なんてことにはなってないよ…」
ハリーは屈み込んで、トロールの鼻に突き刺さったヒイラギの杖を引っこ抜いた。
「ウエー、トロールの鼻くそだ」
「スコージファイ」
ヒサキはすかさずサンザシの杖を振った。
ハリーの杖にベットリとついていた、ねばねばてらてらとした不愉快な輝きと灰色の糊の塊のような汚物が一瞬にして消え去った。
僅かな手垢も除去されて、新品のように清潔だ。
「ありがとうヒサキ」
「こちらこそ助けてくれてありがとうハル。ロンもね」
ヒサキは杖先をすぐトロールへと戻しながら、ロンにも軽く顔を向けた。
ロンは未だポカンとしてNowLoading...中のようだった。
「それより、ヒサキはどうしてここに?」その横顔にハリーが訪ねた「身体はもういいの?僕たちハーマイオニーを助けに来たんだけど……」
当然の疑問だった。
「パーティ直前に退院したんだよ。そしたら、大好きなハーマイオニーが落ち込んでるなんて聞こえてきたもんだから、まあそういうこと」
「そうだったんだ…」
ハリーはそれで納得したようだった。
ハグリッドの小屋でお茶した時もそうだが、元々ヒサキはハリーやロンの前で幾度となくハーマイオニーに対する好意を示していたため、特に不審には思わなかった。
それよりとヒサキはトロールを再び見下ろした。
「どこから来たんだろうね」そう言ってヒサキはサンザシの杖先をくるくると揺らした。
「さあね」
ハリーが答え、全員がなんとなくトロールに意識を向けたついその時だった。
バタンと、いままで半開きであったドアが跳ね除けられるように開かれ、バタバタと足音が聞こえてきたのは。
そして、四人は顔を上げた。
ヒサキは、ずっとトロールに向けていた杖をゆっくり下ろし、とたんに糸が切れたようにストンとしゃがみ込んだ。
両手を膝先に添えて目を瞑り、俯いて、長く息を吐くように呟いた。
「生きてるぅ……」
大人たちが来て、やっと助かったと安心したふりをした。