□13 ハロウィン
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いよいよトロールの間合いに入ってしまうというところで、慌てたような開錠音とともにドアが開け放たれた。
かくして、ヒサキの祈りは届いたのだった。
突入して来た少年達はまずヒサキの存在に驚いたようだったが、そんな場合ではないことをすぐに理解したようだった。
洗面台を次々となぎ倒しながら未だ差し迫るトロール。
怯え切って壁にべったりと背をつけて縮み上がるハーマイオニー。
それを背に庇いトロールに杖を向け続ける小さなヒサキ。
ハリーは無我夢中で「こっちに引きつけろ!」とロンに言い、近くに転がっていた蛇口を拾って、思い切り壁に投げつけた。
ヒサキが先ほど衝撃呪文で破壊した残骸の一部だ。
カーンと金属を痛める音がめいいっぱい響いて、トロールは動きを止めた。
鈍そうな目をパチクリさせながら、今トイレ中にひびいたのは何の音だろうと足を止めて身体ごと振り返った。
(よし、ここからはおそらく原作ターンだ)
ヒサキは構えは解かないまま、一息吐いた。
いつから息を止めていたのかは思い出せなかった。
トロールはハリーの方に棍棒を振り上げて近づく。
「やーい、ウスノロ!」とロンが反対側から叫んで、金属パイプを投げつけ、それはトロールの肩にあたった。
トロールは、肩にぶつけられたものを気にする素振りは全くなかったが、しかし、小さな頭でも悪口を言われていることは何となくわかるのだろうか、今度はロンの方に注意を向けて向かって言った。
ハリーはその隙に回り込み、ハーマイオニーとヒサキの元まで走ってくることができた。
「2人とも、今の内だ!」ハリーは小声で強く言った。
「助かった!行こうハーマイオニー!」
ハリーが来ることを想定していたヒサキは、同じ声量で反射のように言い返し、ハーマイオニーに振り返った。
しかしハーマイオニーは膝折らず立っているのがやっとで、喉も引き攣ったまま動けなかった。
ハリーとヒサキは杖を握っていない方の手でそれぞれハーマイオニーの腕や手を掴み、何とか立たせようと引っ張った。
ヒサキはその際、意図的にハーマイオニーを引っ張る力を、怪しまれない程度にセーブした。
つまり、2人がかりであってもハーマイオニーを動かすことはできなかった。
「早く、走れ、走るんだ!」
業を煮やしたハリーがハーマイオニーを叱咤するように大声をあげた。
が、それでもハーマイオニーは、恐怖で口を開けたまま動けなかった。
ハリーの叫び声がトイレ中にこだまし、むしろトロールを鼓舞するはめになってしまった。
トロールはブーッと汚らしい声をあげ、一番近くの――囮となって、もはや逃げ場のなくなってしまった――ロンの方にはっきりとした足取りで向かった。
ロンのピンチに、そしてハリーは駆け出した。
完璧に原作の記述通りの展開だった。
ハリーは後ろからトロールに飛びつき、首根っこにぶら下がって、その折に、28cmあるヒイラギの杖でトロールの鼻の穴を思いきり突き上げた。
激しい唸り声をあげ、トロールは棍棒をメチャメチャに振り回して暴れた。
痩せて軽い身体のおかげか、ハリーはなんとかしがみついていることができたが、しかし、何度かハリーの身体を棍棒がかすっていた。
その間も、ヒサキは非力にハーマイオニーを引っ張っていた。
相変わらずビクともしないどころか、ついにずるずると床に座り込んでしまった。
そんなハーマイオニーの手を、ヒサキは杖を持ったまま不格好に両手で包み、引き続きドアの方へ引っ張り続けた。
やがてロンが、漫然とした様子でトネリコの杖を取り出した。
――自分でも何をしようとしているのかわからず、ただ最初に頭に浮かんだことを――つまり、そのまま脊椎で呪文を唱えた。
「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」
果てしない幸運か無意識に照準を合わせたのか、そのとき杖先は棍棒を捉えていた。
振り回されていた棍棒は、突然トロールの手から滑るように飛び出した。
それはゆっくりと空中を高く上がっていく。
急に棍棒を見失ったトロールは辺りを見回し、やがて頭上を見上げようとするか否かのところで、棍棒は急に落下した。
ボクッと鈍い、痛そうな音を立てて、それがトロールの小さな頭に直撃する。
トロールは数秒虚ろにふらついてから、うつ伏せに倒れた。
ドサッという大きな音と振動がその場を大きく揺すぶった。